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(2010年3月12日掲載)
価格.comの「クチコミ掲示板」には、日々、数多くのユーザーから幅広い内容のクチコミが寄せられている。
たとえば、パソコンやカメラなどのデジタル製品に搭載された新機能に対して、「今まででもっとも有益な機能」「他製品の同機能と比べてもナンバーワンの出来」といったように高い評価を与えるクチコミもあるいっぽうで、「使ってみたが評判ほどではない」「まったく使いものにならない」といった悪い評価をくだすクチコミもあったりする。「クチコミ掲示板」では、性能、機能、デザインなど製品の細かい部分について、ユーザーによって意見が食い違うことは日常茶飯事。そこが「クチコミ掲示板」の醍醐味・面白さでもある。
今回より価格.comマガジンの新しい連載としてスタートする「ウワサのクチコミを徹底検証!」では、こうした多くの評価や意見・疑問が集まる「クチコミ掲示板」で話題になっている項目を取り上げて、くわしく検証を行なっていく。「クチコミ掲示板」に寄せられる「ユーザーの声」に対して「検証」という形でひとつの回答を出していければと思う。
連載第1回目となる今回取り上げる製品は、富士フイルムのコンパクトデジカメ「FinePix F200EXR」。富士フイルムが開発した最新の撮像素子「スーパーCCDハニカム EXR」を初めて搭載したコンデジで、発売から半年以上が経過しても人気を集めているロングセラーモデルだ。今回は、この人気コンデジの「高感度撮影性能」について検証する。
FinePix F200EXRのクチコミ掲示板では、ノイズの少ない高感度写真を撮影できる点がかなり評判を集めている。ただ、高感度撮影性能の評価は高いものの、「驚異的」「史上最高」といったような、驚くような高い評価はそれほど多くない。そのあたりのクチコミ掲示板での“微妙なトーン”の理由も含めて、FinePix F200EXRの高感度撮影性能についてレポートしてみたい。
【今回の検証内容】
クチコミ掲示板で評判の富士フイルム「FinePix F200EXR」の高感度撮影性能は、どのくらいすぐれているのか?
FinePix F200EXRの高感度撮影性能を検証する前に、本モデルに搭載された富士フイルム独自の撮像素子「スーパーCCDハニカム EXR」の技術的な特徴を簡単に紹介しておこう。スーパーCCDハニカム EXRは、FinePix F200EXRの高感度撮影性能に大きく影響を及ぼす要素だからである。
カメラ通の方には周知のことであるが、富士フイルムは、デジタルカメラ黎明期の1999年から独自の撮像素子「スーパーCCDハニカム」を開発し続けているメーカーである。8角形構造を採用するスーパーCCDハニカムは、富士フイルム独特の発色が得られる撮像素子として画質面で高い評価を得てきており、特に、ノイズの少ない高感度撮影を実現する点で評価が高い。スーパーCCDハニカムは、富士フイルムのデジタルカメラの代名詞ともいえる存在となっている。
スーパーCCDハニカム EXRは、そのスーパーCCDハニカムの最新バージョン。2008年9月に富士フイルムが発表し、2009年2月発売のコンパクトデジカメ「FinePix F200EXR」で初めて搭載された撮像素子だ。なお、スーパーCCDハニカム EXRは、コンデジ製品としては、FinePix F200EXRに続いて、2009年8月発売の光学10倍ズームモデル「FinePix F70EXR」にも搭載されている。
スーパーCCDハニカム EXRのポイントは、「人間の眼」に着目して開発されていること。人間の眼は、周囲の明るさに合わせて解像力や感度を自在に変化することができるのだが、スーパーCCDハニカム EXRは、撮影シーンや撮影意図に合わせて、夜景などの暗い撮影シーンでノイズを抑えた写真を撮影できる「高感度・低ノイズ優先」、白とびを抑えて明るい部分の階調を出す「ダイナミックレンジ優先」、被写体のディテールを細かく描写する「高解像度優先」という3種類の撮影モードを、ソフトウェアでなくハードウェア(撮像素子)レベルで使い分けられるようになっているのだ。(これら3種類の撮影モードは、まとめて「EXRモード」という名称が付けられている)。
