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なぜ日本国民は短期間に貧困化したのか?

山崎康彦2009/11/02
 GDP(国内総生産)は一年間に国内で産み出された付加価値の総額でその国の経済力を示す一つの指標です。GDPを人口で割った数字が「国民一人当たりGDP」でその国の国民一人が生み出す付加価値を表しています。

 ここに1996年から2007年までの「日本国民一人当たりGDPの世界順位」の表を掲げます。

 年    世界順位
1996  3
1997  4
1998  6
1999  4
2000  3
2001  5
2002  8
2003  9
2004  12
2005  15
2006  18
2007  19

 1996年の「日本の一人当たりGDP」は世界第3位でした。

 1997年は第4位、1998年には第6位まで下がりましたが1999年第4位、2000年には第3位まで回復しました。これは1999年7月に首相となった小渕政権がそれまでの橋本政権による財政再建のための「緊縮財政」を止めて積極的な財政出動に転換して景気を回復させた結果と思われます。

 しかしながら短期政権の森首相の後2001年に首相となった小泉政権の時代は毎年順位を下げ続け2007年には世界第19位と史上最低ランクまで落ちています。

 2008年の最新統計は未だ出ていませんが、おそらく世界第20-25位にまで順位を下げ先進国中最貧国の一つになっていると思われます。
 日本の国民は小泉政権下の6年間とその後の安倍、福田、麻生と3人の自民党内閣の間に最貧国の国民に成り下がってしまったのです。

 なぜ短期間にこのように急速に貧困化したのか、その原因は「小泉・竹中構造改革」の強行なのは明らかです。2001年4月、小泉純一郎氏が内閣総理大臣となり竹中平蔵氏を起用しマスコミを総動員して「小泉・竹中構造改革」を強行した結果が今の惨状を招いたのです。

▼ 日本の消費が今おかしくなっている

 今まで売れていたものが極端に売れなくなっています。ファッションや雑貨や日用品も日本の消費者は不要不急なものは全然買わなくなっています。ファッションで売れているのはUNIQLOやH&Mなどの安くておしゃれなファストファッションです。日曜雑貨や食品や家具なども売れているのはディスカウンターの低価格商品です。

 価格競争が一段と激しくなり存亡の危機に立っている百貨店はもとより、スーパーやコンビニも売り上げを大幅に落としています。低価格商品への流れは世界的な傾向ですが日本では極端に出ています。

 なぜこのような状況になってしまったのかを考えますと一番大きな原因は、ここ10年で日本人の個人所得が下がり続けて可処分所得が激減したからだと思います。日本国民が急速に貧しくなってしまったのです。

 また年金や医療や介護や生活保護や失業対策や労働者保護などの、いわゆる社会の「セーフティーネット」がズタズタに壊されたために、心の余裕がなくなり生活を楽しめる人が極端に減ってしまったことも消費不況の大きな原因だと思います。

▼ 個人資産はどこに行ったのか

 激減した個人資産はどこに行ったかの問題ですが、大手金融機関(ゼロ金利政策)、大手企業経営者(非正規雇用)、自民党政治家(企業献金)、特権官僚(天下り)、大手マスコミと広告代理店、外資系金融機関(円のキャリートレード、金融派生商品)、米国政府(米国債)に合法的に流され配分されたのだと思います。

 2001年4月に就任した小泉純一郎首相は竹中平蔵現慶応大学教授を使って「小泉・竹中構造改革」の名のもとに「規制緩和」「官から民へ」「小さな政府」「自己責任」をスローガンにした、いわゆる米国発の「新自由主義経済政策」をマスコミを総動員して強行しました。

 当初はマスコミの小泉改革翼賛報道で国民の90%が熱狂的に支持しましたが、8年後の現在支持した国民の多くは悲惨な状況に追い込まれています。

 GDPの65%は個人消費がつくりだすと言われていますが、個人消費の主役である個人を貧困化させ不安定化させたのですから消費不況になるのは当たり前だと思います。

 大企業や政治家や官僚や米国の利益を最優先にしてきたこれまでの自民党政治に加えて、2001年から始まった「小泉・竹中構造改革」を強行した結果が今の日本の惨状をもたらしたと思います。

▼ 安心して生活を楽しめる成熟社会を目指せ

 幸いにもぎりぎりのところで政権交代が起こり「生活が第一」を掲げる鳩山新内閣が誕生しました。

 これからの日本は、大企業や政治家や官僚や大手マスコミや米国政府や外資系企業など一部の特権階層が社会の主役ではなく、一般個人と中小零細企業と地方の人々が主役となり、年2−3%の低経済成長でもイタリアやフランスや北欧諸国のように「安心して生活を楽しめる成熟社会」を目指すべきだと思います。
 無駄を徹底的に省き、税金や保険料や給料が強欲な政治家や官僚や経営者や米国政府や外資系金融機関に盗まれることなく、国民生活と経済の活性化と国際平和のためにのみ使われれば、そのような社会はすぐにも実現可能です。

