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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

発行日: 2010/3/14


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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成22年(2010年)3月14日(日曜日)貳
       通巻2907号  (日曜版)
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 (本号は書評特集です)
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●◎ブックレビュー◎●BOOK REVIEW◎●書評◎●ブックレビュー◎●
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 日本軍人と大陸浪人らが描いたアジアの夢はかくも壮大だった
  チベット、モンゴル、ウィグルの独立を支援し、秘密工作は進捗していた


 関岡英之『帝国陸軍、見果てぬ「防共回廊」』(祥伝社)
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 月並みな言葉を用いれば「近現代史の空間にぽっかり空いた穴を埋めた」秀作であり労作である。
 不都合なことが多い所為か正史からきれいさっぱりと消されていた驚くべき事実が、最近公開された機密文書、公電から徐々に明らかにされ、当時の日本の壮大な秘密工作の全貌、すなわちシナ包囲網の構築、そのユーラシア戦略の希有壮大さが、ようやくにして浮かび上がった。
 ただし本書は過去に山のように出された大陸浪人伝や馬賊物語、日本人のマフィアまがいの血湧き肉躍る活劇冒険譚とは、まったく基本の性格が異なる。
 小日向白朗や野中進一郎といった馬賊になった日本人等は日本の戦略的ヴィジョンとは関係のない地点での活躍であった。

 それにしても労作だ。
 関東軍の「秘密工作」と諜報活動に携わった人等の、当時の雑誌にちょっと書いた論文等や人名録をたよりに、或いは引き揚げてきた人の遺族を三年がかりで訪ねあて、残っている写真やら遺品をヒントに、この作品は自らが歴史探偵となって進むベッド・ディテクティブの趣き。
いやヒストリー・ハンターと形容した方がぴったりかも知れない。
 つまり旧満州とモンゴルーウィグルに「親日国家群」を樹立させようとして獅子奮迅の活躍をした民間人、大陸浪人、シナ通、イスラム教徒、軍人。その背後には政治家と官僚たちが「国益」「国家目標」を共有できた、あの熱血の精神があった。
 中央でこれらの作戦を立案し、推進させたのは森銑十郎、板垣征四郎らである。辻政信や東条英機も、その戦略的人脈から言えば直系である。
 しかし現代日本の若者は所謂「太平洋戦争」史観と「東京裁判」史観で洗脳され、なんだか日本が侵略戦争をしかけたような間違いを信じており、マスコミがいまも嘘を垂れ流し続けているため、基本の知識がない。
いきなりこの本を読んでも、あのとき日本が置かれた国際環境やリアル・ポリティックスの時代背景も理解しないために、この本には巨大な市場性がたぶん希薄だろう。
 いきなり余談で恐縮だが、本書の題名はあまりに真面目すぎる。小生なら『シルクロードに散った浪漫』とか、この一直線のタイトルは回避しただろうけれども。

 ▲日本人は使命感に熱く燃えていた

 さて本題に入る。
 東京英機は「西北シナに潜入せよ」という密命を出す。いまのフフホト(当時は「厚和」といった)にあった興亜義塾に学ぶ二人の男がいた。西川一三(かずみ)と木村肥佐夫。
かれらは「モンゴル語、北京語、ロシア語や現地の地理、歴史、政治経済などの学習と軍事訓練にいそしみ、その後さらに一年間、モンゴル人ラマと起居をともにし、一モンゴル人になりきるべく、その風俗習慣を徹底的にたたき込んだ」と著者はかれらの活躍を活写し始める。
 西川は「残置諜者」(忍者用語で言えば「草」)のごとく「モンゴル人ロブサン・サンボー」と名乗り、以後終戦を挟んで八年間、アジア各地を放浪した。
 現在の内蒙古省にあたる地域は日本の勢力圏だった。
 「その西方に位置する寧夏省、甘粛省、青海省は敵地であり、中国国民党、中国共産党の漢人、モンゴル人、チベット人、ウィグル人などの各民族や、当時『東干人』(トングァン)と呼ばれた回民(中国ムスリム)などの諸勢力が割拠してしのぎを削る危険地帯」であった。
 西川はこれらの地区で諜報活動をしながら、さらに西へすすむと「ソ連からの援蒋ルートを目撃する。北方からドラム缶や平気を満載したトラック隊が土煙を上げて姿を現し、航空機が甘粛省の省都蘭州方面へ爆音」
を響かせていた。
命がけの密偵等はなぜそうした危険を冒してまでも祖国に尽くしたのか。
密命の背景にある巨大な日本の構想とは、「西北民族の包囲網を以てシナを攻略するという一大政策であり、蒙古族、チベット族を友として漢民族を包囲する体制を作り上げることこそシナ事変解決の鍵であった」
からだ。
西川はやがてチベットへ潜入した。
そこで日本の敗戦を知る。ヒマラヤを越えてインドで初めて(八年間の密偵生活のなかで、初めて)日本人と見破られた。相手は日本の支援で訓練を受けインド独立のためにチャンドラ・ボーズ軍で戦った親日派のインド人だった。
終戦を知らされても「草」の任務をまっとうするために帰国に及ばず各地に潜行した西川がようやく帰朝して、『秘境西域八年の潜行』という本を書いた。それを高校時代に読んで感動したのが著者の関岡氏で、本書を執筆する原動力となったという。

