【社説】英有名オーケストラ、ハンセン病施設で公演へ

 世界的に有名な英フィルハーモニア管弦楽団が5月5日、全羅南道高興郡の国立小鹿島病院ウチョン福祉館にハンセン病患者を訪ね、ベートーベンの交響曲『運命』を特別演奏する音楽会を開く。朝鮮日報が創刊90周年を迎え招く同楽団は、同月3-4日にソウル市の芸術の殿堂で公演を行うのに続き、小鹿島を訪れる。ロシア生まれでピアニスト出身の指揮者、ウラディーミル・アシュケナージは小鹿島の話を聞き、ギャラなしで公演を引き受けた。

 小鹿島での公演には、ハンセン病患者600人のうち、身動きが取れる300人と医療陣、病院関係者が招かれ、客席は騒音防止のため、楽団員が使用するものに似た材質の簡易いすを準備する。指揮者アシュケナージは小鹿島での公演が決まると、すぐに演奏曲目にベートーベンの『運命』を選んだという。彼は「ベートーベンは自分の運命に打ち勝つストーリーを描いた人物なので、『運命』を選んだ。わたしが病気を治すことはできないが、彼らの人生を少しでも支えられたらと思う」と語った。

 これまで韓国の交響楽団も小鹿島を訪れたことはない。こうした中、英王室の後援を受けるフィルハーモニア管弦楽団が小鹿島を訪ねる。「フィルハーモニア・アット・小鹿島」と名付けられた公演は、小鹿島と外界を結ぶ和音の橋だ。小鹿島公演はフィルハーモニア後援会長で、2004年から小鹿島で奉仕活動を続けてきた在日韓国人のロザーミア子爵夫人(韓国名イ・ジョンソン)が同楽団に対し、「小鹿島では誰もが歌を友としている。彼らには音楽が最も必要なプレゼントだ」と話を持ちかけたことがきっかけで実現した。

 アシュケナージは元ピアニストで、1955年にショパン国際ピアノコンクールに出場し2位となったのに続き、56年のエリザベート王妃国際音楽コンクールと62年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝。独奏と室内楽のレコードでグラミー賞を5回も受賞した。1980年代からは指揮者も兼ねるようになった。アシュケナージは1965年に初めて韓国で公演を行った後、ソウルでリサイタルを5回開き、韓国の音楽ファンにとっても身近な存在となった。98年のアジア通貨危機当時には有名音楽家の韓国公演が相次いで中止されたが、沈うつなムードに沈むソウルで出演料を当初の3分の1だけ受け取り、韓国人の心の傷を癒やす感動の舞台に立ったこともある。

 小鹿島と世界を結ぶ橋を懸ける構想を最初に思いついた人も、その構想を快諾した指揮者と楽団員の温かく広い心も、われわれの心を打つ。恐らく芸術はこうした感動を抱かせるために生まれたものであり、ベートーベンの『運命』はその誕生以来初めてそうした聴衆の前で演奏されることになるはずだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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