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アスカ大戦 前編
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<第3新帝都>

時は大正末期。ここ第3新帝都で暮らす人々は、蒸気機関の発達により豊かな生活をお
くっていた。

「はぁ〜、来るんじゃなかったなぁ。」

帝国最大の都である帝都を、1人の少女が地図に書かれた紙を見ながら、ブツブツ言っ
て歩いている。

白人の血が混じる白い肌、赤い髪、蒼い瞳の少女は、袴姿に大きな刀をぶらさげて途方
に暮れていた。

「何よこの地図っ! こんなに広かったら、わっかんないわよっ! もうっ!」

歩けど歩けど、途切れることのない町並みと人混み。彼女が生まれ育った自然に囲まれ
た田舎の村とは、似ても似つかない巨大な帝都に1人の迷子が飲み込まれて行く。

「いよーっ! 見て行きねぇっ! 見て行きねぇっ!」

ん?

声が聞こえて来た方向に視線を送ると、なにやら小さな堀の側に人だかりができていた。
どうやら声はその人だかりの中から聞こえているらしい。

何かしら?
なんか、楽しそうねぇ。

あまり人だかりなど見慣れていない田舎者の少女が、興味深々と言った感じで人だかり
を分け入ると、派手な格好をしたおやじが1匹の猿と一緒に大道芸をやっていた。

チャラ。チャラ。チャラ。

おやじの笛の音に合わせて、ボールを持った猿が愛想を振り撒きながら踊っている。

わぁぁぁ。
かわいいぃぃ。

村にいた頃から、温泉に入ると一緒に入ってくるお猿さんが大好きであった少女は、思
わず目を輝かせてその芸に見入ってしまう。

「さぁさぁ、皆の衆。ここで耳寄りな話があるんでぇっ!」

ザワザワ。

一通り芸を見せ終わったおやじは、後ろに置いてあった風呂敷を広げると、中から何本
もの包丁を取り出してくる。

「いよっ! そこの奥さん。この包丁は、そんじょそこいらのたぁわけが違うっ! 岩を
  も切るってぇ、とっておきの代物でぃ。」

「とっておき?」

「キュウリに大根なんてもんはあったりめぇ、この包丁にかかりゃぁ、豚の骨を何千本
  切っても、研ぐ必要なんかねぇっとくらぁ。」

「あら? 本当かしら?」

「本当かどうかは、自分の目で確かめて貰おうじゃねぇかぁっ!」

おやじは得意気な顔をすると、今迄猿が乗っていた大きな岩を指し示す。

「その証拠に、あの岩を切ってみせようじゃぁねぇかぁ。まずはぁ、こいつが普通の包
  丁でぃ。」

ガキン。

岩などにただの包丁で斬りつけたのだから、当然、嫌な音を響かせて刃零れしてしまう。

「よーし。さぁっ! こいつがぁ、とっておきの包丁でぃっ!」

ザクッ!

