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「核なき世界」どこへ オバマ政権が新型核ミサイル開発着手  

3月13日20時42分配信 産経新聞

 【ワシントン=佐々木類】「核兵器のない世界」を目指すオバマ米政権が、核搭載型の新型巡航ミサイルの開発に乗り出すことになった。2011会計年度(10年10月〜11年9月)の国防予算の研究費として、約300万ドル(約2億7千万円)を議会に要求している。「核なき世界」に向けたオバマ大統領の影響力が低下するとの懸念もあり、米政府が月内にも発表する「核戦略体制の見直し」(NPR)報告で、どう整合性をとるのか注目される。

 国防予算案は約1700ページに上り、その中に2030年に退役が予定される現行のAGM−86B巡航ミサイルに代わる長距離巡航ミサイル(LRSO)の研究開発費として、11会計年度に300万ドルを要求。15会計年度までの5年間で計約8億ドル(約720億円)が必要だとしている。

 国防総省は最終的な研究開発費として計13億ドルが必要と積算しており、AGM−86BからLRSOに配備を移行させるためにも、12年10月ごろには正式決定される見通しだ。

 現行のAGM−86Bの場合、戦略爆撃機B52の両翼に6発ずつ、胴体部分に8発の計20発を搭載可能だ。これに対し、新型のLRSOはB52への搭載だけでなく、将来的には無人戦略爆撃機への搭載も可能とされる。国防総省は、オバマ大統領が今月中にも発表するNPR報告にこうした研究開発計画を盛り込んだ。

 米シンクタンク・ハドソン研究所のフォード上級研究員は、米軍事専門誌に対し、国防総省のこうした計画について、「B52に核兵器を搭載しても、技術開発の進んだ最近の地対空ミサイルの餌食(えじき)になるだけだ。新型巡航ミサイルの研究開発は行うべきだ」と語る。

 現在、NPR報告をめぐっては、核兵器の目的について政権内部で意見が対立し3回にわたり議会への提出が見送られている。核攻撃抑止を「唯一の目的」と宣言するよう求めるホワイトハウスと、生物・化学兵器などで米国を脅かす恐れのある敵に対する核兵器使用の選択肢を残すため、あいまいな表現とするよう求める国防総省の調整が暗礁に乗り上げているためだ。

 オバマ大統領はNPR報告で、「核兵器の数を削減し、国家安全保障戦略における役割を低下させる」ことを表明。「米国は安全で効果的な核抑止力を維持する」とも語っている。

 ジョージタウン大学のキール・リーバー准教授(核政策)は、「NPR報告で核削減を宣言しても、米国の核戦略は根本的には何も変わらないと思う。核の先制不使用や『核抑止力が核保有の唯一の目的だ』と宣言したところで、米国が核攻撃の危機にさらされればそんなことをいっていられないからだ」と話す。

 いずれにせよ、オバマ政権が核搭載の新型巡航ミサイルの開発費を計上したことで、「核不拡散に向けた米国の影響力が低下し、イランや北朝鮮に核開発の口実を与えてしまう」(バイデン副大統領)との懸念とどう整合性をとるのか、大統領は難しい対応を迫られそうだ。

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最終更新:3月13日20時42分

産経新聞

 

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