ER XI 緊急救命室

さよなら、カーター先生


INTERVIEW with Hiroaki Hirata as Dr. John Carter

ER緊急救命室オリジナルレギュラーメンバー、ジョン・カーターがついにERを去ります。第11シリーズ最終回の日本語版収録スタジオを訪ね、ジョン・カーターの声を11年間演じつづけてきた平田広明さんに、お話をうかがいました。(取材:2006年3月11日)

--Q:いよいよ最終回ですが、今の率直なお気持ちを。
平田:うーん……、実感ないですね……。
--Q:第11シリーズでは、以前関わった患者(ルバドー:第2シリーズ12回/#37)が登場するなど、カーターの11年間を思い出させるエピソードがありましたが?
平田:今日(最終回)のエピソードでも、以前にカーターが取り上げた赤ん坊が出てくるんですよ。そういうエピソードを持ってこられると、「ずるいな」とは思いつつも、ジンと来ます(笑)。ずっと一緒にやってきましたからね。久々に会ったら「おっ、大きくなったな」みたいにわかるんだろうけど、自分では(カーターの成長は)よくわからないですね。ただ、総合で放送していた第9シリーズをたまたま見たときに「カーター、かっこいいな」と思ったんですよ。グリーン亡き後「自分がこのフロアを背負って立つ」という意気込みみたいなものかな。ずっとグリーンにあこがれていて、自分もグリーンのようになりたい、っていうカーターの気持ちが、医者としての彼を成長させ、頼もしさがグッと増した気がします。
ベントンとの別れ
ベントンとの別れ(第8シリーズ10回/#167「クリスマスはわが家で」より)
グリーンの手紙を読むカーター
グリーンの手紙を読むカーター(第8シリーズ20回/#177「手紙」より)
在りし日のグリーン先生
在りし日のグリーン先生(第7シリーズより)
--Q:この11年間で、平田さんの印象に残っているシーンを教えてください。
平田:今にして思えば、最初の頃は全部印象的です。初めての点滴、初めての縫合……、僕はこのドラマでコメディー担当なんでしょうか?っていうくらい(笑)。ベントンの虫垂炎の手術(第3シリーズ14回/#61)とかね。ベントンが麻酔でまどろんでいる時に、うれしそうな顔で「ベントン先生、僕、妊娠した」……。「ER」では笑って(収録を)止めてしまうことはなかったんですが、あのシーンは唯一、どうしても(笑って)噴いてしまって。家でさんざん笑ってきたにもかかわらず、ダメでした(苦笑)。そのベントンとの別れ(第8シリーズ10回/#167)、グリーンの手紙を読むシーン(第8シリーズ20回/#177)……。第1シリーズでカーターがグリーンに言われたセリフ、オープニング映像にもある、聴診器外してフッとため息をつくシーンですが、その時と一言一句同じセリフをガラントに向けて言う……。あれね〜、「これってちょっと寅さんっぽくない??」「ずるくない??」って(笑)。こうやってひねくれて言っていますけど、僕、ああいうセンチメンタリズム、大好きですから(笑)。最初から観ている人にしかわからないけど、泣けますよね。……それも今日(第11シリーズ最終回)、オチがあります。やっぱりこういう終わり方か、カーターは、っていう……(笑)。
映像的なことだと、第2シリーズの最終話、カーターが患者の女の子の相手をしていて卒業式に出席できないんですが、部屋で女の子とカードをしていて、かたや卒業式ではモーゲンスタンが卒業生に卒業証書を渡していて、そのシーンをすごくゆっくりオーバーラップさせるんですよ。何でこんなにゆっくりオーバーラップするのか、ずっとわからなかったんですが、放送を見て気付いたんです。モーゲンスタンが差し出す卒業証書を、女の子からカードを受け取るカーターの手があたかも受け取っているように、ぴったり重なっていて……。背筋がゾクゾクっとしましたね。こんな風に取材で聞かれるたびに、いつも思い出して悔しいのが、僕(カーター)じゃなくてロスが大活躍したエピソード(第2シリーズ7回/#32)。これも映像的なことなんですが、増水した中おぼれた子供を探すシーンで、ロング(遠景)で撮ってるんだけど、先に手前にピント(焦点)が合って、そこに子供を抱き上げたロスが現われる……。大ブーイングでした(笑)。画面見ながら「悔しいなー、かっこいいなー、ああいうシーン、僕にも撮って欲しいなあ」って。(ダクラス・ロスの声を演じる)小山力也君がなぜか憎たらしくて、小山君には何の責任もないんだけど(笑)。
