行き場のない中産層の自閉症患者たち(下)

施設側が低所得層を優先

 保健福祉家族部の障害者権益支援課に問い合わせたところ、「基礎受給者を優遇するという決まりはない」との答えが返ってきた。以前は「基礎受給者の割合を最低70%とすること」という規定があったが、2000年代初めに、障害者向け生活施設は誰でも利用できる「普遍的サービス」に生まれ変わり、規定がなくなったという。

 だが、韓国障害者福祉施設協議会のイム・ソンマン会長は、「2005年に障害者福祉事業が自治体に移管されたが、いまだに基礎受給者を優遇するという慣例が残っている自治体が多い」と語る。

 ミンホさんは幸い昨年末、ソウルから4時間ほど離れた、地方のA生活施設に入所した。住所を施設がある地域に移し、カンさんが何度も頭を下げたことで、ようやく実現したものだ。カンさんは「とても感謝しているが、A施設もやはり基礎受給者を優遇しているため、いつ追い出されるか分からない」と話す。

 この施設は、40人の定員に対し、現在12人(基礎受給者10人、一般入所者2人)が入所しているが、最近、重度の障害がある一般入所者が、1カ月間にわたるテストで「脱落」した。施設としては、とにかく「面倒を見やすい」障害者を入所させたいというわけだ。カンさんは「ミンホも脱落するところだったが、『もう少し様子を見る』とのことで、条件付きでパスした」と語る。

 福祉部に登録された自閉症患者は1万3956人(09年6月現在)で、登録されていない自閉症患者を含めると、計4万人ほどになると推定される。

金慶和(キム・ギョンファ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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