アル・パチーノ演じるプロファイラーが脅迫電話に出る。「お前は88分以内に死ぬだろう」。死を目前にした彼は、受話器の向こうにいる犯人の心理状態を、声やイントネーションを基に分析する。これまでに検挙した連続殺人犯を含め、自身にかかわる周囲の人物全員を想定し、脅迫事件の容疑者をふるいにかけていく。そして、ついに自らが捕まえた犯罪者の中から脅迫犯を割り出す。映画『88ミニッツ　FBI異常犯罪分析医ジャック・グラム』（2007年）で展開されるストーリーだ。

　プロファイラーとは、犯罪現場の状況や容疑者の成長背景を分析し、犯人の年齢、性格、職業、教育水準、身体的・肉体的特徴を推定（プロファイリング）する科学捜査・分析専門家のことだ。1912年、フランスの犯罪学者エドモンド・ロカールは、「あらゆる犯罪は痕跡を残す」と語った。「プロファイラーはこの痕跡を探り、犯罪というパズルを組み合わせていく」という意味から、「パズルを解く人」とも呼ばれている。

　初の正式なプロファイラーは、米連邦捜査局（FBI）捜査官だったジョン・ダグラス氏だ。映画『羊たちの沈黙』でスコット・グレンが演じたベテランFBI捜査官のモデルとなった人物だ。FBIは犯罪動機が解明できない連続殺人事件が相次いだことを受け、1972年に犯罪心理分析を専門とするプロファイラー制度を導入した。プロファイラーは、強盗や窃盗といった動機がはっきりしている犯罪には必要ない。連続殺人事件や不特定多数を対象にした凶悪事件のように、常識では動機をつかめない犯罪の分析が彼らの仕事だ。

　今回、韓国警察のプロファイラーたちは、釜山少女暴行殺害事件の容疑者キム・ギルテが犯行現場近くに隠れていると推定した。プロファイラーたちは、キム容疑者には韓国各地を逃げ回るほどの経済力がなく、パニック障害と人格障害のため、極端な不安と対人恐怖症を抱えているという点に着目した。「こうした性格から考慮すると、行動半径は極度に狭い」との分析は的中した。キム容疑者の身柄が確保されたのは、犯行現場や同容疑者の養父母の家から半径300メートル以内の場所だった。

　韓国では2000年に初めてプロファイラー制度が導入された。現在、全国の警察で約40人が活躍している。通り魔殺人事件や動機不明の殺人事件が頻繁に発生している昨今、犯人を捕まえるための頭脳的な闘いはいっそう激しさを増している。ただ、プロファイラーの有効性が高まっているということは、世の中がより険悪な方向に向かっているということでもある。

金琅基（キム・ナンギ）論説委員