【萬物相】ロシアの人種差別テロ
「ハイル、ヒットラー!」「ロシアはロシア人の国だ!」。モスクワ郊外マリノの森で2002年5月、このようなシュプレヒコールが鳴り響いた。殴り合いのけんかの末に選ばれた新入団員に、生肉とブドウ酒が入ったナチのヘルメットが配られた。極右暴力団体・人民民族党の指導者は、新入団員の口に肉と酒を含ませこう叫んだ。「すべてのロシア人の肉体はゲルマン精神で武装しなければならない」。そして3人を相手にけんかさせ、2分以上耐えた団員に、憲兵の資格を与える戦闘儀礼も行われた。
ロシア政府の機関紙・イズベスチャ紙のスキンヘッドの記者が、この森の中の儀式に潜入し、スキンヘッド族の集会現場を初めて報じた。「1カ月前、ヒトラーの誕生日に、汚い警察がわれわれを捕まえようと血眼になっていた。スキンヘッド狩りは今も続けられている」。人民民族団の指導者は「われわれはやくざではなく、純粋な血統の人種主義者であり、その主人だ」と語った。
ロシアには、全外国人を敵と見なすスキンヘッド族が6万人以上いるとされ、モスクワだけで20組織を超える。毎年4月30日のヒトラーの誕生日になると、外国大使館に電子メールで警告状が送られる。「われわれの戦争が始まる。この地を去らない外国人は死を迎えるだろう」。そのためヒトラーの誕生日には、外国人は外出や登校を避け、留学生の多いサンクト・ペテルブルグの学校は休校になる。
ロシアでは毎年、50人前後の外国人がスキンヘッド族によって命を奪われている。昨年は犠牲者が120人に達したとの統計も出ている。こうした人種差別テロは韓国人にも及んでおり、昨日にはモスクワ市内で韓国人留学生がナイフで刺され重傷を負う事件が発生した。ある交換留学生が先月、青年3人に集団暴行を受け死亡した事件から、3週間目のことだ。昨年には、語学研修中だった女子大生が路上で後ろからシンナーをかけられ、ライターで火を付けられてやけどを負った。
反外国人感情とヒトラーの人種優劣主義の復活は、ソ連崩壊後の国家威信の低下と経済難、大量失業によるものだという。ロシアは第2次大戦の際、東部戦線で2700万人の犠牲を伴ってナチスを撃退した。だが今や、一部の的外れな考えを持つ若者らがナチスを崇拝し、祖先の功績に泥を塗っているわけだ。にもかかわらず、ロシアの警察と裁判所は、人種テロを単純な暴力事件としてしか扱っていない。こうした状況にある中、もはや韓国政府は、ロシアに在住する同胞やと留学生に対し注意を促すだけの措置にとどまっている場合ではない。
呉太鎮(オ・テジン)論説委員
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