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金曜アンテナ

金曜アンテナ(2010/3/12)

北海道五区・小林千代美衆院議員
北教組幹部逮捕は「検察の怨念」か


 民主党の小林千代美衆院議員陣営の政治資金規正法違反容疑で、札幌地検は三月一日、北海道教職員組合(以下、北教組)幹部三人と小林氏側選対の会計責任者を逮捕した。一六〇〇万円の違法な選挙資金提供の疑いがもたれている。
 小林氏の選挙をめぐっては、昨年一〇月に選対委員長代行だった前連合札幌会長の山本広和被告が公選法違反で逮捕された。この家宅捜索段階で、北教組からの資金提供が発覚したという。
 山本被告は、二月一二日に有罪判決を受けたが、「事実誤認がある」として控訴中だ。
 北海道五区は、町村信孝元官房長官のお膝元。民主党は、二〇〇〇年の衆院選から小林氏を立てて挑戦しつづけ、昨年八月の衆院選で初めて町村氏を破った。
 宮城県出身の小林氏は札幌の製パン会社に入社し、労組幹部などを経て、三一歳のときに初めて立候補した。地盤、カバン、看板のない状況でのスタート。浪人も経験している。
 背景には、小林選対の苦しい台所事情があるといわれる。一般にはあまり知られていないが、現状の選挙活動にはかなりの資金がかかり、人材調達も難しい。この事件は、選挙制度の課題点を浮き彫りにしたともいえる。
 当時から小林氏を知る道議は、「貧乏人は立候補するな、との印象を与える報道は、政治家を目指す若者の志をくじく」と危惧する。
また、別の道議は、「道警裏金問題を道議会で取り上げて以来、道内の民主党議員の選挙違反の取締りが厳しくなった」と述べ、「昨年の衆院選より以前、二〇〇五年の選挙から、小林陣営は特に目をつけられていた」とほのめかした。
 小林氏は、障がい者支援、「慰安婦」や朝鮮人強制連行といった日韓戦後責任など、人権問題にも積極的に取り組んできた。道内の市民団体からは、「弱者の声を国政に届けてくれる議員だったのに」と今後を心配する声も聞こえてくる。
 小林氏の進退に関し、民主党北海道の佐野法充幹事長は、「現在係争中であり、刑が確定してから。司法の判断によっては、道義的責任を負わなければならない」と述べた。政治資金規正法違反についても、起訴・不起訴の決定を受けた後に方針は示す意向だ。
 この一連の逮捕騒動は、別の目論見をはらんでいるとの見方もあり、長期戦が予想される。
「検察の怨念」を口にする民主党関係者もいる。「小沢一郎幹事長を起訴にもちこめず、これで立件し、民主党にダメージを与えるのが目的ではないか。『取り調べの可視化』法案や検察の裏金調査も関係している」とみる。
 このところの出来事は、それを裏づけるようにもとれなくもない。一月二三日、小沢幹事長の事情聴取。二月一〇日、「取り調べの可視化」を求める民主党議員連盟が、今国会での法案成立を目指す方針を確認。一七日、原口一博総務相が、検察の会計経理状況を調査するよう政務三役会議で副大臣や政務官に指示したと発表。
 北教組に家宅捜索が入ったのは二月一五日で、その二週間後に幹部らの逮捕となった。
 昨年一二月には、連合前会長の高木剛氏が国家公安委員会委員に任命されている。元道警警部は、「この人選との関連も否定できない」と推測する。北教組は、連合の加盟組織のひとつだ。
 北教組の閉鎖的な体質は以前から指摘されてきたが、今回の事件による一層のイメージダウンは避けられない。現場の組合員へもいまだ説明がなく、新聞やテレビの報道で情報を得ているといわれ、不満が高まっている様子だ。
 また、地元では、今回の逮捕劇を「茶番」と冷めた見方をしている市民も少なくない。「政権が交代しても、社会が大きく変わったわけではない。献金についても、企業と労組がすり替わっただけで、構造自体は同じ」「またか、といった印象を受ける」とため息がもれる。
 北教組側は、「逮捕容疑のような事実は一切ない。不当弾圧にひるむことなくたたかっていく」との声明を出し、幹部逮捕後の取材にはいっさい応じていない。
小倉美耶子・ジャーナリスト