集まっていた主婦達は目を見張った。なんと、包丁がざっくりと岩の端に切り込んだの
だ。

「どうでいっ! この切れ味っ! 並大抵のもんじゃぁねぇだろうっ!」

ニヤリと笑うおやじ。実は、その岩の端の切れ目に粘土が埋めてあり、そこに切り込ん
むと言ういかさま商人。

「凄ーーいっ!」
「最近、うちの包丁切れなくなって困ってたのよぉ。」

そんなことを知らない主婦達は、目の色を変えてザワザワとざわつき始める。してやっ
たりのいかさまおやじ。

「そーんな岩。普通の包丁だって切れるわよっ。」

ところが、そこに少女の声が響き渡った。人々の視線が、赤い髪の少女に集中する。

「おやおや、姉ちゃん。そんなわきゃねぇだろう。」

「貸してみなさいよ。」

「かまいやしねぇが、怪我ぁすんなよぉ、ねぇちゃん。ワハハハハ。」

赤い髪の少女は、おやじから先程刃零れした包丁を受け取ると、岩の前に出て目を閉じ
た。人々の視線が半信半疑ながらも、その少女に集中する。

心頭滅却・・・。
破邪剣征・・・。

「スーーーーーーーー。」

目を閉じたまま、大きく息を吸い込む。

「ハッ!」

蒼い瞳が開く。

刃零れした包丁が、岩に切り込む。

バッキン。

次の瞬間、折れる包丁。

「アハっ。アハハハハハ! 包丁なんかで切れるわけないじゃーーん。」

人々が我に返った時、その少女は人だかりから一気に逃げ出していた。

「このぉっ! いんちき娘ーーーーっ!」

いんちきおやじに、いんちき呼ばわりされながら、少女はそそくさと逃げて行くのだっ
た。

<帝劇>

帝都で近頃人気急上昇中の劇場、帝国歌劇団花組。まだ女優2人という小さな劇場だっ
たが、その可愛いさが人気に拍車を掛けていた。

「ご苦労様ぁ。2人とも。」

舞台が終わり、裏方に戻って来た2人の女優に、労いの言葉を掛けているのは支配人の
葛城ミサト。片手にはいつもビールを持っている、三十路前の飲んだくれ女。

「今日も、たくさんお客さん入ったわねぇ。記録更新じゃないかしらん。」

「あはははは。このトップスターのマナちゃんの可愛さをもってしたら、こんなもんよ
  ぉっ!」

得意気に笑みを浮べながら身を乗り出したのは、特に人気が集中している女形女優、霧
島財団の一人娘霧島マナ。彼女の可愛さは、早くも帝都中で噂される程になっていた。

「それより、支配人。例の娘は、まだなんですか?」

「そうなのよねぇ。」

明るさいっぱいのマナと打って変わり、真面目な顔で話し掛けたのは、男型女優であり
この帝国華劇団のリーダーである、銃の名手伊吹マヤ。

「例の娘って、なになになに?」

何も聞かされていなかったマナは、いったい何の話なのかと、ミサトとマヤを交互にき
ょろきょろと見る。

「新しい団員が今日来るはずなのよ。」

「えーーーーっ! このトップスターのマナちゃんがいるのに、なんでぇぇっ!?」

ぶーたれるマナを諭す様な目でそっと見下ろすミサト。

「わたし達の仕事は、それだけじゃないでしょ。」

「そういうこと・・っか。」

帝国歌劇団とは、仮の姿。その真の姿は、使徒から帝都を守る秘密国家組織、帝国華激
団。

<小川の辺>

赤い髪の少女は、小川の辺で腰にぶら下げていた日本刀を引き抜き、その鈍い輝きをま
じまじと見つめていた。

おっかしいなぁ。
こないだは、切れたのになぁ。
うーん・・・。

村にいた頃、この刀でやった時には確かに岩が切れたのだ。ところがどうしたことか、
先程の醜態が恥ずかしくなってくる。

おっかしいなぁ。
どうしてだろう?

「エイエイ。」

どうも納得がいかない少女は、刀を小川に向かって素振りを始める。そう言えば、昨日
から旅をしていた為、稽古を休んでいたことに気付く。

それにしても・・・。

少し手を休めた少女は、荷物の中から地図を取り出す。それは旅立つ前に祖母がここへ
行けと書いた地図。

それにしても・・・。

だが、既にかなりの高齢な祖母の手は言う事をきかないらしく、その紙にはぐにょぐに
ょとミミズがのたうち回った様な線が無造作に描かれているだけ。

「こんなんでわかるわけないじゃなーーいっ!
  帝国歌劇団って、何処にあんのよーーーーっ!」

しかし、こんな所で油を売っていては、日が暮れてしまう。少女は再び荷物を纏めると、
見るに耐えない地図と、帝国歌劇団の看板を探して、再び帝都の中へと消えて行った。

「あっ! どろぼーーーーっ!!!」

帝都の中を途方に暮れて歩いていると、財布を引っ手繰られた5歳くらいの男の子が、
必死でチンピラ風の男を追い掛けている光景が飛び込んできた。

「返してぇっ!」

両手を振り必死で追い掛ける男の子。だが、チンピラ風の男はそんなことおかまいなし
に、人混みの中を擦り抜けて行く。

なんでダレも捕まえないのよっ!
にっがさないわよーーーーっ!

思うが早いか赤い髪の少女は、長い髪を靡かせチンピラ風の男を猛追していた。

「まてーーーーっ!」

「ケッ!」

誰かが追い掛けて来る気配を感じた男は、ぎょっとして振り返ったものの、それが少女
だと知るや、馬鹿にした笑みを浮かべ、相手にする様子もなく更に逃走を続ける。

タッタッタッタ。

軽やかに逃走する男。

ズダダダダダダダダダ!!!!!!!

