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03月12日(金)11時30分 更新
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ニッポン食材風土記 完全養殖・近大マグロ

安全性高く、品質は安定
天然資源も減らさずに済む

ゆったりとした環境の中、安全なエサで育てられ、処理された近大マグロは、様々な点で特筆すべき長所を持つ。

その一つは、“全身トロマグロ”と呼ばれるほど脂が多く、赤身も中トロ並みであること。当初、岡田さんらは天然ものに近いマグロを目指したが、畜養マグロが「脂もの」として市場でもてはやされる中、市場関係者から「脂を抑える必要はない」と言われ、今では脂の多さを売り物にしている。

出荷されるマグロの魚体には、1匹ごとに卒業証書(写真)が張られる

エサの履歴がハッキリしている、水銀濃度が低い、抗生物質を使っていない──といった点も、完全養殖マグロならではの特長だ。もちろん、天然資源の保護につながるのも利点。近大マグロは、味はもちろん、それ以外の面でも、今どきの消費者に訴える多様な魅力を持ち合わせている。

しかし、量産への道のりは険しい。ネックになっているのは、稚魚の大量生産ができないことだ。近大が1974年に完全養殖の研究を始めて34年が経った今でも、産卵はまったく自然にゆだねるしかないし、たとえ孵化しても、稚魚の生存率はきわめて低い。

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