ビルマ・アウンサンスーチー氏
総選挙に向け、解放しない軍政の思惑


 自宅軟禁が続いているビルマ(ミャンマー)の民主化運動指導者アウンサンスーチー氏が、自らの拘束を不当として上告していた件で、ビルマ最高裁は二月二六日、スーチー氏側の訴えを棄却した。スーチー氏は昨年、突然訪れた米国人を自宅に入れたことが国家防御法違反とされ、禁固三年の有罪判決を宣告されていた。
 最高裁の判決後、欧米諸国の政府を中心に棄却を遺憾とする談話が一通り発表されたが、棄却に驚いた声はなかった。そもそもビルマに司法の独立はなく、軍政の目的は、もっともらしい理由をつけてアウンサンスーチー氏の拘束を続けることが明らかだからだ。背景には、軍政が今年、新憲法に基づいた総選挙を実施しようとしていることがある。
 国際社会の関心は総選挙が自由・公正に行なわれるかに集まりがちだが、軍政は選挙を自由・公正に行なおうとは端から考えていない。民主化改革の一環として総選挙を行なうというのはプロパガンダで、実際には軍政、特に事実上の独裁者であるタンシュエ上級大将が身体的・経済的に安全に現政権から身を引くための出口戦略という性質の方が強い。これは、選挙の根拠となる新憲法が軍政により一方的に起案されたことからも明白だ。新憲法では、議会議席の二五%を軍関係者が占めることや、アウンサンスーチー氏や現在政治囚として収容されている民主化活動家が政府に入れないことが定められるなど、様々な規定で軍支配の継続を保障しており、現軍政関係者の訴追免除規定まである。また一方で軍政は、国営・国有企業の売却を進めるなど民営化に向けた動きを活発化させている。
 一九九〇年に自由・公正に行なった総選挙では、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が大勝利を収め、軍政は大敗した。以来二〇年間、軍政は「非合法な政府」であることを理由に、国際社会からの経済制裁を受け続けてきた。また、二〇〇七年九月に起こったデモが、僧侶たちを中心に一〇万人規模まで膨れあがったことからもわかる通り、国内の軍政への不満は非常に大きい。総選挙を自由・公正に行なうことは、軍政にとってリスクが大きすぎるのである。選挙を「無事に」運営し、信頼できる勢力に議席の多数を占めさせることに、軍政は日々力を注いでいる。欧米や国連が、拘束力を持たない声明等で「選挙を自由・公正に行なえ」と言ったところで、軍政には届かない。
 軍政がアウンサンスーチー氏を拘束しておきたい理由は、二つある。第一に、アウンサンスーチー氏が現在もビルマ国民に人気が高く、彼女が自由に政治活動を行なえる状態では、総選挙を軍政にとって有利に運ぶ妨げとなる。第二に軍政にとって「アウンサンスーチー解放」という交渉カードの重要性だ。氏の解放は、経済制裁の解除や欧米政府との関係改善に直接つながっている。昨年八月、米国政府内で経済制裁解除を推進していることで知られるウェッブ米上院議員がビルマを訪問した際には、欧米の要人とはめったに会おうとしないタンシュエ上級大将が自ら応対し、いつもは米国について否定的な論調の国営紙も、訪問を「米国との関係改善に向けた第一歩」と評価した。軍政がどんなに制裁解除とそれに伴う投資増や開発援助等の再開を望んでいるかは、明らかであろう。ここぞというタイミングでアウンサンスーチー氏を解放し、最大限の利益を導くためにも、スーチー氏の拘束を続けておく必要があるのだ。国際社会が「スーチー氏の参加なしでは選挙の信頼性が失われる」といくら言っても効果はない。
 自由・公正であるか否かを問わず、選挙を通じて新政権が生まれてしまえば国際社会もその状態を受け入れるだろうという軍政の判断を国際社会が拒むこと。また、「(スーチー氏が参加せず)選挙の信頼性が欠ける」と軍政にとってどのような悪い結果につながるのかを国際社会が軍政に明確に示さない限り、軍政は行動パターンを変えないだろう。
秋元由紀・ビルマ情報ネットワーク