しかし、少女の足はとてつもなく速かった。

「うりゃーーーーーっ!!!」

既に真後ろから声が聞こえる。

振り返る男。

「げっ!」

前傾体勢で猛烈な勢いで迫って来る少女。
いつの間にか、その手にはでっかい日本刀。
その刀をグルグル振り回しながら恐ろしい勢いで急接近してくる。

人混みの中を逃げる男と比べ、そんなぶっそうな物を振り回す少女は、周りの人が道を
開けるので障害物が無い。

「うりゃうりゃうりゃーーーーっ!!!」

既に少女は真後ろ。

ズダダダダダダダダダ!!!!!!!

少女の後ろには砂埃。

「うっ! うわーーーーーーーっ!!!!」

悲鳴を上げて、逃げ惑う男。

「うりゃうりゃうりゃりゃりゃりゃーーーーーーーーーっ!!!」

日本刀の切っ先が、後ろ髪に触れる。
真っ青になる男の顔。

「ぎゃーーーーっ! 助けてーーーっ!」

次の瞬間、男の前に少女が躍り出る。

ズザザザザザっ!

急ブレーキを掛けつつ体を反転させ、刀の切っ先を男の首元に突き立てる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!」

「それっ! あの子にっ! 返しなさいっ!」

でかい日本刀を喉元に突き付け、目を吊り上げて迫る少女。
恐い。

「は、はいぃぃぃっ!」

顔面蒼白にしながら、男はぽとりと男の子の財布を地面に落とした。

「最初から、素直にそうすりゃいいのよっ! フンっ!」

少女は、財布を拾い上げると、刀を鞘に納め先程の男の子の所へ返してあげに行くのだ
った。

<長屋>

その日の夕暮れ。

結局、帝国歌劇団を見つけることのできなかった少女は、財布を取り返してあげた男の
子の誘いもあり、その子の家へとやって来ていた。

「母ちゃんっ! このお姉ちゃんが、お財布取り返してくれたんだよっ!」

「おやまぁ、そうかい。それは、すみませんでしたねぇ。」

ぺこりと少女に頭を下げて礼を言う母親。

「でさぁ、今晩泊まるとこ無いんだって。うちに泊めてあげてよ。」

「そりゃぁ、難儀だねぇ。こんな狭いとこで良かったら、どうぞぉ。」

子供が世話になったこともあり、気前良く赤い髪の少女を手招きする。

「お姉ちゃん。お姉ちゃん。早く入んなよ。」

「泊めてくれるってっ!? ラッキー!」

「困ってる時は、お互い様だよぉ。」

「さぁさぁ、お姉ちゃん。早く入んなよ。」

「ねぇねぇ、晩ご飯も食べさせてくれんのっ?」

「あぁ、いいとも。一緒に食べ様よ。」

「やったーっ! じゃねぇ、アタシお魚がいいわっ! あっ! 大根とお味噌汁も付けて
  ねぇっ! そうそう、お魚はお頭付きじゃないとイヤよっ!」

「・・・・なんか、遠慮の無い娘だねぇ。」

「やっぱ、いいことはするもんねぇっ! じゃ、アタシ剣の訓練してくるから、ご飯作
  っといてねぇっ!」

少女はそれだけ言って飛び出して行く。残された母親は気前良く泊めてあげると言って
しまったことを、少し後悔するのだった。

「わぁ、お姉ちゃん。おっきな刀だねぇっ!」

「へっへーん。凄いでしょう。」

夕日の中、剣の訓練をする少女を、興味深々で見詰める少年。やはり、男の子だけあっ
て、剣などに興味があるのだろう。

「ねぇ、アンタ。刀好きなの?」

「うんっ! 大きくなったら、強くなって立派な軍人さんになるんだっ!」

「そうなんだ。パパも軍人さんなの?」

「そうだよっ! 帝都を守る為に頑張ってるんだっ。」

「そうなんだぁ。そうだっ!」

少女は、近くに転がっていた竹の棒を2つ拾い上げ、小さい方を男の子に手渡した。

「一緒にお稽古してみようか?」

「えっ!? いいのっ!?」

「うんっ! やってみよ。」

