客室乗務員を右側の操縦席に座らせ、機長と並んで撮影された写真=国土交通省が加工して提供
諭旨退職となった副操縦士(右)と機長(左)と客室乗務員(中央)。操縦士が2人とも前方を見ていない
スカイマークの副操縦士が操縦室内で記念撮影を繰り返していた問題で、乗客を乗せた運航中、進行方向に背を向けた機長らを撮影した写真があることがわかった。前原誠司国土交通相が12日、閣議後の記者会見で写真を公開した。見張りを怠っており、航空法に違反する。同省は11日から同社に対する立ち入り検査を始めており、関与した乗員だけではなく、会社に対する行政処分も検討する。
公開された写真は、国土交通省が同社から提出させた十数枚のうちの2枚。1枚は副操縦士席に座った客室乗務員が機長とピースサインで写っている。もう1枚は副操縦士と機長が客室乗務員を挟んで写っている。前原国交相は「(いずれの写真も)全員こっち(後方)を向いている。運航中です。お客さんが乗っている機内で、こういうことが起きるのは言語道断。許されざる行為だ」と述べた。
スカイマークの説明では、30代の副操縦士は昨年4月から今年2月にかけて、飛行中、計5回にわたって操縦室で機長や客室乗務員らと記念撮影を繰り返していた。
航空法は、運航中の操縦者に見張りの義務を課している。国交省は、機長と副操縦士の2人とも前方や計器を見ていない状態は「ありえない」としている。2001年の米同時テロ以降、操縦室への出入りは厳しく制限された。客室乗務員は業務上、操縦室に入ることは認められているが、操縦席に座ることは想定されていない。同省の島村淳運航課長は「法律以前の問題。安定飛行中でも、客室乗務員を座らせれば、操縦桿(かん)や計器などに触れて危険が生じかねない」と指摘している。
スカイマークは「主導した」とされる副操縦士を諭旨退職に、一緒に写った機長3人を出勤停止、客室乗務員7人を減給処分とした。だが、同省は「社内処分で済む問題ではない」との受け止めだ。会社として安全への取り組みや教育、指導、コンプライアンスの体制に根本的な問題があるとみて調査を進める。
同社の安全体制を巡っては、風邪で大きな声が出せない客室乗務員を「非常時の誘導に支障がある」と判断した機長が交代させようとしたのに、西久保慎一社長と井手隆司会長が認めず、逆に機長を交代させて運航を強行していた問題も発覚。同省が9日に厳重注意したばかりだ。
連続して安全にかかわる問題が明らかになったことについて、前原国交相は「(スカイマークは)利益至上主義と言わざるを得ない」と指摘。羽田空港の4本目の滑走路のオープンに向けてスカイマークなど新興の会社に一定の発着枠を割り当ててきたが、将来的な見直しの可能性にまで言及した。
スカイマークは「事実関係を確認後、再発防止策を検討したい」としている。(佐々木学)