「北朝鮮はトラクター工場で武器を製造」(下)
器の密売を担当していた脱北者が証言
しかし、国際社会による北朝鮮に対する制裁が行われる中、通常の武器輸出は難しくなる。そうなると、今度は人民武力部偵察局が動き出すという。平壌外国語大学などを卒業し、英語や中国語が堪能な貿易の担当者たちを動員し、第3国のフォワーダー(海運貨物取扱業者)と契約を結ぶ。A氏によると、「フォワーダーに貨物の輸出を求めると、彼らは中身については聞かず、手数料だけを求めてくる」という。
そして北朝鮮は、コンテナに武器を3分の1から半分だけ載せ、鴨緑江を通じて外部に送る。武器を積んだ船が川底にぶつからないよう、北朝鮮には川底の管理と整備を専門に担当する部隊がある。その後、貨物を受け取ったフォワーダーは、船で第3国の指定された港に向かう。そこには少なめに荷物を積んだコンテナだけを一時的に保管する「待機ヤード」がある。ここで、武器とは関係のない一般の貨物をコンテナにまぎれ込ませ、貨物関連の書類を作成する。このようにして最初の洗浄を終えた武器コンテナは、今度は香港やシンガポールなど別の地域で2回目、3回目の洗浄を行う。A氏は「途中の寄港地で再び別の貨物が積み込まれる。コンテナのチェックは行われるが、それほど厳密ではない。その国の政府が気合いを入れて取り締まったとしても、第3国向けの山のように積み上げられたコンテナの中から、北朝鮮製の武器を探し出すことは不可能だ」と説明した。
■武器の製造は江界のトラクター工場で
A氏は北朝鮮の軍需産業の母体について、「トラクターを製造する江界26号工場だ」と明言した。韓国戦争(朝鮮戦争)前には、平壌にソ連製の銃を製造する工場があったが、この工場は戦争中に内陸の江界に移されたという。ここでは1万人以上の労働者が、銃弾から化学兵器まで、あらゆる弾頭を製造している。化学兵器については人民武力部が担当する。A氏は「人民武力部傘下の生物科学研究所は江界26号工場の隣にある。この研究所で製造された毒ガスは、26号工場で製造された弾頭に装着される」と説明した。金正日(キム・ジョンイル)総書記は、江界地域を毎年2回から3回は必ず訪問しており、昨年12月9日にも江界のトラクター工場を視察している。
■一番の人気商品は銃弾とAK47小銃
A氏は「輸出される武器の中では銃弾の人気が高く、第2経済委員会はエチオピアに生産設備まで輸出した」と語った。中東では砂が入り込んでもしっかり作動するAK47小銃が人気だという。北朝鮮の武器はパキスタン、フィリピン、インドネシア、バングラデシュなどにも売られている。A氏は「北朝鮮製の武器のうち、エンジンが装着されるもの(戦車など)は性能が低いが、弾頭に使用されるものは十分使える」と語る。ミサイルに関しては、輸出用は部品の20%が外国製だが、内需用は99%が北朝鮮製で、性能に違いがあるという。A氏は「北朝鮮はかつて、台湾からハープーン・ミサイル(対艦誘導ミサイル)を密輸入しようとしたことがある。これは韓国海軍がハープーンを使用しているからだろう」と証言した。
李竜洙(イ・ヨンス)記者
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