 今必要なのは、「第二の敗戦」と呼んでもよいほどに国民生活に深刻な被害を与えた「小泉・竹中構造改革」の実態を徹底的に検証してその責任者を割り出し彼らの責任を明らかにすべきです。

 「外国の利益のために国民生活を破壊した罪」を創設して処罰することです。
 「小泉・竹中構造改革」を批判的に総括をすることでこのような詐欺的な政治が二度とおこらないようにしなければなりません。

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[53818] 当たり前ではないでしょうか
名前:田中秀郎
日時:2009/11/10 14:37
わが国のGDPが下がる、のは当たり前では
ないでしょうか。
私は、派遣社員の際に、携帯電話の開発担当者と話を
聞いた際に、「どんなものを作ったらいいか」という
悩みを聞いたことがあります。
確かに高度な機能を持たせた携帯は作れます。
ただ、それを生産する機材もまた同様に高度化
したものになっていき、開発費や生産コストが
あがります。
一方、こちらの記事で触れられていないところ
として現在の超高齢社会があります。
少なくとも各分野で、メーカーが高い開発費をかけて
性能の高い新製品を出していこうとも、肝心の、国内の
消費者は高齢化していて、今後の国内の需要などそれほど
伸びは見込めませんん。

では海外に市場を求めようとしても、為替の変動、材料の
高騰(ひところの鉄や銅の値上がりは、大きな影響を与え
ていたのはまだ、記憶に新しいところです)があれば、
たちまち大幅な減益に繋がります。
また、他国の賃金の安い諸国がそれなりの技術力をつけて
きている現状(わが国からの改善活動の導入、機材の導入
など)ではなかなか大きな差をつけることが難しくなって
います。

つまりわが国はどうあがいてもジリ貧になっていきますから、
それを踏まえた議論が必要ではないでしょうか。

[53816] 愉快な意見だけが読みたいのですか
名前:藤重典子
日時:2009/11/10 14:09
それは「思考停止希望」ですよ。
[53804] 本文には関係のないことで、申し訳ありません
名前:小菅貴彦
日時:2009/11/10 10:16
下の方、引退されたのではないのですか? とても不愉快です。

元記事を書かれている方、真面目にご意見を書かれている方には、
本当に申し訳ありません。
この書き込みに関してもし処分があるなら、甘受いたします
[53660] 賛成ゆえの反対意見です
名前:藤重典子
日時:2009/11/07 05:48
消費がおかしい、と表現されていましたが、手持ちのお金がなくなれば、さらに今後の展望も開けていないとすれば、不要不急のものを買い控えるのは、おかしいというよりも当然ではないでしょうか。
私のまわりでも少し高齢者の意識変化があるようです。以前は長生きを目指していた方が多かったようですが、最近七十代の女性が二人、「早く死にたい」と言われました。一人は足が痛いからという理由です。孫に男性がいて高卒で就職しましたが、「虫けらのように扱われて、悔しい、悔しい、大学に行きたい」で、母親は手の筋肉が消失する病気にかかるほど工場で働きましたが、大学を卒業して就職した会社も失業ということらしい。これは年金・医療・介護にかかわることで補充意見になりますが。
それから、世界中の富の配分問題があります。ある本で読んだことですが、世界の富は繁栄した国が貧困化することで、順繰りに公平分配される、という見解です。日本だけが最長寿国であり続けるべきだという主張に記者は賛成ですか。私はややためらうのですが。
一国内での解決は不可能だと思われます。環境問題も地球人口の問題に大きく関係しています。生まれた子供は絶対に守る、しかし二人以上は産まない、という選択しか今はないと思われるのですが。そしてこの人口減少の変換期を不安の中ですごすのでなく、いかに楽しくすごすか、ということが大切であると思います。
[53606] 訂正
名前:井澤利行
日時:2009/11/04 22:53
>96年8位 97年9位 98年14位 99年19位 00年19位 01年18位
04年17位 05年17位 06年17位 となる。

は、以下にのように訂正します。

96年8位 97年9位 98年14位 99年19位 00年19位 01年19位
02年19位 03年18位 04年17位 05年17位 06年17位 となる。

失礼しました。
[53598] 責め方が違う
名前:井澤利行
日時:2009/11/04 20:33
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4542.html
から引用すると
> これを見ると日本のランキングは2000年の3位からつるべ落としに低下し、2006年に18位となっている(上記報告書では1993年に2位とピークに達した日本が2004年12位、2005年15位、2006年18位に低下してきているとしており、若干、ここでの順位とは異なっている)。

 実はこうした順位は為替レートで換算した1人当たりGDPをもとにしており、円高か円安かで大きく順位はぶれる。2000年代に入ってからの順位低下は円安傾向の影響が大きい。

>もちろん、同じ所得で世界の商品をどれだけ実際に買えるかという考え方からすれば、為替レート・ベースの比較は大きな意味を持っている。しかし、実際に消費している商品の量が為替レートで大きく変動するわけではないので、豊かさの指標としては為替レート・ベースの比較には限界がある。これを克服しようとして開発されている指標がPPP(purchasing power parity、購買力平価)ベースのGDP比較である
(引用終)