▲シナの四周を親日政府で固めよ

「1933年一月、関東軍は陸軍きってのモンゴル通と言われた松室孝良大佐を(中略)、関東軍司令部付とし、熱河省の承徳特務機関長に任命した」。
かれは陸軍士官十九期、「張家口を拠点に二年間、内モンゴルや西北各地を視察し、西の果ては甘粛省涼州(現代の武威市)にまで到達した」と別の任務を背負った松村大佐の物語が平行する。
潜入した先で軍閥のボスと意気投合したり馬賊や山賊に捕縛され脱出したり、私たちが知る小説『夕日と拳銃』(壇一雄)の伊達順之助の世界だ。いや、このあたりを舞台にしたのは胡桃沢耕二だった。

しかし松室の任務は何だったか?
「当時、関東軍は満州帝国の四周を睨み、土肥原賢二少将率いるハルビン特務機関がシベリアでの諜報活動、板垣征四郎少将率いる奉天特務機関が華北分治工作、そしてこの松室孝良大佐率いる承徳特務機関が内蒙工作を展開するという三正面作戦を構えた」
密命の中味とは「満州帝国の姉妹国として、内モンゴル全域を領土とし、チベット仏教を国教とする独立国家『蒙古国』を樹立せよ」
さすれば、甘粛省から東トルキスタンへ至るイスラムの地域にも独立の気運が伝播し、チベットもモンゴルに呼応し、「日本を中心とする満州国、モンゴル、回教国、チベットの環状同盟を形成」するという壮大無比、「ついには全アジア民族の奮起を促し、アジア復興を達成しうる」
これが日本の戦略だったのである。
勇躍してかれらは敵地へ潜入する。軍事情報を集めながら日本の同盟軍となりそうな有力者や軍閥の発見にも努める。
しかも各地では反漢族感情が強く、日本への期待は強烈であった。

ウィグルでは東トルキスタンが独立し、やがて中ソの陰謀で木っ端みじんに解体されるのだが、日本の密偵が少数、現地にもぐった。しかし大半は敦煌、蘭州あたりで回民の軍閥に邪魔された。だが回民軍閥も共産革命樹立以後は毛沢東によって粛正され、或いは少数が蒋介石について台湾まで逃れた。
日本軍は東ウィグルへ到達できなかった。

蒙古を独立させるために獅子奮迅の活躍をしたグループは、巧妙争い、セクト争いを繰り返しながらも徳王、粛親王を助け、一時的には政権を樹立した(このあたりの詳細は拙編『シナ人とは何か』(展転社を参照)。

 ▲熱血、流血、惨血、敗戦。そして革命

 こうして著者の関岡氏は近代・現代史の空白を埋めるべく資料を丹念に読み込み、図書館へ通い、関係者にインタビューを繰り返し、ようやくその全貌を掴んだ。
 あの時代、いまの若者が及びも付かない壮大な浪漫に命をかけた熱血の日本人がいた。
 
