14日正午まで72時間、中区の中国電力本社前でハンガーストライキ(絶食による意思表示)をし、上関原発(山口県上関町)の建設計画中止を訴えている。
「原爆の放射能によって傷ついたヒロシマから、原爆と同じエネルギーによって電力を作ることは、中電が広島県民との間に大きな溝を作ることだ。原子力の平和利用はありえない。原子力と共存はできない」
三原市で生まれ、瀬戸内海の豊かな自然の中で育った。高校では科学研究部に所属。瀬戸内海に生息するスナメリを調査し、上関原発建設予定地周辺が生物多様性の宝庫だと知った。05年からは、一時、藻場造成計画が持ち上がった竹原市の「ハチの干潟」で、生き物などを調査し、干潟を手つかずのまま次世代に受け継ぐ活動をしている。
昨年9月から、原発建設予定地の海域埋め立て工事を阻止する行動に参加。予定地の対岸約4キロにある祝島の島民らとともに、建設計画中止を訴えた。
「原発は、奇跡的に残された『瀬戸内海最後の楽園』ともいうべき自然を壊す。悠々と泳ぎ回るスナメリたちの行き場がなくなる。それだけではなく、放射性物質や大量の温排水で、瀬戸内海全域にまで影響を与える。原発よりも『命の海』を守ってほしい」
昨年11月には、海上で阻止行動中に負傷。「請負業者の作業員に推進派の漁船に引き揚げられ、4人から船上で首を絞められて押さえられたり、羽交い締めにされた」などと主張し、山口県警柳井署に傷害容疑で告訴状を出した。一方、中電は「無謀で不法な行為を行い、非常に危険な状況だったので船上に引き揚げた。傷害罪にあたるような行為はない」と反論。岡田さんら4人に約4790万円の損害賠償を求める訴えを起こしている。
「建設予定地でいくら阻止行動をしても、中電は強引に工事を進めようとする。被爆地であり、最大の電力消費地でもある広島の人に、この問題を考えてほしい」
こうした思いから、体に負担がかかるのは覚悟のうえで「1人の人間としてできる最大限の意思表示」と、11日正午からハンストに入った。時折、通りかかった人から温かい励ましの声をかけられる。
「次の世代のため、そして、現地の人たちや『命の海』のためにも原発はない方がいい。中電はすぐに工事を中止し、別の方法を市民や消費者と模索する道を作るべきだ」【樋口岳大】
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■人物略歴
86年生まれ。干潟探検家。市民グループ「ハチの干潟調査隊」代表。小中学校で海辺や川辺の生き物について子どもたちに教える活動をしている。「上関原発を考える広島20代の会」呼びかけ人。
毎日新聞 2010年3月13日 地方版