今国会で改正実現なるか
民法改正を求める400人が結集


 選択的夫婦別姓や婚外子差別の撤廃を盛り込んだ民法改正法案が初めて政府提出法案に盛り込まれ、改正実現の気運が高まるが、反対派の巻き返しも見られる。そんな中、「民法改正を求める!3・3決起集会」(主催・同実行委員会)が三日、東京・憲政記念館で開かれ、全国から約四〇〇人が参加した。
 棚村政行早稲田大学教授が「現在、世界でほとんど日本だけが夫婦同姓を強制しているが、改正案は同姓でも別姓でもどうぞ、という提案。婚外子差別は、下級審で憲法一四条違反の判決もでている。出生による差別はいけない。それぞれの生き方を尊重することは多くの人の幸福につながる」などと改正案について解説。一九九六年の法制審答申時に内閣法制局長官だった大森政輔氏は「氏を同じくすることが婚姻の必須の事柄と思わない。与党の中も意見がわれているので、党議拘束をはずした採決で早期実現を」などと挨拶した。
 一〇日に日弁連会長選挙の再投票を控えた両候補も出席。宇都宮健児氏は「日弁連の人権活動のなかでも一番大きな問題として取り組む。憲法の理念に沿った改正だと思う」、山本剛嗣氏は「男女差別という視点だけでなく女性一人ひとりの能力を発揮できる社会にするための改正で、それは社会の発展につながる」などと述べた。
 与党からは小宮山洋子議員(民主)が「議員になった目的の一つが民法改正。法案の優先順位をあげるために皆様のお力を」、近藤正道議員(社民)が「人権大国として胸を張っていくためにも今国会で改正を」と意気込みを見せ、野党側も浜四津敏子議員(公明)が「多様な生き方ができる社会が本当に豊かな社会。法務大臣を全力で後押しする」、仁比聡平議員(共産)が「多くの場合、女性の側に精神的苦痛と不利益がある。これが法律婚を躊躇する原因になっている」などと賛同の意を表明。
 また、弁護士の久保利英明氏が「自己決定権がないこの国は民主国家ではない。別姓がだめなら、仮に亀井静香という人がいて、荒川静香という人と結婚したらどうするんですか」、評論家の樋口恵子氏が「企業の吸収合併を見ても太陽神戸三井だの三菱東京UFJだの、みんな名前を残そうとする。いかに女性は男性の家に吸収合併されてきたことか」などとユーモアを交えて話すと会場は沸いた。泉徳治元最高裁判事や野中広務元議員、古賀伸明連合会長など、各界からの応援メッセージも読み上げられ、改正実現のアピールが採択されて閉会。集会後、金澄道子・日弁連両性の平等に関する委員会委員長は「次期国会に見送りという報道もあって気落ちしていたが、頑張らねばと元気が出た。集会は議員に働きかけるきっかけにもなる」と活動の意欲を見せた。
 しかし、閣僚の亀井静香氏が選択的夫婦別姓に強硬に反対している現況では閣議決定ができない。小宮山議員は「長男長女のカップルでお互いに家族の名前を残せないために結婚できない人もいる、と亀井議員に言っても、いまの若い人はそんなこと気にしないよ、と言われる。では実例を連れてきます、と言ったのですが」と理解を求める苦労をにじませる。国民新党だけでなく、民主党議員の中にも反対派は相当数おり、採決の党議拘束をはずせという声もある。これには「与党で政府提出した法案に反対するなどとんでもない。改正案を提出してきた党の歴史を勉強してから言え、と言いたい」と憤る推進派の議員もいる。また「賛成反対双方の意見を聞いて」の勉強会も行なわれ、坂本洋子・民法改正情報ネットワーク共同代表は「一九九七年から改正案を提出してきた党なのに、今頃、何を勉強するのか」と苦笑しつつも説明に赴いた。ただ、「もし実現しなければ公約違反。今後の対応を考える」と視線は厳しい。
 政策集で民法改正を謳う民主党の政権で改正しなければ、確かに公約違反だ。与野党合意の法案提出期限が一二日に迫り、千葉景子法務大臣は期限にこだわらず提出をめざす意志を表明したものの、厳しい情勢には変わりない。高まった期待ゆえに実現できなければ失望も大きい。今、民主党に実現力があるか否かが試されている。
宮本有紀・編集部