だが全ては太平洋戦線における作戦の齟齬、物量補給路の切断、兵站の維持不能などによって敗戦に追い込まれ、日本の夢ははかなく消えた。
満州族、蒙古族、ウィグル、チベットの民が、以後どれほどの苦しみに呻吟し、いまも中華帝国の圧政に苦しんでいるか。もし日本に責任があるとすれば、戦争に敗れたことである。
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 ◎ブックレビュー◎ ☆BOOK REVIEW◎ ☆書評◎ ☆ブックレビュー◎
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(読者の声1)日本ででている中国語新聞ですが、6、7年前は大久保や池袋の中国食品店まえに積んである新聞を時々、見ておりました。
確かに中国語の新聞はある意味で楽しめます。正確に読めませんが漢字を辿って意味を推測すると、幼稚で無理やりな反日記事。弁護士広告や風俗募集広告、売り店舗、中古車広告で溢れていました。
風俗求人情報は、払いもしないのに「日給6万保証」などと平気で掲載し、読者もそんなことを信用しないのに、応募している。通常の賃貸契約しかしていない店舗を譲渡する記事もあり。
こうした誇大広告や違法行為の広告をなぜ取り締まらないのか不思議に思っていました。日本人がこうした広告を国内の新聞に出したら取り締まりにあいますが、外国語の媒体は野放しです。
日本国内ですから法の下に取り締まるべきです。
コピー商品や盗難車、詐欺などやりたいときは中国の新聞に広告出せばいいと思います。
   (KK生)


(宮崎正弘のコメント)実際に被害にあった人が警察に訴えるだけではなく裁判をおこすべきでしょうね。



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(読者の声2)ヒラリーはイスラエルのネタニヤフに電話をかけて、異例の50分の話し合いを通じイスラエルの占領地入植強行策を強く批判した。その前にオバマと十分間はなして、どの言葉で応酬するかをヒラリーは協議したという。
ともかくイスラエルに対して米国の態度が鮮明にかわりつつあり、どういう結末になるか。
 これはオバマの肝試しなんです。日本人には、ユダヤ人の、または中国人の「したたかさ」が理解できない。
 倒産前のリーマン・ブラザース社長だったファルドは直前に5000億円を確保した。ファルドは議会公聴会でも強気一辺倒で、豊田社長のように、守勢一辺倒ではなかった。鼻っ柱の強いユダヤ人は泣かない。バイデン副大統領がテルアビブでネタンヤフと会談中に、イスラエルが東イエルサレムに1600家屋の入植を許可した。バイデンは気が短い人なので激怒したのだ。
 東イエルサレム(1989年、ぼくも行ったが)は伝統的にパレスティナ人の居住区(何千年)、そこへ1967年のヨルダンとの戦争以来、イスラエルは占拠。国際社会はこれを認めていない。
 だが1990年の湾岸戦争直前、人質解放のために、バグダッドでフセインに会ったジェームス・べーカー三世は、シャロンに電話し、“何かの時には、ここへ電話しろ”と、west・bankや、東イエルサレムの入植を容認するヒントを与えた(w・ポスト)。
 これは、湾岸戦争後のアラブの反抗を牽制するために、イスラエルが必要と布石したわけだ。
 いまや時代も環境も変わり、ヒラリーの立場は「米・国務長官」だ。たとえ過去の選挙でユダヤ系の支援があったとしても、アメリカの安全保障に関わることでは
イスラエルに文句をいう。
 ネタンヤフの東イエルサレム入植強行、黙ってはおれない。現時点のユダヤ・ロビー、AIPACは割れている。
 ネット・ワーキングが世界の勢力図を書き換える。つまり、「革命につながるネット・ワーキング時代」の衝撃。もはや、アメリカは、イスラエルの一方的なわがままに加担できない。さらに、イランは核保有国になります。ヒラリーも、ジョージ・ミッチェルも、その現実を自覚している。すると、イスラエルの方が、アメリカにとって「マイナス」の存在。イスラエルが入植を断念して、平和協定に積極的でないなら、ワシントンは、イスラエルとの同盟関係を見直さなければならない。
 ヒラリーとオバマが、ネタンヤフに発した、「言葉でなく、行動で示せ!」は、今までになかったこと。「平和協定に応じないなら、イスラエル対応を見直す」と。
 ネットには「援助を切れ」という書き込みが過半数。ユダヤ人側に立つ意見は二割、反イスラエルが八割の世論状況です。
  (伊勢ルイジアナ) 


(宮崎正弘のコメント)バイデン副大統領は一昨年、カブールを訪問し(当時は上院議員)、カルザイ大統領との夕食会で綱紀粛正、汚職追放を要求すると、「アフガニスタンに汚職はない」といわれて食事を中断、怒って席を蹴って帰った。瞬間湯沸かし器? それともパフォーマンスだけで中味のない政治屋?
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『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
 http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
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  ◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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