【コラム】「スロービデオ」日本(上)

 少し前、日本最高を誇るクラシック・コンサート・ホール「サントリーホール」に行った。驚いたのは、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏ではなく、観客の顔触れだった。見た限りでは、ほぼ半分以上が高齢者だった。銀座のデパートに行っても、伝統ある温泉旅館に行っても、高齢者であふれている。美しく年を取った高齢者たちが、スロービデオのようにゆっくり歩き回る姿は、日本社会の特徴の一つだ。

 こうしたことができるのは、もちろんお金を持っているからだ。日本銀行資金循環統計によると、高齢者(60歳以上)は2007年末現在、1157兆円の金融資産を保有しているという。これは全金融資産の70%を上回る額だ。そのうち、日本の戦後高度成長期を代表する「団塊の世代」(1947-49年生まれ)約680万人が保有する金融資産は約130兆円。韓国の年間国内総生産(GDP)よりも多い。今も、海外から毎月1兆円ずつ入る海外資産所得のほとんどが、こうした高齢者の元に入る。彼らの資金力は、年に50兆円(国家予算の56%)を上回る国の負債を国内市場で消化する土台になっている。

 韓国のバレーボール関係者なら誰もが知っている人物に、大松博文氏(1978年死去)がいる。同氏は64年の東京オリンピックで金メダルを取った日本女子バレーボール代表チームの監督を務めた。その2年前の62年には、自身が率いる実業団チームを世界選手権で優勝させるという、伝説的な記録を打ち立てた。同氏が63年に出版した本は『おれについてこい!』というタイトルで、オリンピック直後に出した本は、『なせば成る』というタイトルだった。行き過ぎたスパルタ式特訓を強要し、批判もされた。しかし、疾風怒濤(どとう)の経済成長期を生きた現在の豊かな高齢者世代なら皆、覚えているシンボル的存在だ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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