創造性を「開花」させる上司、「枯渇」させる上司
あなたのチームの「眠れる創造性」を引き出す「側面支援」の方法とは
新しいアイデアが生まれ、考案され、価値を付加するイノベーションへと育てられる労働環境を築くために、リーダーには何ができるのか。
文=ジュディス・A・ロス 翻訳・ディプロマット
(3)チームの仕事を側面から支援する
チームのメンバーの前向きな感情を増進させ、彼らの創造性を高めるために、できるかぎりの方法で彼らを支援し、彼らの仕事をやりやすくしよう。
ハーバードビジネススクール教授で創造性の専門家であるテレーザ・アマビーレは、創造的な仕事に携わっている専門職の人々の日誌を基に、リーダーの行動と部下のパフォーマンスの関係を調べたことがある。
一方をAチーム、もう一方をBチームと呼ぶとすると、Aチームのリーダーは、かなりの時間をかけて、チームの仕事に役立つ外部情報を収集した。さらに、チームのメンバーが他の部署の同僚に情報や資源を要請したとき、それがより得られやすくなるようにという配慮から、チームのプロジェクトを他の部署に宣伝して回った。それに対し、Bチームのリーダーはこうしたことを何もしなかった。
Aチームのリーダーは、チームに創造的なアイデア生成のために必要な内容と文脈を与え、プロジェクトの複雑な課題に取り組むチームの意欲を高めたのである。その結果、チームがきわめて高レベルの創造的成果を挙げた。
Bチームのリーダーは必要な情報をチームに流すことも、チームの仕事を外部に宣伝することもせず、チームのパフォーマンスを下降スパイラルに追いやる一因となった。
(4)効果的なアイデア生成プロセスと
アイデア評価プロセスを構築する
アイデアを生み出し、評価することは、イノベーション・プロセスの決定的に重要な要素である。ニューヨーク州立大学バッファロー校の国際創造性研究センター所長で、『Creative Leadership: Skills That Drive Change』(2006)の共著者、ジェラルド・プッチョ教授は、リーダーとそのチームがアイデアを生成、評価するのに役立つ次のような枠組みを提案する。
・アイデアの生成をアイデアの評価と分離しよう
「2つのプロセスが混同されると、お粗末な決定がなされる。会議では往々にしてアイデアの発表と評価が同時に行われる。その結果、優れた案を十分理解しないうちに早まって捨ててしまうことになる」と、プッチョは言う。
・量を目指そう
アイデア生成の段階では量を目指せと、プッチョは言う。「3つのメニューから選ぶより10の中から選ぶほうが格段に望ましい」。なぜなら、選択メニューにアイデアがたくさん載っていればいるほど、画期的なアイデアを見つけられる公算が高いからだ。
・アイデアを他の文脈と関連づけよう
他のアイデアや意見に相乗りすることには、新しい解決策を得る可能性が高まる、柔軟な思考を促す、などの利点がある。
アイデアの評価と選定には、アイデア生成にかけた時間と少なくとも同程度の時間を投じよう。最も好都合な案ではなく最も優れた案を選び、発展させるために、直感と批判的分析をバランスよく組み合わせよう。評価モードに移行してからのステップとして、プッチョは次の2つを勧める。
・肯定的な判定を用いよう
アイデアを評価するときには、長所と短所の両方を詳しく検討しよう。だが、弱点や欠点を厳しく探してはいけない。欠点はあるものの、それを克服したら理想的なものになるアイデアを見落とすおそれがあるからだ。
・目的と照らし合わせよう
アイデアを査定するにあたっては、次のような点を検討しよう。
「われわれが顧客のニーズをより効果的に満たすのにどの程度役立つか」
「予算内で実行できるか」
「目標時間内で実行できるか」
これらを問いかけて答えを出すことは「アイデアを練り上げ、発展を導く方法でもある。すばらしいアイデアをわずかの修正で基準に合うものにできることもある」と、プッチョは言う。
ジュディス・A・ロス
武田薬品、富士通、資生堂……。経営者の知られざる素顔を描く。
絶好調企業は必ず効果的な「朝礼」をしている!レポートはこちらから