釜山少女暴行殺害:「凶悪犯には人権より公益が優先」

警察が容疑者の顔を公開

昨年のカン・ホスン事件でも問題に

 10日午後4時30分、釜山・沙上警察署に護送されたキム・ギルテ容疑者(33)は、頭を振りながら前髪で顔の上部を隠した。帽子やマスクを着用していなかったため、顔は確認できた。警察はこれまで、凶悪犯を公開する際には、帽子をかぶらせ、マスクを着用させてきたが、今回はそのようにしなかった。

 警察庁の関係者は10日、「今回の事件をきっかけに、国民の関心が高く公益上の必要がある場合には、顔を公開するかどうか、事件ごとに検討することにした」と説明した。警察がキム容疑者の顔を公開したのは、すでに指名手配犯として顔が公開されており、DNA鑑定で容疑も固まっていたためだ。また、顔を公開しても、キム容疑者には妻や子供などがいないことから、家族が被害を受ける心配がないという点も、警察は考慮したという。

 昨年1月に京畿道南西部での連続殺人容疑で逮捕されたカン・ホスン死刑囚は、護送されたときや現場検証の際、帽子を深くかぶり、顔が見えないようになっていた。これには「殺人鬼の顔を隠すな」「悲惨な殺され方をした被害者よりも、残忍な殺人を犯した容疑者の人権の方が重要なのか」など、被害者の家族をはじめ、抗議が相次いだ。しかし警察は、カン・ホスンの顔は最後まで公開しなかった。2008年に京畿道高陽市で小学生を誘拐したイ容疑者も、帽子とマスクで顔を隠した。安養市で小学生二人を誘拐・殺害したチョン・ソンヒョン死刑囚は帽子をかぶり、皮ジャンパーで頭を覆った姿で護送された。06年に連続殺人で逮捕されたチョン・ナムギュ死刑囚も同様だった。

 本紙は昨年1月31日付で、「7人の笑顔を奪ったのはこの笑み」という見出しで、カン・ホスンの顔を初めて公開した。「人倫に反する犯罪を犯した犯罪者の顔は、しっかりと公開すべき」という国民の怒りに応えたものだった。先進国では、凶悪犯罪の犯人について、本人の人権よりも犯罪予防と国民の知る権利を優先し、顔を公開するケースが多い。

 2004年以前まで警察は、凶悪事件を起こした容疑者の氏名や顔を公開していた。しかし、04年に起こった密陽女子中学生強姦(ごうかん)事件をきっかけに、顔を公開することによる人権侵害が問題となり、容疑者の顔は人権保護という名分の下、帽子やマスクなどで隠されるようになった。

 05年10月には「犯人の肖像権も人権という観点から保護すべき」という国家人権委員会の勧告に従い、「人権保護に向けた警察官職務規則」(警察庁訓令461号)が定められた。この訓令は、「警察官は警察官署内で、容疑者など事件に関係する者の身分を推測できたり、露出する恐れがある場面が撮影されることがないようにしなければならない」と定めている。

 しかし、「“推定無罪の原則”は認めざるを得ないとしても、自白に物証まで確保された凶悪犯の顔を隠す必要があるのか」という声が常にあった。容疑者の人権を守る前に、犯罪の再発防止を怠ってはならないという論理だ。

 現在、連続殺人や児童への性犯罪など、人倫に反する凶悪事件を起こした犯人の顔や氏名、年齢などを公開する「特定凶悪犯の処罰に関する特例法」改正案が、国会で審議中だ。

チェ・ソンジン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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