金総書記、民衆集会に初めて姿現す

咸興のビナロン工場が稼働再開

 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が「2・8ビナロン(北朝鮮で命名された合成繊維)連合企業所(工場)」の完成を祝うため、咸鏡南道咸興市で開かれた民衆集会に姿を現した。この工場は今回、16年ぶりに操業を再開した。金総書記の集会参加については、北朝鮮のマスコミ各社が6日に一斉に報じた。

 金総書記は警備の問題などから、野外での集会に姿を現すことはほとんどない。韓国の安全保障関連部処(省庁)の関係者は、「金総書記が経済分野での民衆集会に姿を現したのは初めてだ。2003年9月の政権樹立55周年を祝う軍の閲兵式、07年4月の朝鮮人民軍創設75周年の閲兵式など、政治・軍事関連の集会にたまに姿を現す程度」と述べた。北朝鮮の住民が金総書記の声を直接聞いたのは、1992年4月に人民軍創設記念式典で語った「英雄的な朝鮮人民軍将兵たちに栄光あれ」という一言だけだった。これも、放送トラブルが原因といわれている。今回の集会でも、金総書記の肉声は聞かれなかった。

 この日、朝鮮中央テレビや朝鮮中央放送などは、10万人以上が集まった咸興市の集会に金総書記が出席したというニュースを、録画映像で詳しく報じた。金永日(キム・ヨンイル)首相、金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長(国防長官に相当)など、党や政府、軍の首脳も大挙出席した。咸鏡南道のテ・ジョンス党責任秘書は慶祝報告で「将軍様(金総書記)を中心に団結し、人民生活向上に向けて総攻勢を展開しなければならない」と述べた。この日は咸興市内のほかの各地でも、慶祝宴会や公演などが行われた。

 今年は金総書記がビナロンに特別な関心を示している。ビナロンとは無煙炭から取り出したカーバイドを原料とするもので、北朝鮮が自国で開発した合成繊維だ。北朝鮮では「主体繊維」とも呼ばれる。金総書記は先月初めに2日続けて咸興工場を訪問したが、その際には北朝鮮を訪問していた中国共産党の王家瑞中央対外連絡部委員長を咸興に招いて会談を行っている。先月11日付けの労働新聞は、金総書記が今回再稼働したビナロン工場で、「きょうほど喜ばしい日はない」と涙を流して語ったと報じた。工場再稼働に功労のあった2400人の労働者には、勲章も授与された。各紙が報じたところによると、労働者たちは「首領様(金総書記)に早くお持ちしよう」と口々に語りながら、ビナロン繊維を専用の列車に載せて平壌までやって来たという。

 治安政策研究所のユ・ドンリョル研究官は、「ビナロンは1960年から70年代にかけて、“着る問題”解決のシンボルだった。住民たちに生活改善の幻想を抱かせるため、大規模に宣伝しているようだ」と述べた。北朝鮮は今年の新年社説で、「軽工業と農業に拍車を掛け、人民生活を向上させよう」と強調したが、デノミネーション(通貨単位の切り下げ)の失敗で住民生活はさらに悪化している。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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