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きょうの社説 2010年3月13日
◎高峰映画の米国上映 偉人の志伝え次代の懸け橋に
金沢、高岡ゆかりの世界的化学者、高峰譲吉博士を描く映画「さくら、さくら〜サムラ
イ化学者高峰譲吉の生涯〜」が4月に米国ニューヨークとロサンゼルスで上映される。タカジアスターゼの開発やアドレナリンの発見などで国際的に高く評価される一方で、日米親善に大きな功績を残した博士の映画が米国で上映される意義は大きい。探究心と人間愛に満ちた博士の志を米国のより多くの人々に伝えて、北陸、日本との新たな交流につながることを期待したい。ニューヨークでは4月21日から「ジャパン・ソサエティー」(日本協会)で上映され る。ジャパン・ソサエティーは日米交流を目的とした米国の非営利団体で、高峰博士が尽力して米国の財界有力者を集めて発足した。博士は同じように交流拠点として「日本クラブ」も創設するなどして、日米の相互理解と友好促進に奔走した。 また、ワシントンに桜も贈っており、2012年には恒例の「桜祭り」の一環として、 寄贈100周年の記念行事も予定されるなど、研究者の枠を超えて両国の交流に尽くしたスケールの大きい足跡を残している。 ロサンゼルスでは4月に開催される「ジャパン・フィルム・フェスティバル」の招待作 品になっており、こちらには博士の孫の高峰譲吉3世が住んでいる。日本映画への関心が高まっているなかで、ゆかりの地での上映は、博士の功績をあらためて現地の人々に知ってもらう絶好の機会といえる。 昨年、台湾では水利事業に貢献した金沢出身の八田與一(よいち)技師を描いたアニメ 映画「パッテンライ!!」が全土で上映された。それを機に八田技師への関心と共感が一気に広まり、若い世代の交流も深まっている。「さくら、さくら」の上映も、高峰博士の遺志を継いだ次代の懸け橋となる人材が生まれる契機になってほしい。 石川、富山両県でも3月20日からの先行上映に合わせて、高峰博士に関する勉強会が 発足するなど博士への関心が高まっている。多くの苦難を乗り越え、大志を実現させた郷土の偉人から大いに元気をもらいたい。
◎温暖化対策法案 疑問多い「25%減」ありき
閣議決定された地球温暖化対策基本法案は、最初から「25%削減」ありきでまとめら
れた点で、やはり疑問がぬぐえない。目標達成のため、国内排出量取引制度や再生可能エネルギーによる電気の全量買い取り制度、地球温暖化対策税創設などの個別政策も盛り込まれたが、目標値の根拠が不明確なまま、達成へ向けた「手段」だけを先行させるのは無理があるのではないか。数値目標の明記について、鳩山由紀夫首相は「国民に思いを共有してもらうことが何よ り大事」と語ったが、目標だけを既成事実化させるやり方で果たして国民を納得させられるだろうか。将来負担の在り方や削減目標への道筋など、国民を議論に巻き込むデータを幅広く示してもらいたい。 数値目標は「主要国が意欲的な目標に合意した場合などに実施する」との条件付きなが ら、法案は「2020年までに1990年比25%削減」という、鳩山首相が昨年の国連会合で表明した中期目標を法的に位置づける意味を持つ。 企業の排出量に上限を設ける排出量取引制度については、上限方式を基本としつつ、生 産量当たりの排出量の上限設定の方式も「検討する」と併記された。これは産業界にも配慮した措置なのだろうが、この点だけをみても、政府内の議論は生煮えで、各論の意見対立には目をつむり、取りまとめを優先させた拙速さがうかがえる。 法案に明記された政策も、政府が検討中の成長戦略との整合性が求められるのは言うま でもない。温暖化対策税にしても、全体の税体系のなかで、どのように位置づけるのか。環境保全と経済成長を両立させる道筋は見えていない。 昨年12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では、ポスト 京都議定書の採択には至らず、各国の温室効果ガス削減目標を国連に登録することなどを盛り込んだ「コペンハーゲン合意」をまとめただけで終わった。 先進国と新興国の対立を解く決め手は見当たらず、今後の交渉も難航は必至である。そ うしたなかで、法案成立を急ぐ必要がどこまであるのだろうか。
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