学生による強制わいせつ事件や大麻所持などの不祥事が相次いでいる京都大が、再発防止に向けた学生教育の在り方をめぐって苦慮している。京大は4月、全新入生を対象に法令順守などの初年次教育を試行的に導入するが、学内からは一方通行の教育の限界を指摘する声も上がる。
京大は昨年2月、大麻所持や強制わいせつ容疑で学生が相次いで逮捕されたことを受け、教員が個別に学生に法令順守や人権の大切さを訴える「ローラー作戦」を展開。しかし、以降も学生の覚せい剤所持などの不祥事が起きた。
準強制わいせつ容疑で京都府警に逮捕され9日に放学(退学)処分となった工学部1年の男子学生の犯行は、大学がモラル徹底のガイダンス(昨年4月)を行った2カ月後だった。
ガイダンスで学生に呼び掛けた西村周三副学長は「どれだけ訴えが届いたのかという思いは残る。どんなモラル教育がいいのか、手探りしながら見つけるしかない」と話す。
危機感を深める京大は今年4月、全新入生を対象に計3日間、初年次教育の試行として、松本紘総長や西村副学長が法令順守やメンタルヘルスなどをテーマに特別講義を行う。2011年度からは初年次教育を授業として本格導入する。
ただ、学内の論議では、教員が一方的に学生に講義する教育の効果を疑問視し「学生同士や教員との間で議論する合宿のような場も設けるべきだ」との声も上がっている。
西村副学長は「外からの働きかけを待ったり、他者との接触を避けるなど学生気質が変わってきている。放任主義でなく、京大の『自学自習』の精神を伝えるモラル教育にしたい」としている。 |