議員らの強引な「口利き」を防ごうと、職員への働きかけの記録を残す制度がある19府県のうち、実際に記録しているのは7府県にとどまることが朝日新聞の取材で分かった。かつて「改革派」とされた知事が導入した県でも記録の件数は減少し、制度が形だけのものに変わりつつある。大阪府の橋下徹知事も府議会に同様の仕組みに参加するよう求めているが、府議の間では尻込みする声が強い。
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7府県のうち、年間の件数が最も多かったのは長野県。田中康夫前知事(2000〜06年在任)が始め、初年度の03年度は144件あった。
同県は記録の対象を「職務に関する要望、提言、意見、依頼、要求等」としており、「県営住宅のトイレ改修」や「県道の路面清掃」など議員や市町村長から要望された記録が、04年度も120件、05年度は88件残された。
しかし現在の村井仁知事が就任した後の07年4月、問い合わせを受けた職員が個人の判断で対応できる要望などを対象から外したところ、07年度は3件に激減。08年度以降は記録が残っていない。
担当者は「職員が個人の判断で対応できると判断するケースが目立つようになった」。昨春、幹部の会議で「不適切な働きかけは記録の徹底を」と呼びかけたが、今に至っても0件という。
高知県では橋本大二郎前知事(1991〜2007年在任)のもとで、03年9月に制度を導入。その後半年間で37件記録されたが、08年度はなかった。昨年4月、担当課が「職員が迷っているのではないか」と働きかけの定義に関する「Q&A」集を改定したが、その後も0件が続く。担当者は「各地で制度が形骸(けい・がい)化していると聞くが、うちも力が足りないのかもしれない」と話す。