竹の棒を手にした男の子は、ぱーっと嬉しそうに顔を綻ばせ、いそいそと少女の前で構
える。余程嬉しいのだろう。

「いくよっ! お姉ちゃんっ!」

「さぁ、いらっしゃいっ!」

カンカンカン。

男の子は容赦無く必死で斬り付けて来るが、その全てがあっさりと振り払われていく。

「くそーーーーっ!」

だんだんとムキになってきたのか、肩で息をしながら汗を掻きつつ必死で斬り掛かって
くる。

「ダメダメ。ただ振り回しゃーいいってもんじゃないわ。」

「くそーーーっ!」

「相手の動きをよーく見て。」

「やーーーーっ! とーーーーっ!」

コンコンコン。

「そうそう。上手になってきたわよ。」

「やーっ! とーっ! たーっ!」

そんな2人の様子をご飯ができたと呼びに来た母親は、しばらく微笑ましそうに木の陰
から眺めていた。

父親が軍人であまり帰って来ることができない為、こうして剣などを教えてくれる人が
おらず、寂しい思いをさせていることを常々不憫に思っていたのだ。

あの娘に、お礼を言なくちゃいけないねぇ。

                        :
                        :
                        :

「おかわりっ!」

「もう無いよ。勘弁しておくれ。」

「えーーーっ! もう無いのぉっ! あっ! あったっ! おまんじゅう!」

「あっ! それはお供え物だよぉっ!」

「食べなきゃ、腐っちゃうでしょっ!」

パクッ!

「はぁ〜あ。」

この少女を泊めてあげることにしたことを、やはり後悔してしまう母親だった。

<第3新帝都>

翌日。

少女は、昨日泊めて貰った男の子の母親に、帝国歌劇団の場所を聞いて、朝早くから出
発していた。

もちろん、朝ご飯をたらふくご馳走になった後である。

やっと、辿り着けるわねぇ。
そんなに有名なとこなんだったら、最初っから人に聞いとけば良かったわ。

そうは言っても、美味しい夕食と朝食をいっぱいご馳走になれたので、あまり文句は無
い。

「さぁっ! 行くわよっ!」

朝日に綺麗な髪を照らされながら、少女は意気揚々と長屋を出て行った。

<帝劇>

丁度その頃、ミサトは本日の公演準備を中止し、マヤとマナを呼び寄せていた。

「2人共っ! 直ぐ出動の準備してくれるかしら?」

帝劇の地下に設置されている、数々の機械が周りに配置された発令所。ミサトはマヤと
マナを召集すると、真剣な顔付きで向き合う。

「また使徒が現れたわっ!」

「またですか。今年に入って3度目ですね。」

ミサトの言葉に、プラグスーツを来たマヤが、真面目な顔で答える。使徒、それはこの
帝都を脅かす謎の使者。

「まっかせてぇっ! このマナちゃんに掛かれば、いちころよっ。」

自称エースパイロットのマナは、恐れることもなくいつでも出撃できる体勢。

「じゃ、2人とも。頼んだわよ。エヴァンゲリオン発進っ!」

ミサトの号令を皮切りに、シューターに飛び込むマヤとマナ。それは、エヴァンゲリオ
ンのコックピットとなるエントリープラグに直結している。

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作者注:サクラ大戦の設定を元にしているので、エヴァも使徒も人より少し大きいくら
        いの身長です。その身長で人があの細いエヴァの何処に入るのかは、詮索しな
        いで下さい。また、ATフィールドは存在しません。
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黒を基調としたプラグスーツに身を包み、黒いエヴァに乗り込むマヤ。武器は、巨大な
ピストル。

