余裕資金積み上げる企業、不況招く要因に(上)

 ソウル市に住む勤続12年目の会社員Sさん(40)は、勤務先の会社の銀行預金が1兆ウォン(現在のレートで約770億円、以下同)以上あると聞いて怒りを感じた。Sさんの年収は3年連続で横ばいで、家計の事情が悪化しているにもかかわらず、会社にはキャッシュが積み上がっていることに矛盾を感じたからだ。Sさんの月収は350万-400万ウォン(約27万-31万円)。生活費と住宅担保ローンの金利、両親の生活費、小学2年の子供の教育費などを払えば赤字だ。

 そのため借金はどんどん膨らんでいる。最近返済期限を迎えた住宅担保ローンは、ほかの銀行からの借り換えで何とかしのいだ。しかし、金利負担は月5万ウォン(約4000円)、借り入れ額は1000万ウォン(約77万円)にも増えた。昨年初めまで100万ウォン(約7万7000円)前後だった給与口座の残高は、最近800万ウォン(約62万円)の借り越しとなった。Sさんは「会社はもうかっているのに、なぜ社員の暮らしは苦しくなる一方なのか」と嘆いた。

 今や、企業は富み、社員は貧しくなりつつある。企業の利益は本来、再投資などを通じて国民に還元しなければならない。ところが、企業はもうけた資金をただ積み上げているだけだ。専門家は「こうした現象が続けば、家計の消費余力が減退し、庶民経済の長期的な成長潜在性が損なわれ、貧富の差はますます拡大する」と懸念を示した。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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