音楽CDが売れない。インターネットで配信される曲をダウンロードする方式に押され、生産はこの10年でほぼ半減した。そんな中、若いミュージシャンらが「CDを買おう」と呼びかけ始めた。「ジャケットのデザインも、曲の並び順も作品の一部」と訴える。名づけて「BUYCDs(CD買おうぜ)」。
運動を始めたのは、東京都世田谷区在住の秦拓也さん(34)。服飾メーカーで働きながら、プロのキーボード奏者としても活動している。
青春は、レコードやCDとともにあった。輸入レコード店の並ぶ東京・渋谷に通ってはジャズやソウルの名盤を買いあさった。20歳から独学でピアノを学び、仲間とバンドを始めた。大学卒業後は就職せずにプロを目指した。
ここ数年、CDを取り巻く状況は劇的に変わった。音楽をダウンロードする方式が普及。レコード会社の経営は悪化した。
秦さん自身、様々な楽曲を集めてCDを制作する仕事を請け負って半年ほど打ち込んだが、会社の倒産で企画は立ち消えになった。
「音楽を形の無いデータでやり取りするだけなんて、あまりに味気ない」。CDの購買を呼びかけようと思い立った。手近にあったのが、勤め先で扱っているTシャツ。思いを込めて「BUYCDs」と胸に大きくプリントした。