県の後期高齢者医療制度を巡る汚職事件で、贈賄罪で起訴された添田町長、山本文男被告(84)は11日、起訴後初めての定例町議会に臨んだ。本会議前の全員協議会では、改めて町長を辞める意思はないことを表明し、辞職を求める議員からは「常識的な判断をしてほしい」と憤まんの声が漏れた。
この日は3月定例会初日。山本被告は開会直前、数人の職員に守られ、報道陣を避けるようにうつむき加減で登庁した。
山本被告は非公開の全員協議会で「議会、町民に迷惑をかけた」と謝罪した。しかし、議員の進退についての質問には「(議会の辞職勧告決議に)支配されることはない」「いずれ必ず民意が表れると思うが、今はその時期ではない」と重ねて辞職を否定した。さらに「民意をいつ、どうはかるのか」と問われると「(進退は)町民の意思に従う。(民意をどうくみ取るか)考えはあるが、今はまだお話しできない」と述べるにとどまった。
また「県町村会長を辞めた理由は」「他の役職は辞めないのか」とただされた際は「お答えする必要はない」と声を荒らげた。
本会議では、中学校閉校式典の予算案上程に関連して式典への出欠を問われ、山本被告は「出席しないことにしています」とだけ答弁。議員からは「刑事被告人である町長の言葉を生徒がどう受け止めるか心配していた。町長を長く務め功績があれば悪いことをしてもいいのかと(受け止められるのを)心配していた」と厳しい指摘も出た。
閉会後、辞職を求めている議員らは「辞職勧告というボールを投げたつもりだったが、スルー(無視)された感じだ」「正面から答える気がないという印象を受けた」と厳しい表情。ある議員からは「来年1月の町長選を乗り切れば、来年度は町制施行100年。まさかそこまで、とは思わないが……」と山本被告の真意をいぶかる声も聞かれた。【林田雅浩】
〔筑豊版〕
毎日新聞 2010年3月12日 地方版