きょうのコラム「時鐘」 2010年3月14日

 クロマグロの禁輸を覚悟しなければならない雲行きである。国際会議で日本の言い分に耳を貸さぬ国が増えるのは無念だし、情けなくもある

パンダやシーラカンスのように、絶滅の恐れがあるそうな。広い海の中の出来事は、門外漢には分からない。確かなことは、禁輸という締め付けが強まっていけば、魚より先にマグロ漁は「絶滅」する。地球に優しい人たちは、えこひいきして特定の国や職種をいじめて平気なようである

ゲンゲなる魚が近年、北陸で好まれる。コラーゲンに富み、揚げ物や鍋などに好まれる。見掛けは悪く、ヌルヌルした手触りが敬遠され、見向きもされなかった魚である。マグロのトロにしても、しつこい脂が嫌われて長い間、捨てられてきた

マグロが遠ざかるのはさみしいが、身をよじって嘆くほどでもない。ゲンゲもそうだが、身近に美味はいくらもある。それに気付く好機でもある

それでも、海の向こうの禁輸騒ぎが心配になる。資源管理を怠っておきながら環境保護をとなえ、さまざまな漁業や食文化を絶滅に追い込む。そのおかしさに、とんと気付かないようである。