トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」などが急加速したという報道が米国で連日大きなニュースとなったが、ここにきて「でっちあげ」や「ねつ造」の疑いが相次いで発覚している。
米カリフォルニア州でプリウスが急加速し減速しないとされるトラブルをめぐり、米メディアは、この車を運転していた男性の行動に疑惑が浮上していると相次いで伝えた。一部のジャーナリストは「でっち上げだ」と指摘した。
男性は同州サンディエゴで8日、警察に通報。駆けつけたパトカーがプリウスの前方に立ちふさがる形で強制的に停車させ、全米でその映像が大きく報じられた。
男性は通報でブレーキを踏んでも加速し続けたと訴えたが、プリウスはアクセルとブレーキを同時に踏むとエンジン出力を低減する仕組みが導入されており、男性が主張した現象は構造上起こり得ないことが判明した。
タイヤへの動力の伝達を遮断するため、ギアの位置をニュートラルに変えるように警察が繰り返し求めたにもかかわらず、男性は無視し続けた。この点について、事故を誘発しようとしていたとの疑念も持ち上がった。男性が金銭に困っていたとの報道もある。
事故直後にトヨタを訴える意向を示していた男性は「訴えるつもりはない」と話した。
一方、米大手ネットワークのABCテレビは、電子制御システムの異常でトヨタ自動車の車に急加速が発生する実験を放送したニュースで、映像を不適切に編集した「誤り」があったことを認めた。
ABCは2月22日、電子制御システムの欠陥がトヨタ車のエンジン回転の急上昇を招く恐れがあるとする、南イリノイ大の准教授による実験の様子を放映。急加速するトヨタ車の映像と同時にエンジン回転数の急上昇を示すタコメーターの映像を盛り込んだ。しかしタコメーターの映像は実際には停止状態のトヨタ車のもので、急加速するトヨタ車とは無関係だった。
また、11日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、トヨタ車の急加速の原因を「ブレーキとアクセルの踏み間違えだ」とする心理学者、リチャード・シュミットカリフォルニア大学ロサンゼルス校名誉教授の寄稿を掲載した。
同教授は、今回の急加速の背景について「ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏む運転者によって頻繁に起きることにある」と説明。原因に疑われる電子系統の欠陥ではなく、「人的要素」を指摘した。
そのうえで、アクセルをブレーキと踏み間違えた結果、加速に驚いてさらにアクセルを踏み、車がますます急加速して事故に至る−という仮説を紹介。「(ノイズの多さなどから)人は意図するのと違う行動を起こす場合もある」としている。