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所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

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日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.03.13

 デノミ危機 北体制 危機の予兆 金総書記が住民集会出席 

カテゴリ北朝鮮出典 産経新聞 3月13日 朝刊 
記事の概要
北朝鮮国内では、昨年実施したデノミのよる混乱が現在も続いている模様だ。米価格は急騰し、餓死者もでているという。

こうした中、金総書記が住民集会に出席するという異例の動きも伝えられた。金総書記が地方の住民集会に姿を現すのは初めて。

金総書記は6日、北朝鮮●鏡南道にある化学繊維工場の完工を祝うための約10万人参加の「●興市大衆大会」に出席した。

集会が開かれた●鏡道は土地がやせ、食糧難になると餓死者が多く出る地域だ。南部の●興は反政府的な傾向が強く、住民統制が難しい地域とされる。

身辺警護に神経をとがらせる金総書記が●興の集会にまで行かざるを得ない背景には、それだけ住民の不満が高まっていることがうかがえる。

北朝鮮専門家は「北の官製集会が一転、ルーマニアのチャシェスク政権末期のように、糾弾集会になれば自分に銃口が向く。危険性がより高い地域での集会に出席するのは、それだけ体制が追い込まれているからだろう」と話した。

住民の動揺を抑えるため、北朝鮮当局は統制を強めている。デノミ後、国境を越える脱北者を無条件に射殺しているとされる。脱北者が運営する韓国の対北放送「自由北韓放送」によると、国境を流れる豆満江では射殺された死体が見られるという。

脱北や携帯電話での外部との連絡は、2月から死刑など厳しい罰を科す「民族反逆罪」などが適用されている。

しかし厳しい弾圧は「逆に住民の不満や反発を爆発させる引き金になる」(脱北者)との指摘も出ている。

※●は漢字が見つかりません。たぶん「イ」(訓読)と読むのだと思いますが、正しい漢字が見つかり次第、訂正します。
コメント
先日、ラジオ番組で、テリー伊藤さんから「神浦さんは前々から北朝鮮が崩壊すると言っている。でもまだ崩壊していない」といわれた。「私が北朝鮮は昨年のデノミの失敗で、国内に崩壊を予兆される反金正日的な動きが出てきた」と話したからだ。

実は私は1998年頃から北朝鮮が崩壊すると言い続けている。人口2400万人の北朝鮮で、300万人〜400万人の餓死者が出たといわれたあの時からである。

国民が餓死しないように食糧を与えることもできず、病気の子供の治療も出来ないような国だからだ。

そでれいて独裁者とその周辺だけは贅沢な生活を満喫している。新潟港で日本から高級メロンや高級和牛の肉などを積み込む万景峰号を初めて見たときは、心底腹がたってしかたなかった。

ところが北朝鮮は中国や韓国からの援助で、独裁体制が崩壊することなく今まで生き残った。しかし平壌を除く多くの国民が苦しい生活を続けていることに変化はない。

そんな国が、「これからも存続していくでしょう」とは口が裂けても言いたくなかった。それで私に責任が生まれるなら、その責任を真正面から受けようと思った。どんな批判も受ける覚悟である。

言い続ける理由だが、かつて私の師と仰いだ小山内宏先生(故人)から言われたことがある。「軍事評論は天気予報と違います。明日は快晴だと天気予報で言っても、もし雨であっても済むでしょう。しかし軍事評論では、ある国を脅威だ、脅威だと言い続ければ、相手も段々と対抗手段を講じて、双方に不必要な軍事緊張を新たに生み出します。だから軍事評論では自分の言葉が新たな緊張を生み出す可能性を自覚しなければいけません」と、話された。

だから北朝鮮の独裁体制が崩壊することを期待して、北朝鮮の崩壊の予兆を言い続けてきたという一面もあると思う。

それが無駄なことだとは思わない。しかし責任はある。私の場合、「神浦は嘘つきだ」「神浦はデタラメだ」という批判が高まれば、テレビやラジオへの出演、新聞や雑誌のコメント、原稿の依頼は断たれることになくなる。軍事ジャーナリストとしての職は成り立たない。

今までにそのようなコメンテーターを山ほど見てきた。私もそのように社会から捨てられ、忘れられる者になることが、私流の責任の取り方である。

逆に自分の言葉の責任を取りたくないから、曖昧にした表現で誤魔化したいとは思わない。それこそが恥と思っている。

そこで北朝鮮について言うが、北朝鮮の崩壊は今までとは比較にならぬほど危機が高まっている。今度こそ、金総書記の独裁体制が崩壊することを確信している。
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