【コラム】共同中継するだけが能か(下)

 五輪とは異なり、W杯の場合、予選48試合のうち同時に行われるのは16試合に過ぎない。ある1局が単独中継するからと言って、「いろいろな試合が見られない」と批判されることは少ないはずだ。だが、2006年のドイツW杯が終わった直後、放送委員会は「テレビ3局が同時生中継しただけでなく、再放送により3回以上『重複放送』したケースは、全中継放送の85%を占めた」と発表した。これほど重複放送を繰り返し、「ほかの番組が見たい」という視聴者の視聴権を奪っておきながら、普遍的な視聴権をうんぬんするのは話にならない。事実、当時「チャンネルの選択権を奪われた」という視聴者からの非難が激しかった。結局、チャンネルの数字に関係なく、視聴者が見られる試合の数は変わらなかったことになる。そうした競争を繰り広げながら、テレビ3局がドイツW杯で得た総広告収益は628億ウォン(現在のレートで約50億円)だった。

 先進国では、大型スポーツイベントが行われる場合、各テレビ局が緊密に協力し合い、視聴者に最大限の選択権を与えるよう努めている。まったく同じ試合の中継を、まったく同じ画面で、複数のチャンネルで一度に流す必要はない。韓国のテレビ各局がその程度の「紳士道」しかないはずがない。では、現在の状況で国民の普遍的な視聴権を守る最善の方法とは何か。商業利益を追い求めるSBSの独占的な態度にはしっくり来ないが、他人の足を引っ張ろうとするKBSやMBCの共同中継を求める主張も納得しがたい、というのが今の視聴者の気持ちではないだろうか。

エンターテインメント部=チェ・スンヒョン放送チーム長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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