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スポーツ報知大阪版>コラム>橋本樹理の馬界くらぶ

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栗東から女性騎手が消えた日…西原玲奈騎手の引退

引退セレモニーに向かう西原さん

 3月1日。関西からJRAの女性ジョッキーが消えました。関西唯一の女性ジョッキーだった西原玲奈騎手が10年間の騎手生活に幕を下ろしました。

 父親の影響で競馬中継を見る機会が多かった西原さんは、自然とジョッキーにあこがれの気持ちを抱きました。中学3年生の時、細江純子さんがJRA初の女性ジョッキーとしてデビュー。細江さんにファンレターを送るなど、職業としてはっきりと意識するようになりました。そして、その念願を成就させ、00年3月4日にデビューを果たしました。初勝利は3月25日の中京7R。キンザンウイニングで差し切りV。9戦目での初勝利は女性ジョッキーとして最速のもの。1年目は9勝、2年目も6勝を挙げ、順調な騎手生活を送っていましたが、その後の道のりは平たんではありませんでした。

 02年6月2日、初めての障害レースで落馬。右足脛骨骨折、腓骨骨折、腰椎圧迫骨折の重傷を負いました。1年弱の長期に及んだリハビリ。「もう馬に乗れないんじゃないか」。ケガの痛みよりも恐怖感の方が大きかったといいます。そのつらい時期を乗り越え、03年5月3日に復帰。そして、その1か月後の6月15日、復帰後11戦目で勝利を挙げました。「二度と勝てないと思っていたし、気持ち的には初勝利の時と近かったですね」。勝つ喜びを再び味わえたものの、騎乗数は年々減少。「頑張っても乗せてもらえない、と正直腐っていました。でも、よくよく考えたら私は勉強もしてないし、何も知らない。このまま辞めても後悔する」。引退の2文字が頭をよぎりながらも、あきらめきれなかった西原さんは07年にフリーとなりました。

 さまざまな厩舎の調教をつけ、モンテクリスエスやムードインディゴ、シェーンヴァルトなどの重賞ウイナーにも騎乗。いわゆる「走る馬」と呼ばれる馬の背中、他厩舎の調教方法などを初めて経験しました。そして、これ以外に大きかったことが2つ。これまで所属していた厩舎の須貝調教師が西原さんをレースに乗せるため、どれだけ頑張ってくれていたかを思い知らされたこと。また、先輩ジョッキーたちとの会話も西原さんの意識を変えました。「攻め馬をつけても競馬に乗せてもらえない。仮に結果を出しても次は上位のジョッキーに乗り替わる。じゃあ、どうしたらいいの?」。折れかけていた心が、再び前を向きました。藤田ジョッキーは騎手仲間と話をするきっかけを作ってくれ、安藤勝ジョッキーも悩みを聞いてくれました。「アンカツさんに『勝とうと思っても勝てないんだから、楽しんだら』と言ってもらって、競馬に対する意識が変わりました。それまではヘマをしたらいけないと思うことが多く、それがマイナスになって馬にも競馬にも伝わっていたような気がします。それ以降は楽しくなって競馬で緊張しなくなりましたね」。騎乗数は少ないながらも、レース直後の西原さんの笑顔が競馬の楽しさを物語っていました。

 ちょうど1年前のこと。「もし、調教助手になるんだったら、うちに空きがあるから来ないか」。騎手としての生活を楽しみながらも、第2の道も頭の片隅にあった西原さん。梅田智調教師の言葉に大きく揺さぶられ、決心を固めました。「いいお話だと思いました。私は馬が好きで、騎手としてだけでなく、ずっと馬に乗っていたいと思っていた。ジョッキーを辞めても受け入れ先がないケースもあるし、すごくいい先生やスタッフのいる厩舎で働けるのは幸せだと思いました」。

 10年間の騎手生活にピリオドを打ち、第2の人生へと一歩を踏み出しました。そして、新たに掲げた目標。「お世話になった人たちに恩返ししたいんです」。2月27日の引退レースで着用した勝負服に「西原玲奈」と刺しゅうしてくれた高野葉子オーナー、乗り馬を用意し、常にバックアップしてくれた「カシノ」の柏木努オーナー。須貝調教師や梅田智調教師、競馬や調教に乗せてくれた調教師たち、厩舎スタッフ。そして、ジョッキー仲間やファン。数え上げればきりがありません。「その人たちがいなかったら10年間続けてこられなかった。その人たちに貢献できるように頑張りたいんです。私は馬が大好き。機械と違って1頭1頭違うし、一生懸命に接したら応えてくれる。思うようにならないこともいっぱいあるけど、それがまた楽しいんです。結婚しても、子供ができてもずっと馬に携わっていきたい」。真っすぐに前を見据えた西原さんの目はキラキラと輝いていました。騎手としては重賞騎乗はかないませんでしたが、仕上げ人としてその舞台を踏む日も楽しみに待っています。

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(2010年3月13日17時54分  スポーツ報知)

筆者略歴  橋本 樹理(はしもと・じゅり)

広島県出身。関西外国語大でマネージャーとして硬式野球部に所属。アマ野球記者を夢見て00年に報知新聞大阪本社に入社するも、新人研修で阪神競馬場に連れて行かれ、競馬の道へ足を踏み入れてしまう。整理部を経て03年に競技部に配属、競馬担当に。予想で競走馬にそっぽを向かれることが多いため、趣味の乗馬で馬の気持ちを知るべく修業中。

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