かつて政治的意味を持っていたものが、なぜ今やもうほとんど無意味になってしまったのかは問い直してみる価値がある。もちろん、資本主義体制が軟化したわけではない。逆に、資本主義はこれまでになく勢力をふるい、より攻撃的になり、より勝ち誇っている。変化したのはまさにこの点である。これまでどおりの問題が、程度が格段に大きくなっただけだ。その意味で、社会主義は無効にされたのではなく、打ち負かされたのだ。奇妙な逆説ではあるが、社会主義をこれまで以上に正当なものにしているのは、それがまさしく無力であるという事実である。なぜなら、社会主義が無力であるということは、それに敵対する体制が制御不可能で危険きわまりないことのしるしだからだ。
イーグルトン『ゲートキーパー』(滝沢正彦・滝沢みち子訳)