民主党の輿石東参院議員会長(山梨選挙区)の自宅がある神奈川県相模原市の土地が農地法に違反して転用されている問題で、違反転用部分の固定資産税を、土地を使っている輿石氏ではなく、名義上の所有者である義弟が負担していることが分かった。また、転用部分は実際には宅地として使われているにもかかわらず、宅地より低税率とされる農地や農業施設として課税されていた。【杉本修作、山本将克】
輿石氏宅の敷地面積は計1298平方メートルで、このうち義弟名義のまま違反転用されているのは779平方メートル。
義弟によると、この779平方メートルは農地や農業施設として登録されており、義弟が年約3000円の固定資産税を納めている。固定資産税は路線価を基に課税されるが、相模原市などによると、付近の農地は宅地と比べ100分の1、農業施設は10分の1程度の税額になるという。実際、昨年10月以降に同市農業委員会の指導により義弟が農地から宅地に変更した別の190平方メートルについては、面積は約4分の1ながら年約1万5000円の固定資産税がかかるといい、面積当たりでは約20倍となっている。
これまでの輿石氏や義弟の説明によると、1298平方メートルのうち母屋部分313平方メートルは輿石氏名義の宅地。残る985平方メートル(農地969平方メートル含む)は義弟名義の土地だったが、89年ごろ輿石氏に実質的に譲渡され、輿石氏は宅地への転用手続きを経ないまま、自宅の一部として車庫や舗装路などを整備し、1298平方メートルすべてを塀で囲った。
相模原市農業委員会は昨年10月以降、農地を元に戻すよう指導し969平方メートルのうち190平方メートルは宅地に変更されたものの、779平方メートルは転用が厳しく制限されている農業振興地域整備法に基づく農用地(農振農用地)で、違法状態が解消されていない。
同市は原則年1回、土地が登録通りに使用されているか調査しているが、農振農用地を宅地扱いで課税することはありえないため、これまで農地や農業施設として課税していたという。同市は「過少に課税していたことが判明した場合、追徴課税することもあり得る」と話している。
輿石氏は「農地は義弟名義なので、固定資産税は義弟が払っている。脱税しているとかいう意図は毛頭ない」と説明している。
違反転用について輿石氏は12日、国会内で報道陣に「義母から『ここに家を建てて住んでほしい』と頼まれた。市農業委員から『農地に戻すように』と指導があり、現在、宅地部分に植えてある木を移植するなどして農地に戻している最中だ」と説明した。
相模原市農業委員会は12日午前会見し、問題の土地は、実質的に輿石家が農用地以外に使っているとの見方を示した。
昨年10月と12月、今年2月の計3回、土地所有者である輿石氏の義弟に対して行政指導を行った。2月24日の指導では、庭石や植木、車庫に敷きつめたコンクリートブロックについて「至急撤去してほしい」と求めた。【高橋和夫】
毎日新聞 2010年3月12日 東京夕刊