金総書記の「秘密資金管理人」、近く帰国か

ジョンウン氏後継説との関連も

 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の秘密資金、後継者問題、健康問題を一手に管理しているとされる、李徹(リ・チョル)駐ジュネーブ代表部大使(75)が、30年にわたるスイスでの生活に終止符を打ち、今月下旬ごろに北朝鮮へ帰国する見通しであることが、10日明らかになった。帰国の背景や、後任などについてはまだ分かっていないという。

 外交関係の消息筋は、「高齢であることに加え、あまりにも長い間スイスに滞在していることなどが考慮されたものと考えられる。また、(金総書記の三男の)ジョンウン氏に内定したとされる、後継者問題に関連したものである可能性も否定できない」と語った。李大使は1980年、北朝鮮の駐ジュネーブ代表部大使として赴任し、88年からは駐スイス大使も兼任してきた。さらに2001年からは、駐オランダ、リヒテンシュタイン大使も兼任している。

 北朝鮮関連の消息筋は、「金総書記の3人の息子(正男〈ジョンナム〉、正哲〈ジョンチョル〉、ジョンウン各氏)は全員、スイスで学校に通ったとされている。北朝鮮の“ロイヤルファミリー”が留学生活を送るに当たり、面倒を見続けた李大使は、金総書記が最も信頼を寄せる側近の一人だ」と語った。とりわけ、ジョンウン氏の場合、李大使の保護の下、スイスの首都ベルンの郊外にある3階建ての集合住宅で、妹のヨジョン氏と一緒に生活し、1998年8月から2000年秋には地元の公立学校に通っていたとされている。

 李大使はまた、赴任直後から金総書記の秘密資金を管理していたとして、注目されてきた人物だ。

 2006年4月、米国務省のクリストファー・ヒル国務次官補(当時)が、「北朝鮮が6カ国協議への復帰を拒み続けた場合、スイスの銀行に開設された、金総書記の秘密資金40億ドル(現在のレートで約3600億円)が入っている口座を調査することも可能だ」という趣旨の発言をした、とワシントン・タイムズ紙が報じたが、李大使は当時、声明文を発表し、「荒唐無稽(むけい)な話だ」として、秘密資金の存在を否定した。だが、08年12月、フランスの日刊紙「ル・ピカール」は、「ジュネーブは北朝鮮の秘密資金の管理場所となっており、また同時に、世界に開かれた北朝鮮の窓口としての役割も果たしている」と報じた。

 また同紙は、1991年以降、故・金日成(キム・イルソン)主席や金総書記の持病の治療を担当するため、フランスの医師らを北朝鮮へ招聘(しょうへい)する上で、李大使が中心的な役割を果たした、と報じた。なお、李大使はフランス語に精通しているとされている。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る