「大相撲初場所初日」(14日、大阪府立体育会館)
朝青龍の抜けた穴を横綱白鵬(25)がきっちり埋めた。立ち合いから安美錦を寄せ付けず送り出しで白星スタートを切った。前日、部屋付きの熊ケ谷親方(元幕内竹葉山)から2日連続でけいこを休んだことをしかられたが、この日は朝げいこに参加。朝青龍化することなく、一人横綱の重責を果たす。大関とりの関脇把瑠都は阿覧を寄り切った。幕内通算100場所目の大関魁皇、かど番の大関琴光喜も白星。1横綱4大関の上位陣は全員安泰だった。
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重責をはね返した。中に入れるとうるさい安美錦をまったく寄せ付けない。背後を取って送り出す白鵬の完勝に“荒れる春場所”の予感はなかった。「技能のある力士なので、よく見ていこうと思って、それがよかった。流れの中で自然と出た」と何事もなかったかのように振り返った。
朝青龍がいない春。不祥事ばかりが目につくヤンチャな先輩だったが、裏を返せば白鵬に向けられるはずだった批判の矢面に立ってくれる存在でもあった。騒動の末の引退劇について「場所前に散々言いましたから、あとは場所に集中するだけ」と場所では言及しなかったが、朝青龍不在をひしひしと感じる出来事があった。
白鵬は12、13日と朝げいこを休んだ。静養を優先させたとみられるが、これが入門時から指導を受けている熊ケ谷親方の怒りに火をつけた。「2人(横綱)の時と違って1人だと、批判とか、報道とか全部来るんだぞ」。育ての親からの苦言を白鵬は「はい」と聞き入れていたという。
この日の朝も9時を過ぎてもけいこ場に現れなかったが、業を煮やした親方が電話をかけたころに到着。弟弟子を相手に軽くぶつかり土俵の感触を確かめた。紗代子夫人ら家族が大阪にいたこともけいこを休んだ一因となったが、16日までに帰京するため相撲に集中する環境は整う。
先場所せり上がりを忘れた横綱土俵入りも無難にこなし、初日は横綱の務めを果たした。過去1人横綱最初の場所で優勝したのは8人中2人。北の富士と朝青龍しかいない。「なるものはなる。できないものはできない。神様だけが知っている」と白鵬。重い看板を背負っての場所が始まる。