熊本県湯前町の潮(うしお)神社は子宝や安産、子育てに御利益があるらしい。乳房をかたどった布細工をお供えする風習に町の有志が着目。地区の人が守ってきた小さな神社が「おっぱい神社」の名で地域おこしに一役買っている。
ゆのまえグリーンパレス芝生広場の奥を左折すると、ため池のほとりの杉林に潮神社がひっそりたたずんでいる。総代会長の板垣博さん(75)が「伝説交じりですが」と由緒を教えてくれた。
安産祈願で知られる宮崎県日南市の鵜戸(うど)神宮から分祀(ぶんし)され、1400年代の室町時代、永享年間ごろ再興された。山なのに潮の香味がするわき水が見つかったのが建立のきっかけだ。人吉球磨を長く治めた相良氏の手で保たれたらしい。
「わき水は地下水脈で日南海岸とつながっている」との言い伝えがあるという。神社裏手の小さな泉で水をなめたが、塩味はしない。でも今年度、近くの泉源掘削で出た温泉から塩分も検出された。「潮」の名に思いをはせ、想像が膨らむ。
乳房型のお供え物は板垣さんの子ども時代、神社に数個ほどぶら下がっていたという。
その風習に目をつけた若者たちが2006年、「潮おっぱい祭り」を始めた。実行委員長の竹下裕一さん(43)は「住民手作りで参加型の祭りをしたくて。おっぱいの神様は少子化時代に際立つと思った」と言う。
祭りでは子宝を願う夫婦を神社に招き安産祈願をする。毎年15〜30組が来る。哺乳(ほにゅう)瓶での牛乳早飲みやダンス披露など、ツツジの季節の風物詩になってきた。
昨年4月、温泉とレクリエーションを組み合わせたスパトライアスロンとおっぱい祭りが同時開催された。妊娠中の女性らが神社へ歩く「おっぱいアスロン」があり、綾瀬はるかさん主演映画「おっぱいバレー」の羽住英一郎監督もヒット祈願に来た。
潮神社から100メートルほど離れた塞(さい)神社には男性器をかたどったご神体がまつられている。潮神社との対で1986年、町商工会が建立した。町にはマシュマロやまんじゅうなど「おっぱい」を冠した菓子もある。
祭りの問い合わせは、湯前町商工会(0966・43・3333)へ。(中村幸基)