スーパーCCDハニカム EXRで「EXRモード」の使い分けが可能となった大きな理由は、まったく新しい画素配列を採用したためである。従来のCCDは、同色の画素を互い違いに並べた構造になっていたが、スーパーCCDハニカム EXRは、同色の画素を斜め方向に隣り合わせた新しい構造を採用するようになったのだ。
以下に、新しい画素配列のメリットを交えながら「高感度・低ノイズ優先」「ダイナミックレンジ優先」「高解像度優先」のメカニズムについて解説しよう。
新しい画素配列でもっともメリットが生まれるのが「高感度・低ノイズ優先」だ。「高感度・低ノイズ優先」は、画素混合(同色の画素を組み合わせて1つの画素にし、1画素の面積を広げて感度を高めること)を行なうことで、高感度撮影時のノイズを軽減するモード。スーパーCCDハニカム EXR では、2画素を1画素に画素混合することで感度を2倍に向上させるため、「高感度・低ノイズ優先」利用時は、有効1200万画素のFinePix F200EXRでも600万画素での撮影となるが、その分、高感度撮影時の低ノイズ化が期待できるというわけだ。
従来のCCDでも画素混合による感度向上は実現されていたが、画素が隣接せず、同色の画素間に距離があったため、画素混合時に偽色が発生していた。そして、偽色を補正するためにノイズリダクション処理を行なわねばならず、写真全体の解像感が損なわれる結果になっていた。しかし、同色の画素が隣接するスーパーCCDハニカム EXRでは、画素混合時に感度アップを実現するだけでなく、偽色の発生を抑え、解像感も損ねることがなくなっている。
「ダイナミックレンジ優先」は、撮像素子(スーパーCCDハニカムEXR)内で、高感度の写真データと低感度の写真データを同時に撮影して合成処理することで、暗い部分から明るい部分まで階調感のある写真を撮影するというもの。2回のシャッターで別々の写真を作成して合成するのではなく、1回のシャッターでまったく同じ構図の写真を合成できるのがポイント。このモードも、「高感度・低ノイズ優先」と同様に、同色の画素が隣接する構造を採用したことで実現したモードだ。
また、従来のCCDのダイナミックレンジ拡張機能では、ハイライト側の階調性を出すために感度を上げて受光量を増やす必要があったが、スーパーCCDハニカムEXRは、感度を上げる必要がないのも特徴だ。富士フイルムは、FinePix F200EXRの「ダイナミックレンジ優先」利用時において、ISO100で400%、ISO200で800%のダイナミックレンジの拡大を実現したとしている。
なお、1つの撮像素子内で2つの画像データを作成するため、「ダイナミックレンジ優先」利用時は、「高感度・低ノイズ優先」と同じように、有効1200万画素のFinePix F200EXRでもフル画素の半分となる600万画素での撮影となる。
同色の画素を斜め方向に隣り合わせたスーパーCCD ハニカム EXRは、従来のCCDと比べて、水平・垂直方向に高い解像力を持つのも特徴だ。「高解像度優先」は、画素混合や合成処理を行なわずに、スーパーCCD ハニカム EXRの全画素をフル活用し、解像感の高い写真を撮影するモードである。端的にいえば、通常の撮影モードであり、スーパーCCD ハニカム EXRのポテンシャルをいかんなく発揮するモードといえる。
FinePix F200EXRには、これら3つの「EXRモード」を自動で選択する「EXRオート」というオート撮影モードが搭載されている。「EXRオート」を選択しておけば、カメラが自動で撮影シーンを認識し、「高感度」「ダイナミックレンジ」「解像度」のいずれを重視すべきかを判断して撮影モードを決めてくれるので、ユーザー側は特に意識することなく、これらの高画質モードを利用できるわけだ。
※従来のCCDと、スーパーCCDハニカム EXRの構造の比較については、富士フイルムのスーパーCCD ハニカム EXRに関するリリースページをご確認いただきたい。
※価格.com最安価格は2009年11月6日現在のものです
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