購買力平価をベースにすると
96年8位 97年9位 98年14位 99年19位 00年19位 01年18位
04年17位 05年17位 06年17位 となる。
小泉政権は01年〜06年だから最悪を引き継ぎ政権後期ではやや持ち直した結果となっている。
これは前期の緊縮財政の失敗に気づき、後期、デフレ脱却すべく日銀に圧力をかけた結果、金融が緩和され景気が持ち直した。
順位が落ちたのは、日本一国が長期停滞するあいだ、世界のGDPが1.9倍に成長したからだ。日本も普通に成長していれば、GDPは900兆円ぐらいになり、歳入も90兆円ぐらいで赤字国債の心配もしないで済んだ。以下を参照
http://www.iti.or.jp/stat/4-001.pdf
世界各国の名目GDP(上位60)

むしろ小泉政権の非は以下から明らかだ。
http://www.mof.go.jp/zaisei/con_03_g05_2.html
純債務高国際比較
小泉政権時の01年〜06年に急速に国の純債務額が悪化しているのがわかる。原因は不況時の緊縮財政により一層を景気を悪化させ歳入を減らした事。それと、金持ち減税が景気浮揚に役立たず返って財政を悪化させた。
ちなみに景気与える乗数効果は減税が0.6であるのに対して従来の箱物公共事業でさえ1.2前後。
いかにこれまでのマスコミの報道がインチキであったかがわかる。

それから、よく財政破綻の報道があるがこれもインチキ。
粗債務800兆円 − 金融資産 = 純債務 430兆円
と、思いきやまだまだカラクリがある。
官僚の天下り先を含む政府関連の連結決算をすると債務額200兆円
 つまり、一旦、政府の歳出となったものが天下り先に「何とか資金」として積みあがっていたりする。

最後に話は違うが、私が尊敬する さとうしゅういち記者が
亀井大臣を財務大臣兼務にせよと記事で主張しています。
合わせて読むと理解が進むでしょう。

[53597] 何か似ていませんか
名前:松カゼト
日時:2009/11/04 19:41
お説は一応もっともです。
それってヤッパリ戦争に負けた時の犯人探しと似ていません。
いやしくも今日我が国はれっきとした民主主義国です。政治がどうだからと言って、当時とは違い選択肢はあったのです。国民が決めた政治の結果なのです。それをそう言い立てたからと言ってどうなるものではないでしょう。おかげでもう政権交代したのです。ですから新たな改革しかこの国のレベルを上げる方策はないのです。自民党に任せ過ぎたことが反省なのであって、これからこそ、しっかり民主党の政治を監視すると同時に、国民も積極的にコミットしていかなくて、希望はないでしょう。 
[53559] 沖蔵涼子さん
名前:中岡晋
日時:2009/11/03 19:50
それが、怖いのです。
「シンプル族」と言われている人たちが、刹那的に消費してしまっている、「どうせ、貯金してもこの先どうなるかわからない。」「どうせ、年金はもらえない。」お金を使うのは、別に問題はありません、しかし、刹那的な人生は、自身もそうですが、国家にとっても百害あって一利なしです。今の政治家は、目先の問題解決で汲々としていますが、若い人が将来を見通せず、今のみに目が向いているとなると、この国は早晩行き詰ってしまうでしょう。
[53551] 貧困化した理由に関する個人的考察
名前:高山力也
日時:2009/11/03 18:11
本当に小泉改革が、“日本の一人当たりGDP”を引き下げた主因でしょうか?

私はむしろ、90年代に入ってからの新卒者の就職枠縮小、あるいは若年層に対する人材育成投資を怠ったことの“ツケ”が回ってきたものと解釈しております。
本来なら現在の経済活動の主戦力となるべき30代の層が、バブル崩壊の煽りをまともに喰らって人材開発がごっそり抜け落ちた世代ですので、国としての生産力が低下するのは当然の帰結と考えるべきでしょう。派遣社員やフリーターの問題も、実は同根のように見えます。

そこで大事なのは、このような愚を再び繰り返さないことだと思います。
昨年のサブプライム・ショックを発端にして、ようやく上向きに転じかけた新卒者の就職環境がまたどん底に叩き落とされました。“空白の10年”がさらに延長されたわけです。

そろそろ次世代に面倒なことを転嫁する癖を改めないと、この国の将来は本格的に危ないというのが私の意見です。
[53537] 社会の起爆剤になりえるのは
名前:沖蔵涼子
日時:2009/11/03 14:10
今の消費を支えてるのは『シンプル族』と言われている20代から
30代と言います。
記事に書かれてる通り、就職氷河期を経験し、何か買うときは
あらゆる情報を吟味してケチもつけるのに、ユニクロや無印は
パっと買う。
これらシンプル族は例え経費回復してもかつての日本のように
『自分の国で生産されたものを自国の為に使おう』という考えが
あまりないようです。
中にはフェアトレードや本当に意味で、日本が世界のどの位置に
置かれているかきちんと関心を示しているシンプル族も
いるようですが、その人たちが社会を循環させていく起爆剤に
なるかどうかも疑問だと思います。
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