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児童買春・児童ポルノ等禁止法改正に関する意見書(2010.2.1)

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、児童買春・児童ポルノ等禁止法改正案の成立に向けて、日本政府に対して下記のことを要望します。

 

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児童買春・児童ポルノ等禁止法改正に関するセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの意見書

2010年2月1日

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもの権利の実現を目指す国際NGOとして、我が国において2008年以来懸案となっている児童買春・児童ポルノ等禁止法改正案が今国会(第174回通常国会)において成立することを強く希望すると同時に、同法案の策定において以下の点をご考慮いただけますよう要望申し上げます。

 

1.      児童ポルノ等禁止法は子どもを権利の主体として把握する国連子どもの権利条約の精神に基づいて作成された法律ですから、子どもが自分自身の力で性的搾取・虐待から自らを守ることができるように、適切なメディアリテラシー教育を含む性教育を子ども達に提供することを明記すべきと思います。

2.      国連子どもの権利条約第12条は、「子どもに影響を及ぼすすべての事項について、自由に自分の意見を表明する権利があり、その意見は子どもの年齢と成熟度にしたがって、相応に考慮されなければならない」とあります。したがって、児童ポルノ等禁止法改正にあたっても、十分かつ適切な情報を子どもたちに提供することを前提条件に、子どもたちの意見を聴取すべきと思います。

3.      実在の子どもを対象とした子どもポルノについては、被写体とされたこと自体がすでに実在の子どもの人権侵害を構成すると考えます。したがって、実在の子どもを対象とした子どもポルノを製造、流通、配布、輸入、輸出、提供、販売以外の目的で所持する行為についても、冤罪の可能性を最小限なものにするという配慮のもとで違法化すべきと考えます。(1)

4.      実在しない子どもを対象とするポルノグラフィックな素材についても、「性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持すること」および「青少年が健全に成長できる環境を保障する」という観点から、一定の規制を行うべきであると考えます。(2)

5.      子どもポルノの被害に遭った子どもの保護については、福祉面での支援だけではなく、司法手続きにおける「子どもに優しい手続き」の導入も検討すべきです。

6.      本法律改正と並行して、取り調べ手続きの可視化、裁判所制度以外の個人申し立て等の救済制度の整備を進めるべきと考えます。また、行政府から独立した人権オンブズパーソン制度や国内人権委員会の設置も同時に進めるべきと考えます。

さらに、国内的救済措置を尽くして依然、適切な人権救済が実現しなかった場合に国際人権委員会に対する個人通報制度を利用できるように、現行の国際人権条約の下での個人通報制度に日本政府は早期に加入すべきと考えます。

これに関連して、国連子どもの権利委員会に対する個人通報を可能とする選択議定書の早期策定のために、日本政府が積極的な貢献をすることを強く求めます。

 

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本見解に関するお問い合わせ

森田明彦 シニア・アドバイザー/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

電子メール morita@savechildren.or.jp

                               

(1)2000525日に国連総会で採択された「子どもの売買、子ども売買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書」(日本政府は2002510日に署名、200482日に批准)は、同第2条(c)項で、子どもポルノを以下の通り定義しています。

「子どもポルノグラフィーとは、実際のまたはそのように装ったあからさまな性的活動に従事する子どもをいかなる手段によるかは問わず描いたあらゆる表現、または子どもの性的部位を描いたあらゆる表現であって、その主たる特徴が性的な目的による描写であるものを意味する」。

その上で、同議定書第3条第1項は、「各締約国は、最低限、次の行為および活動が、このような犯罪が国内でもしくは国境を越えてまたは個人的にもしくは組織的に行なわれるかを問わず、自国の刑法において全面的に対象とされることを確保する」と定め、子どもポルノに関しては、同条1項(c)で、「第2(c) で定義された子どもポルノグラフィーを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売し、または上記の目的で所持すること」と定めています。

つまり、同議定書では、最低限、子どもポルノグラフィーを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売し、または上記の目的で所持することを取り締まることを求めているのです。

さらに、国連子どもの権利委員会は、チリ政府およびコスタリカ政府の政府報告書に対する最終意見において、子どもポルノの単純所持も禁止することを求めています。UN Committee on the Rights of the Child, Consideration of Reports submitted by States Parties under the OPSC, Concluding Observations on the Chile, op.cit.,paras 23-24 and on Costa Rica, op.cit.,paras 14-15 and 24-25.

また、200811月にリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議で採択された最終文書が各国政府に署名・批准することを求めている「性的搾取からの子どもの保護に関する欧州評議会条約」は、意図的な(実在の子どもを対象とした)子どもポルノの所持および故意の閲覧を処罰することを求めています。

(2) セーブザチルドレン(デンマーク)が事務局を務める「オンライン上の子どもの安全に関する欧州NGO連合(eNACSO: European NGO Alliance for Child Safety Online)」のポジションペーパーは、非実在の子どもの性的行為に関する写実的描写にはCGI(computer-generated images)や描画、アニメーションが含まれるとした上で、これらの擬似画像(pseudo-images)についても違法化することを求めています。

eNACSO(European NGO Alliance for Child Safety Online), Position Paper "Child sexual abuse online and child abuse images", June/2009