創価学会幹部と会談
小沢幹事長の思惑


 二月二六日、都内で小沢一郎民主党幹事長と秋谷栄之助創価学会最高指導会議議長が会談した。
 それが明らかになったのが三月一日。当然各マスコミは一斉に公明党の議員や秘書に問い合わせたが、奇妙なことに、誰ひとりそれを把握していなかったのである。
 蚊帳の外に置かれたのは創価学会本部も同じだ。
 確かに小沢氏には創価学会とのパイプがある。しかしもっぱら関西を取り仕切る副理事長の西口良三氏を通じてであった。秋谷氏は新進党時代に小沢氏と懇意だったが、二〇〇六年にいきなり会長職を辞し、以来表舞台から姿を消している。なぜ今「秋谷氏」なのか。
 これについて創価学会関係者は以下のように訝しむ。
「秋谷氏は小沢氏に利用された。この機に秋谷氏が小沢氏に会うのは創価学会にとって得ではない」
 すなわち党内で辞任論が出ている小沢氏が、秋谷氏と会ったことで求心力を回復する魂胆だというのだ。「その証拠に、就任時の安倍晋三首相が信濃町に行ったことを創価学会はリークしたが、今回は創価学会が否定。どちらからのリークか明らかだ」(永田町関係者)
 三月三日の民主党幹事長会見で、「秋谷氏と会ったか」と記者に尋ねられた小沢氏は「会っていない」とそっけなく否定した。だがその言葉を信じる者はいない。
 同日に発表された参院選一次公認で、民主党が埼玉選挙区に二名の公認候補を立てることも微妙な関係を窺わせる。ここには公明党公認候補・西田実仁参院議員が立候補予定。一度は比例区への転出が内定したが、「天の声」(公明党関係者)によって残留が決まった。
 西田氏が落選すれば両者の間にしこりが残る。それでも創価学会の「力」を借りようとする小沢氏は、すでに死に体といえよう。
天城慶・ジャーナリスト

貴重な「やんばるの森」高江
基地建設強行へ


 沖縄防衛局はこのほど、世界的に貴重な動植物の宝庫・沖縄県東村の森林地帯「やんばるの森」にある高江地区に、今年七月にも米軍のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設を強行する意図を明らかにした。このため地元では、自公前政権と同様に、自然保護より米軍の意向を優先させる民主党政権に怒りが高まっている。
 すでに沖縄防衛局は二月一八日から、ヘリパッド建設用地への侵入路に仮設フェンスを設置する工事に着手。だが地元住民らが「騒音問題やヘリコプターに代わり配備予定のオスプレーの安全性などを、局側はまともに話し合おうともしない。その一方で、工事を強行するのは許せない」と現場の作業員への抗議行動を続けたため、工事は一時的にストップしていた。
 沖縄防衛局は三月二日になって、「ノグチゲラなど稀少鳥類の繁殖期に入った」との理由で工事を三月から六月までの期間は中断すると発表。だが七月からの本格工事強行を表明したことで、新たな住民との衝突が予想される。
 このヘリパッドは米軍再編に伴い、沖縄県の北部訓練基地の北半分を返還する代わりに、残り半分の地域に新たに六基建設するというもの。民主党政権は昨年の総選挙前の「米軍再編見直し」という公約を踏みにじり、環境団体や地元の「貴重な“やんばるの森”の破壊につながる」という批判も無視して、「(沖縄防衛局に)粛々とやってほしい」(北澤防衛大臣)などと居直りの姿勢だ。
成澤宗男・編集部

