【コラム】「スロービデオ」日本(下)

 昨年、民放のTBSが制作した全11話のドラマ『官僚たちの夏』は、日本が米国に次いでGDP世界2位になった1972年以前の約10年間を背景に、日本の通産官僚たちの物語を描いた作品だった。「おれ(おれたち)についてこい」と大声を上げ、一家に1台ずつテレビや冷蔵庫が入る姿をうれしそうに見詰める官僚たちの姿に、視聴者は郷愁に浸ったり、熱い思いを抱いたりした。日本の現代史には、思い浮かべるだけで胸がときめく「歴史的なストーリー」が確実にあったのだろう。

 しかし、視線を現在の勤労世代に向けると、20-30年後にきちんと年金を受け取れるかどうかが最大の心配という、「小さな個人たち」が目に入ってくる。彼らが一生懸命働いても、月に稼げるのは29万円(勤労者平均所得)ほど。大学を卒業したばかりの新社会人たちに「自分の将来をいつまで予測できるか」と聞くと、「30歳」(読売新聞調査)という答えが返ってくる。初めから就職をあきらめ、何カ月もアルバイトをして稼いだ金を貯金し、旅行に行くだけという若者も多い。外国留学も、勤務も避けて通る。経営戦略専門家の大前研一氏は、「日本がますます内気な国になっていく」と話している。

 日本の既成世代は、こうした若者たちが気に入らないようだ。チャレンジ精神もなく、ただ現実に甘んじようとしているという。「バンクーバー冬季五輪で金メダル一つ取れなかったのも、このためだ」と責める人を何人も見た。その責任が高齢者にあるのか、若者にあるのか、そうでなければ中間世代にあるのかは分からない。とにかく日本は、夢の塊ともいえる「歴史的ストーリー」がますます見当たりにくい国になりつつある。

東京=辛貞録(シン・ジョンロク)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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