紫を基調としたプラグスーツに身を包み、紫のエヴァに乗り込むマナ。武器は、巨大な
長刀。

両機は、サキエルタイプの使徒が暴れる帝都へ向い出撃して行った。

<第3新帝都郊外>

その頃、赤い髪の少女は、長屋を後にして帝劇へ向かいのんびりと歩いていた。

駅から反対の方向に来ちゃってたのねぇ。
思いっきり遠回りになっちゃったわ。

ズドーーーーーーーーーーーーーーーン。

背後から大きな物音が聞こえた。なんだろうと振り返ると、先程出て来た長屋の方で、
瓦が飛び散り砂煙が上がっている。

「な、なにっ!?」

遠くから人々の悲鳴も聞こえて来る。ただ事であろうはずもなく、それをほって行ける
様な少女ではなかった。

「あっちは、長屋のっ!? ちっ!」

少女は腰にぶら下がっていた日本刀に手を翳し、踵を返して先程までいた長屋へ向かっ
て全力で駆け出す。

<長屋>

少女が辿り着くと、そこでは身の丈2メートルから3メートルくらいの、得体のしれな
い化け物が、大きな刀を振り回して暴れている。

「キャーーーーー。」
「わーーーーっ!」

家を破壊しながら刀を振り回して突き進む化け物。後少しで、あの男の子の家がある長
屋だ。人々は対抗する術も無く、ただただ悲鳴を上げながら逃げ惑うばかり。

「ちょっとアンタっ! 待ちなさいよっ!」

大声で叫ぶが、お構い無しに進行する化け物。どうやら言葉が通じないらしい。

「こ、このアタシをよくも無視したわねっ!」

怒る少女。
腰の刀に手を添え、化け物目掛けて走る。

「この化けもんがーーーーっ!」

シャキーン。

刀を抜き取り、大きく振り被る。

「うりゃーーーーーーっ!」

ガキーーーーン。

思いっきり肩から斬り付けるが、鎧の様な体の化け物に弾き返されてしまう。

「ったーーーーっ! イタイじゃないのよっ! このバカバカバカっ!」

跳ね返された衝撃をもろに食らい、ジンジンする手を押さえ文句を叫び散らす。
ウルサイことこの上無い。
しかし、化け物は更に無視して進行を続ける。

「母さーーーんっ!」

その時、その化け物の前を昨日の男の子が、母親の元へ向かおうと横切った。

「母さーーーんっ! わっ!」

化け物の前で転んでしまう男の子。母親は慌てて抱き起こそうとするが、もう化け物は
すぐ横まで迫って来ている。

「ひーーーーっ!」

逃げる術を失い、我が子だけでも守ろうと身を呈して上から覆い被さる。

進行方向に障害物ができたと判断した化け物は、その刀の切っ先をうずくまる親子へと
向けた。

「させるかーーーーーっ!!!!」

少女が化け物と親子の間に割って入る。

バキーーーーーン。

それと同時に、少女は化け物が振り翳していた刀を一気に払いのける。
しかし、化け物は体勢を立て直し、大きな刀を再度振り被って来た。

ちっ! もう後が無いっ!

真後ろには、昨日の男の子と母親。

心頭滅却・・・。
破邪剣征・・・。

昨日は岩を切るのに失敗したが、今度は失敗が許されない。
心を清め、精神を集中する。

「たーーーーーーーーっ!」

全霊を刀に集中し、切り掛かる少女。

ガキーーーーン。

しかし、またしても少女の刀は化け物の体に跳ね返された。

化け物の刀が、再び親子襲い掛かる。

「こんのーーーーっ!」

もう駄目だ。
何も考えてる余裕は無い。
少女は、本能のまま体勢を立て直し突進した。

「アタシに、タダ飯を食べれなくする気かーーーーーっ!!!!」

ズッバーーーーーーンっ!!!