高校授業料無償化
朝鮮高校「除外」に
生徒ら抗議の署名活動


 この四月から実施予定の高校授業料の「実質無償化」を巡って、朝鮮高校だけを除外しようとの動きが政府内部から出ている。
「高等学校、専修学校、インターナショナル・スクール、中華学校等の生徒と異なる不利益な取扱いを受けることは、中等教育や民族教育を受ける権利にかかわる法の下の平等に反するおそれが高く、さらには、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約が禁止する差別にあたるものであって、この差別を正当化する根拠はない」と日弁連も抗議声明を発するなど、中井洽拉致問題担当相らの露骨な差別に、いくつもの人権団体より非難の声が上がっている。
 そんな中、三月二日、卒業を間近に控えた東京朝鮮中高級学校の高校生たちが、学校のあるJR十条駅前などで、街頭署名を行なった。「胸が痛かったです。高校生として同じ扱いを受けられないなんて」と悲しみながらも、「後輩には、もっといい環境で勉強してほしいから」と道行く人に頭を下げる生徒。「これまでも高校卒業認定を受けたりと差別を感じることもあって、ああ、またかと思いました」と、大学への進学が決まっている生徒。「少しでも後輩の助けになればいいなと思いまして」と大きな体で「署名をお願いします」と声を上げる、ラグビーの東京都大会準優勝メンバー。
 彼ら彼女らの声を政府関係者は聞くべきだ。「もっと朝鮮高校のことを知ってほしい。大歓迎します」と笑顔を見せるのだから。
豊田直巳・フォトジャーナリスト

水俣病事件が問い続けるもの
プレ水俣・明治大学展


 水俣病事件が私たちに問いかけ続けるものは何か――。「最終解決」という言葉が飛び交う昨今、「水俣病事件とは何だったのか」を考える「水俣・明治大学展」が今年九月から始まる。主催は明治大学、共催はNPO法人・水俣フォーラム(代表・栗原彬立命館大学教授)。
 そのプレ・イベントとして先月下旬に行なわれた若宮啓文氏(『朝日新聞』コラムニスト)の講演では「部落差別問題を取材した経験から、映画『水俣病――その二〇年』で土本典昭監督が患者さん達を撮るのにどんなに苦心したか想像できた」と話した。水俣フォーラム事務局長の実川悠太氏は「水俣病事件には、人間や社会を考える豊富な材料が詰まっている。知らない、学ばないのはもったいない」と参加を呼びかけている。
 次回の「水俣・明治大学展」プレ・スタディーズは三月一八日、ノンフィクション作家の柳田邦男氏を招いて行なわれる予定。詳細は実行委員会(電話番号 03・5285・1106)
野中大樹・編集部

