腹に矢が刺さった奈良公園のシカ。奈良の鹿愛護会が麻酔で眠らせて保護した=奈良署提供
13日午前10時過ぎ、奈良公園(奈良市)のシカの腹部に矢が刺さっているのを、観光客が春日大社の表参道近くで見つけた。連絡を受けた「奈良の鹿愛護会」のメンバーが約1時間後に麻酔銃を使って保護し、矢を抜いて治療。シカは重傷だが、命に別条はないという。同公園のシカは天然記念物に指定されており、奈良署は文化財保護法違反容疑で調べている。
同署などによると、シカは体長約130センチ、体重約44キロの10歳程度の雌。矢は鉄製で長さ52センチ。ボーガン(洋弓銃)で撃ったとみられ、体内に24センチ刺さり、折れ曲がっていた。愛護会によると、保護した時は矢が貫通した状態で血が流れ、呼吸が弱く、苦しそうにしていたという。現在は同公園・鹿苑内の治療室で眠っている、という。
春日大社によると、古来、シカは神の使いとして大切にされてきた。だが同公園では2003年にボーガンの矢が、08年には漁具のヤスが刺さったシカも見つかっている。愛護会の池田佐知子事務局長は「弱い立場のシカを、人が攻撃するのは誠に残念」と話す。