それぞれ愛着があって、それぞれの役者さんが自分のキャラクターが大好きなのはよくわかりますよ。僕も「カーター」という宝物をもらって「カーターが一番だ」と思ってはいましたけれど、でもグリーン先生もすてきだし、ベントン先生も……、和風でいいんですよ、表情顔に出さないし、照れ屋だし。男同士どこか通じるところがあって……。「(カーターのこと)ほめなさいよ、いいじゃない、もう……!」みたいな(笑)。ちょっと昔の話ばかりになりましたけど、今の人はどうかといえば……、しばらくたってからしみじみ良さが判ってくるんじゃないかと……(笑)。とにかく魅力的なキャラクターばかりでした。
--Q:これまでいろいろな仲間たちが去っていくのを見てきたカーターですが……?
平田:ドラマの中で、アフリカでのことはほとんど描かれていないじゃないですか、気がついたらいつの間にかケムと恋愛していて。「ER」は恋愛ドラマじゃない、と言えばそれまでなんですが、僕としては描かれていないところをボンッと(想像を)膨らませて、演じるわけですよね。(ERを去る理由が)ケムのことを愛している、ただそれだけじゃないのはよくわかるんです。いろんな事情があって、ルイスにきついこと言われたりね、いいタイミングで背中を押されたっていうのはよくわかるんですが、僕自身の中では、正直、性急感がなかったわけでは、ないですね。
--Q:同じキャラクターを11年間演じ続けられたわけですが、気持ちを持続させる秘訣は何でしょう?
平田:作品のクオリティだと思います。彼(カーターを演じるノア・ワイリー)も役者として素晴らしいし。11年もやっていれば、どこかでマイナス志向が入ってきたりするものですが、作品、共演者、スタッフが背中を押してくれた。……なんてお行儀のいいことを言うのは柄じゃないのですが。でも絶対そうだと思いますね。こんなこと、みんな(関係者)の前じゃ絶対言わない……<と横を向いてボソリつぶやく、照れ屋の平田さんです>。やり残したことは、いっぱいあると思います。役者としてもまだまだですし、いまだに医学用語はつっかえるし、「セントラルライン」ってセリフはちゃんと言えないし……。もし「ER」をやらない11年だったらどうだろうって考えたんですよ。比べることは出来ないんだけど、でも一つだけはっきり言えるのは、「ER」という作品でカーターというキャラクターに出会えたことはすごく幸せでした。誰がなんと言おうと、僕の代表作は「ER」になるでしょうし。11年間レギュラーを続けるということは、一生のうちに何度も経験できることではないですよね。この11年間、舞台で演じたり、ほかの映画やドラマで声を演じたり、アニメでもお世話になったり、いろいろやらせていただきながら、「ER」のカーターに戻れる、ということが僕自身にとって非常に大切なことでしたし、ありがたかったです。
--Q:視聴者の皆さんに一言お願いします
平田:「ありがとうございました」の一言ですね。大勢のかたに応援していただいて、「ER」を楽しんでいただけて、非常に励みになりました。大好きなキャラクターですし、僕も残念ですけれど、今後とも「ER」をよろしくお願いします。ただ、きれいさっぱりいなくなるわけではなさそうだという話ももれ聞こえていますので、ルイスみたいに太って(笑)帰ってくるかもしれませんし、その時はよろしくお願いします。モリスがチーフ・レジデントになったのが心配なんですよ。あのモリスが、ですよ!? しっちゃかめっちゃかになるんじゃないかと、これで去っていいのか、すごく不安で……。って心配になるあたり、ERの医者として成長したってことなんでしょうか(笑)。

収録が終わって、スタッフから平田さんに花束ならぬ、花の冠が贈呈されました!よくお似合いです!?


最終回ご出演の皆さんとスタッフ

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