遺伝子組み換えジャガイモ
欧州委員会が栽培を認可


 欧州委員会は二日、売上高九兆円(〇七年度)を超える世界最大のドイツ総合化学グループBASFの遺伝子組み換え(GM)ジャガイモ・アムフローラの栽培認可を決定した。アムフローラのデンプンは飼料や工業用として製紙などに使用されるもので、食用ではない。欧州食品安全機関(EFSA)は健康に問題がないと判断し、最終的には欧州委員会が支持。アムフローラの栽培は各国が決めるという。が、同機関の審査は安易で企業寄りだと批判が噴出した。
 環境保護団体は、アムフローラの塊茎には抗生剤が効かなくなる耐性遺伝子を含むと指摘。また、GMジャガイモ以外の植物への遺伝子汚染を懸念している。フランス経済紙『ラ・トリュビューン』は、承認しないとBASFはドイツから出て行くとメルケル首相やバローゾ欧州委員長を脅かしたとする欧州議員の話を紹介。同委員長はGM反対派のギリシャのディマス委員から推進派のマルタのダリ委員に執行権を移譲させて一カ月内で決定させたとされる。
 これまでドイツ・フランスなど欧州九カ国でGM作物の栽培が禁止されてきたが、今回はドイツが認可を推進した。反対を鮮明にしたのはイタリア・オーストリア・ベルギーのみであった。他の国は躊躇している。
 バイオテクノロジー最大手モンサントのGMトウモロコシ(MON810)が、欧州でこれまで唯一認可されたGM作物だが二年前の認可更新期からは認可が出てない。
飛田正夫・在仏ジャーナリスト


コラム



水俣病患者を支援して――
若槻菊枝さんを偲ぶ



 公式確認から半世紀を経ても、未認定患者らの補償救済など、未だ完全解決に至らない水俣病。そんな中、長年ひときわユニークな支援を行なっていたのが、今も新宿にある「ノアノア」の経営者であった若槻菊枝さんだった。歌えるスペースもある広くて気楽な地下のバーには著名人や高給取りも来る。そういう客たちに会計の時、水俣病患者へのカンパを、「あなたはいくらね、いいでしょ」と、相手を見ながら集め続けたのである。それを嫌って客が減ったとは聞かなかったから、若槻さんの笑顔の賜物であったろう。若槻さんの支援はそれのみにとどまらず、自宅を患者や石牟礼道子さんらの宿泊や会議に提供。座り込み長期化後は都内に患者宿泊の一軒家を借りる名義人になるなど、物心両面で支援の柱となった。晩年は玄人はだしの絵画に余生を注ぎ、3月2日、94歳で大往生を遂げた。90歳を超えてから新潟で開かれた個展には元気な姿を見せ、新潟水俣病患者・民謡歌手で同い年の渡辺参治さんと卒寿対面をして話題になった。父上が戦前の労農運動の闘士で、自身も新潟生まれなので、赤色が鮮烈な画風の油彩ともども里帰りを果たしたことになる。葬儀の祭壇にも、愛用の赤い帽子が飾られた。
久保田好生/東京・水俣病を告発する会 写真/旗野秀人


ジェンダー



【政府】千葉法務大臣 民法改正の説得に意欲を表明 3月5日
 千葉景子法務大臣は閣議後の記者会見で5日、
民法改正案の提出に意欲を示した。今国会での法案提出については、12日までの期限を与野党合意で設けていることに加え、国民新党が民法改正に反対を決定したことなどから、記者の質問が民法改正に集中した。
 国民新党の亀井静香代表が反対を表明していることについて、千葉大臣は「諦めるものではないので、一生懸命、閣内の取りまとめに努力している状況に変わりはない」と答えた。法案提出期限が迫っていることについては「提出予定法案にきちっと掲げているところで、多少の時間のずれはあっても、提案の方向でいく努力をしている」と、提出期限にこだわらない姿勢を明らかにした。党議拘束を外すことについては「政府提案に党議拘束を外すことは原則あり得ない。従来からそのような意見があることは事実だが、政府が責任を持って提出ということであれば、党議拘束を外すということには原則ならない」と答えた。


【国会】衆議院法務委員会で稲田議員が夫婦別姓について質問 3月9日 
 衆議院法務委員会で自民党の稲田朋美議員が9日、夫婦別姓に反対の立場で質問を行なった。 
 稲田議員は、「現行民法の法律婚をする夫婦に同姓を義務付けていることは人権侵害にあたるのか」と質問。千葉景子法務大臣が福島みずほ男女共同参画担当大臣と1993年に出版した『夫婦別姓――家族をここからかえる』を問題にし、「法律婚主義や戸籍制度に反対ではないのか」と質した。千葉大臣はいろいろな考えがあるとした上で、「法律婚や戸籍制度を否定するものではない」と答えた。また、稲田議員は、千葉大臣が野党時代に議員立法案を提出し続けてきたことをあげ「議員立法案を捨てたのか」と大臣の見解を求めた。千葉大臣は「捨てたとか捨てないとかではなく、法務省の案を尊重する」と応えた。