少女の刀の切っ先が、電光石火の如く斜め下から天空目掛けて切り上げる。

真っ二つにぶった切られる化け物。

タダ飯の力は強かった。

ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

少女は、うずくまっていた親子に手を貸して起こす。

「ありがとうございます。」

「いいっていいって。お礼は、ご飯1年分でいいわ。」

「は、はぁ〜。」

そこへ少し遅れて、マヤとマナのエヴァがやってくる。その視線の先には、あの化け物
を素手で倒した赤い髪の少女。

「こんな所にいたのね・・・。」

コックピットでにこりと微笑むマヤ。

しかし、その少女は刀を振り被って突進して来ていた。

「まだいたかーーーーっ! うりゃうりゃうりゃーーーっ!」

「ち、ちがっ! わたしは、仲間っ!」

「でやーーーーーっ!」

思いっきり飛び跳ねた少女は、2体のエヴァに斬り掛かって来る。さすがに、マヤもマ
ナも人間相手に攻撃することなどできるはずもなく、逃げ惑うばかり。

「な、なによーーっ! なんなのっ! この娘ぉぉっ!」

悲鳴を上げて逃げるマナ。

「落ち着いて頂戴っ! 落ち着いてっ!」

必死で少女に呼び掛けるマヤ。

だが、赤い髪の少女は聞く耳を持たず刀を振り翳して追い掛けて来る。

「うりゃうりゃうりゃりゃりゃーーーっ!」

「キャーーーー。いやーーーーっ!」

とうとうマナが長屋の壁際まで追い詰められる。
目の前から、刀を天高く構え飛び込んで来る赤い髪の少女の姿。

「マ、マジっ!?」

モニタに映るその姿にぎょっとするマナ。

「イヤーーーーーっ!」

ズシャーーーーーっ!

マナの紫色のエヴァの片手が切り落とされる。

「いっ、いったーーーーーーーーいっ!」

悲鳴を上げるマナ。
シンクロしている為、エヴァが感じた激痛がそのまま伝わる。

後ろから、マヤが慌てて少女を押さえ込みに来る。
が、少女の回し蹴りが、エヴァごと蹴り飛ばしてしまった。

「このすけべがっ! 女の子に気安く触んじゃないわよっ! 化け物っ!」

後ろから抱き付かれたのが気に入らなかったのだろう。少女は振り向き様に、マヤのエ
ヴァの足に刀を突き立てた。

ズブーーーーっ!

「くぅぅぅぅぅ。」

マヤも、その痛みに悲鳴を上げて蹲ってしまう。

「へっへーーんっ! アタシの勝ちぃぃぃっ!」

得意満面な少女。

2体のエヴァが蹲る真ん中で、赤い髪の少女は刀を空高々と振り上げ得意気に胸を張っ
ているのだった。

<帝劇>

「仲間に斬り掛かって来るなんて、何考えてるのよっ!」

帝劇に帰ったマナ、激怒。

「だって、知らなかったもんは、しょうがないでしょっ!」

「わたしが、何度も呼び掛けたはずよ。」

さすがのマヤも、おかんむり。

「戦ってる最中に、そんなもん聞いてないわよっ!」

「まぁまぁ、みんな無事だったんだしぃ。」

そんな中、1人ビール片手に仲介に入ってくるミサト。

「まさか、こんな娘を仲間にするんじゃないでしょうねぇっ!?」

ブーブー文句を言いながら、納得がいかないという感じのマナ。

「こんな娘とはなによっ! こんな娘とはっ!」

「あなためちゃくちゃじゃないのよっ!」

「あんな奇怪なもんに乗ってくるから、化け物と間違えたんでしょうがっ!」

「エヴァの何処が奇怪よっ!」

「あっらぁ、そうね。アンタって、エヴァから降りても奇怪だったわ。」

「な、なんてこと言うのよーーーっ!!!」

大喧嘩する2人を見兼ね、さすがにリーダーとしての自覚を持つ年上のマヤが仲裁に入
って来る。

「まぁまぁ、2人とも喧嘩はやめて。」

「ウッサイワねっ! 20歳過ぎの童顔幼児体形女に、とやかく言われたく無いわっ!」

「なっ! なっ!」

1番気にしていることを言われて、マヤも激怒。

「ちょ、ちょっと・・・みんなぁ・・・。静かになさい。」

いい加減うんざりしてくるミサト。女3人集まれば、姦しいと言うが、それどころの騒
ぎではない。

「ほら、静かにして。」

ギャーギャーギャーっ!
ギャーギャーギャーっ!
ギャーギャーギャーっ!

「はい、静かに。」

ギャーギャーギャーっ!
ギャーギャーギャーっ!
ギャーギャーギャーっ!

「ちょっと、あなた達ぃぃっ!」

ギャーギャーギャーっ!
ギャーギャーギャーっ!
ギャーギャーギャーっ!

ミサトの額に青筋が浮かぶ。

「静かにせんかーーーーーっ! うらーーーーーっ! はったおすぞっ! ワレっ!!!」

シーーーーーン。

突然のミサトの激怒に、冷や汗を垂らしながら静まり返る3人娘。

「さ、とにかく新しい仲間よ。」

ミサトは、新しくやってきた少女の手を引き寄せると、マヤとマナに対面させる。

「自己紹介して。」

「しゃーないわねぇ。今日から、アンタ達の仲間になってあげるわっ!
  アタシはっ! 世界一天才でっ! 世界一美少女でっ! 世界一強いっ!

