沖縄返還にからむ日米間の財政密約について財務省が調査結果を公表し、「国家のうそ」がまた一つ明らかになった。
だがこれは、これまで研究者が米側公文書で確認してきた密約のほんの一部だ。政府はこれで幕引きとしたいようだが、歴史的事実を封印したままにしてはならない。有識者を新たに組織し、徹底的に調査し直すべきだ。
先の外務省の調査では、沖縄返還協定で定めた「表」の3億2千万ドルの中に、日本が負担する理由がない原状回復補償費400万ドルを紛れ込ませていたことが分かった。
今回の財務省調査では、「表」の協定以外に1億300万ドル余をニューヨーク連邦準備銀行に無利子預金していたことが判明した。
だが研究者の調査では、「裏」の負担として基地移転費、労務管理費の計7500万ドルもあったことが分かっている。「表」の協定額の中に、短波ラジオ局(VOA)移転費を紛れ込ませていたことも証明済みだ。
これらは今回も解明できていない。財務省内に文書が残っていないというのが理由だ。都合が悪いから廃棄したと見るのが自然だろう。外交文書は納税者たる国民の財産であり、廃棄したのなら国民の財産の侵害だ。なぜ残っていないのか理由を突き止め、廃棄した人がいたらその名を公表し、せめて道義的責任を追及すべきだ。
無利子預金も、米側がその運用益をどう使ったのか全く分かっていない。基地移転費も、米側がこれを、本来米国が負担すべき基地の維持・改善にも使えるよう求めたとされる。この点も未解明だ。
これら「秘密の財源」が尽きたころ、思いやり予算が登場した。沖縄返還密約が思いやり予算の源流とされるゆえんだ。それは膨らみ続け、全世界の米軍への思いやり予算の半分以上を日本1国で負担するほど膨らんだ。それでも足りず、米軍再編ではさらにグアムへの海兵隊移転費も日本が負担することになった。だから密約の全容解明は、今の日本外交の在り方を検証するために欠かせないのだ。
密約は力関係が不均衡な二国間交渉で発生しがちだ。対等でない日米関係を証明したと言えよう。
密約はまた「条約の偽造」とも言われる。真の条約を国民の目から覆い隠す行為が許されるのか。その点の責任も問うべきだ。
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