【国際】IPU調査で女性国会議員が過去最高に 日本は97位 3月4日
 列国議会同盟(IPU)は3月8日の国際女性デーを前に、今年1月時点で、世界187カ国(下院)の全議席に占める女性の割合が18.8%と、過去最高を記録したとする年次報告を4日、発表した。11.3%を占めた1995年より6割増加している。
 一院制で比較するため下院(日本の場合は衆議院)で集計した国別順位の1位はルワンダの56.3%、2位がスウェーデンの46.4%、3位が南アフリカの44.5%となった。日本は11.3%で97位と前年の104位から順位を上げたものの、主要先進国の中では最低の水準となっている。
 ちなみに、中国は21.3%で55位、北朝鮮は15.6%で77位、韓国は14.7%で81位といずれも日本より上位となっている。
 IPUは、当面の目標を30%と掲げ、クオータ制導入が「女性進出増加のための唯一の対策」としている。


裁判予定



3月17日(水)
那珂川アユ裁判
11:00~ 水戸地裁 3階法廷
事件内容:霞ヶ浦導水事業で漁業権が侵害されるとして、茨城・栃木両県の7漁協が起こした那珂川取水口工事差止め請求訴訟
期日内容:第4回口頭弁論


3月18日(木)
国鉄闘争勝利! 対鉄道運輸機構訴訟
15:00~ 東京高裁 101号法廷 ※傍聴券配布
事件内容:国鉄民営化の際のJR不採用とされた国労闘争団員と遺族ら35名らが、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し慰謝料や謝罪文などを求めた訴訟の控訴審
期日内容:控訴人・被控訴人による意見陳述
靖国合祀取消(ノー! ハプサ)訴訟
11:00~ 東京地裁 103号法廷 ※裁判後、報告集会開催予定
事件内容:靖国神社に親族が合祀されていると知った韓国人の軍人軍属の遺族ら、また自分自身が合祀されていると知った原告らが、国と靖国神社を相手に、合祀の取消し(国に対しては、遺族らや本人に関する戦死情報提供の撤回、靖国神社に対しては、霊璽簿等からの氏名の抹消)や謝罪、損害賠償などを求めた訴訟
期日内容:口頭弁論
布留川生保セールス頸腕裁判
13:40~ 東京地裁 705号法廷 ※裁判後、報告集会開催予定
事件内容:日本生命での長時間セールス業務による頸肩腕障害と診断された原告が、労災申請をしたが不支給処分を受けた。その処分の取消しを求めた訴訟
期日内容:判決


注目情報



美ら海・沖縄に基地はいらない!意見広告キャンペーン



今年1月24日の名護市長選挙では、辺野古新基地建設反対の稲嶺進市長が誕生し、2月24日には沖縄県議会が「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」を全会一致で可決したにもかかわらず、いまだに、辺野古の海への新基地建設計画が消えず、また、陸上に滑走路を建設するキャンプ・シュワブ統合案まで浮上した。そんな状況への危機感を共有した日米の市民が緊急結集し、普天間基地の閉鎖・撤去、沖縄県内に代替基地建設反対の声を米国民に届けるために現在、米大手紙に全面意見広告掲載を目指し、カンパ(個人1口1000円~、団体1口3000円~)を募集している。
カンパ振込先:ゆうちょ銀行00840-0-198250
ゆうちょ銀行(089)-当座-0198250(他銀行からの場合)
問合せ:JUCOネットワーク事務局 URL http://jucon.exblog.jp/ 電話番号 052-459-1753(三石)メールアドレス jelf@green-justice.com

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