京都府舞鶴市のスポーツ用品兼遍路用品店「花咲悠省堂(はなさきゆうしょうどう)」(同fudasho0ban)も昨夏からつぶやき始め、フォロワーはすでに1万人を突破した。
1月半ばごろ、メーカーに在庫が四つしかなかったハンモック(定価約1万6千円)を仕入れ、「メーカーにはもうありませんよ」とつぶやいたところ、30分後に完売した。新着情報をリアルタイムで伝えられるツイッターの威力に、花咲比呂志(ひろし)社長(48)は驚いたという。
ただ、つぶやきの大半は「今日は大阪へ出張です」など花咲社長の個人的な内容。「ツイッターの基本は人と人とのつながり。だから人間味を出さないと」
地元・長島温泉のイベントや交通渋滞など観光客に役立つ情報を発信し、部屋数55室ながら、ホテル業界でフォロワー数トップ(約1万人)に立った三重県桑名市のビジネスホテル「ビーエル」(同hotelbl)。佐野康治社長(43)は「大手もだんだん参入してきた。負けていられない」と、有名ホテルやチェーンホテルへの「挑戦」を口にする。春の観光シーズンを前に、「今のうちに認知度を高めておいて、『伊勢神宮参りの時は宿泊します』とつぶやく人を増やしておきたい」。
■風説の流布・不正サイト誘導…トラブルも
生活雑貨・衣料品店の無印良品や、音楽・映像ソフト販売のポニーキャニオンなど大手企業も、続々とつぶやき始めている。
だが、宣伝のためのつぶやきをめぐっては、トラブルも起き始めた。
大手飲料メーカーが今年2月、キャンペーン活動でツイッターを使い、ユーザーが「コーヒー」といったキーワードをつぶやいた瞬間に自動的に宣伝メッセージを送信。了承を得ていない不特定多数のユーザーに対して宣伝用メッセージを送ったことがツイッターの利用規約に違反し、2時間で送信を中止した。メーカーは「情報発信には細心の注意を払い、再発防止に万全を期す」とホームページ上で謝罪した。
インターネットに詳しい神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)は「ツイッターは企業から見れば、乗客と同じ空間を共有して短いフレーズで注目させる電車の中づり広告に似ている。ツイッターを利用する企業は単なる広告ではなく、顧客とのより親密なコミュニケーションを望み、工夫すればその手助けになる。ただ、そのリアルタイム性ゆえに、風説の流布や不正サイトへの誘導といった問題も起こりやすいことに、一般利用者は注意してほしい」と話している。(中島嘉克)