                 惣流・アスカ・ラングレーよっ!」




<太平洋>

その頃、1隻の巡洋艦が日本へ向けてその進路を取っていた。

「よぉ。船降りるんだってなぁ。」

「あっ! はい。新しい任務とかで。」

「さすがに、司令の息子ともなると大変だなぁ。」

「今迄、お世話になりましたぁ。」

「おうっ! 帝都に着くのはまだまだ先だ。それまでに、送別会でもしようぜ。」

「ありがとうございますっ!」

少年は、ぺこりとお辞儀をし、澄んだ笑みを浮べて海を眺める。

帝国華激団かぁ。
どんな所だろうなぁ。

父親であり帝国総司令たる碇ゲンドウから、新たな命令を受けた少年は、船から見える
波を見ながら次の任務に希望を抱く。

彼の名前を、碇シンジ。

数週間後、女地獄の真っ只中に叩き込まれているなどとは、まだこの時彼は想像すらし
ていないのだった。

To Be Continued.

宰相  >やっと企画に投稿が!そ、それもトップバッターはタームさんだぁ〜♪(^^)
皇妃様 >・・・アンタが一番に書くのが普通じゃないの?(−−)
宰相  >うっ!・・・書きかけはあるのですが・・・(^^;;;
先帝陛下>ふ・・・帝国総司令・・・当然だな/〜\
皇太后様>あなたが総司令役って事は・・・あら?私は出てこない事になるのかしら・・・ふっふっふ(^^#
大公妃様>さくらがあの娘だから・・・アタシは麗しきあの未亡人ね♪(^^)
大公殿下>とすると何か!私はお星様か!?(−−#
宰相  >ちょ、先帝陛下に皇太后様ぁ!?(@@)
皇妃様 >ま、ママにパパまで!?(@@)
先帝陛下>ふ・・・ハサミを渡しながら「出撃」・・・ふ/〜\
皇太后様>・・・そう言えば彼の作品で私はあんまり出演が・・・ぶつぶつ・・・(−−)
大公妃様>ああ、美しき未亡人・・・良い響きだわ♪(^^)
大公殿下>うぬぬ・・・回想シーンしか出番が・・・いやまて!2まで進めば「鬼王」としてだな・・・(−−)
宰相  >収拾がつかん・・・・・・こっちはこっちで話を進めましょう!(−−;
皇妃様 >そ、そうね(−−;
宰相  >しかし、予想外でしたよ。まさかアスカ様がさくら役とは・・・(^^;
皇妃様 >どうして?
宰相  >いえ、某チャットではすみれ派と言ってましたので・・・
皇妃様 >ま、清楚可憐なアタシの事を考えてへび女はパスしたんでしょ♪(^^)
宰相  >さぁ・・・? (すみれの方が適任だと思うな・・・)
先帝陛下>昼間から酒・・・ふ/〜\
皇太后様>ぶつぶつ・・・ぶつぶつ・・・(−−#
大公妃様>むふふ・・・って・・・2の後半まで出番無しじゃない!(−−#
大公殿下>・・・た、確かに渋い役だが・・・(−−)
皇妃様 >しかし、キャスティングはオールエヴァかしら?
宰相  >さて・・・それは今後を見ないと・・・
皇妃様 >今後?今後って言っても・・・これ連載するとは言ってないじゃん?
宰相  >ですが・・・LASにするには連さ・・・わぁ!?(@@)
先帝陛下>書け・・・/〜\
皇太后様>私にも出番を寄越しなさい!(−−#
大公妃様>そうよ!そうよ!
大公殿下>取り敢えず2の終わりまでだな!
宰相  >・・・・・・・・・(^^;
皇妃様 >こ、此処は逆らわない方が良さそうね(^^;
揃って >次を期待してるわ!/〜\/〜\/〜\/〜\


初公開日 2000/07/02

素晴らしい作品を送ってくれたタームさんに感想を送りましょう♪
タームさんのHPへは此処からどうぞ♪


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