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更新:2月25日 11:32ビジネス:最新ニュース

潮目が変わってきた? 日本のIT業界に人手不足感

 どうやら潮目が変わってきたようである。インドや中国の景気回復の話ではない。日本のIT業界の潮目である。今年になって、何故か忙しくなってきた。1月も忙しかったが、2月はさらに忙しい。(竹田孝治のインドIT見聞録)

 商談だけで終わることも多いとは思うが、筆者の本業であるインド研修について問い合わせが次々と来ている。技術者募集の話もあちこちからいただく。それも携帯電話、金融、保険などさまざまな業種からだ。中国でのオフショア開発の話も来た。

 もっとも、技術者の単価はますます下がっている。「こんな金額で受ける人なんかいないよ」。誰に頼んでもそう言われる。たしかにそうだ、こんなに安い金額で仕事を引き受けるはずがない。2年前ならそれで終わっていた。しかし今はそんなことも言っていられない。仕事があるだけましで、無理だと言いつつ技術者探しを手伝ってくれる人がいる。

 仕事の中身は従来とは違う。「JAVAのプログラマーを何人でも」などといった案件は聞こえてこない。大型開発物件の上流工程の要員と新技術だけである。だから簡単に技術者を集めることはできない。簡単なら、筆者のところにまで話は来ないだろう。

 インド、中国に続き、日本も景気がよくなってきた? 決してそんなことはないだろう。2009年10〜12月期の国内総生産(GDP)が市場予測を上回ったなどというニュースも聞くが、失業率は高止まりである。それでも技術者の募集の話が増えてきた。見方によっては、世間の景気の悪さ以上にIT業界の景気はひどかったということか。何はともあれ喜ばしいことである。

■上海や大連のオフショア開発は今後も厳しい

 ただ、日本のIT業界が以前のような好業種に戻るとは考えにくい。2年前までは、プログラムを組むことさえできれば「技術者」とみなされ、中国から大量のプログラマーが日本に渡ってきて、信じられないような高い給料をもらっていた。そんな時代に戻るとは思えない。

 やはり新しい技術と上流工程の仕事が残るだけであろう。コストを考えると、ますます中国でのオフショア開発の重要度が高まる。その意味では、下請け構造に浸り、大量の社員を抱えた日本の独立系ソフトハウスはますます苦しくなる。

 それは中国でも同じだ。上海や大連の日本向けオフショア開発はこれからも厳しい。特に上海の人件費の高さは異常である。プログラマーの給与が1万元を超えるような街で安い日本向けの開発は無理である。上海や大連には日本向け窓口としての機能だけが残り、実際の開発は内陸部に移っていくしかないであろう。

 データ入力などの業務委託(BPO)も一気に増えてきた。日本のコストを考えるとBPOもオフショア開発と同様、拡大することは目に見えている。それでも沿海部では生き残りが難しくなっていくだろう。今までよりレベルが一段高い設計センターとして確立できるか否かにかかってくるはずだ。

 インドIT企業はどうか。彼らからすると日本向けの業務など高が知れている。逆に欧米向けは金融関係を中心に完全に底を脱した。ますます欧米向けと日本向けの格差が広がっていく。日本側から見るとコスト削減のメリットはすでにない。日本向けでは、彼らが得意とする大規模プロジェクトのマネジメント力と新しい技術を習得した大量の技術者を持ち、日本の品質基準を受け入れることができる企業だけが残るであろう。

爆弾テロがあったインド西部プネの店舗=2月13日〔ロイター〕

■平和な街プネで爆弾テロ

 さて、この2週間の大きな話題である。インドでは何といってもテロである。

 インド西部マハラシュトラ州の都市プネで13日夜、爆弾テロが発生した。場所は中心部のレストラン「ジャーマン・ベーカリ」で、外国人も含め9人が死亡した。インドのメディアは、2008年11月のムンバイ同時テロ以来の大規模なテロ事件と報じている。犯行声明がないので、イスラム過激派なのかヒンズー過激派の犯行なのかよくわからないが、どちらにしろムンバイ同時テロで中断されていたインド、パキスタン両国の外務次官級協議に対する妨害であろう。

 問題はプネで起きたということである。筆者も2回ほど行ったことがあるが、平和な街である。ムンバイから200キロ足らずだが、喧騒も何もない。驚いたのは、もともとの唯一の国産車である「アンバサダー」がほとんど走っていないことである。この街にモータリゼーションの波が来たのは、すでにスズキがシェアを奪った後なのだろう。だから古いアンバサダーなど買う人がいなかったのだ。

 プネは日本人の非常に多い街である。インドにおける日本語教育の中心地であり、また、スーパーコンピューター開発などインド科学技術の中心地の1つでもある。こんなところでテロが起きるとは、インドには安全な街が存在しないと証明したようなものである。

 テロの規模ではさらに大きい事件が起きた。今度はインド東部、西ベンガル州である。15日、武装組織インド共産党毛沢東主義派の武装グループ約100人が警察を襲った。少なくとも警察官20人が死亡した。毛派によるテロ事件は昨年から増えているが、その中でも最大級の事件である。インド経済が発展すればするほど、発展に取り残されるどころか逆に経済成長により犠牲を強いられる貧困層が存在する。彼らの支持を集めた毛派によるテロはますます増えることが予想される。

■梅は満開 日本のIT業界は二分咲き?

 中国の話題はなんといっても春節(旧正月)である。例年のことであるが、この時期、会社はすべて休み、仕事関係の連絡がまったくつかない。弊社の中国人社員も中国の田舎に帰ったが、新しい仕事で技術者を集めなければならないのに、連絡がつかなくて困ったものである。とはいっても、筆者の子供時代には日本でも旧正月を祝っていた。最近は中国の正月としか認識されていないが、もともとは日本も含めた東アジアの正月である。愚痴を言っても仕方がない。

 この時期の行事の主役は花火と爆竹であろう。それこそ「新春」を花火で祝う。大連でも13日の大晦日の夜から市内全域で夜を徹して花火が打ち上げられた。大連の友人が花火の写真を送ってきてくれたが、360度、見渡す限り花火である。

 もっともこの春節の1週間、中国全土で7480件の火災が発生し、35人が死亡したとのことである。インドのお祭り「ディワリ」の花火も同じであるが、もう少し何とかならないものか。

 さて、中国も新春を迎えたが、日本も春である。ここ数日間、この間の寒さが嘘のような陽気である。日曜日から京都に行ってきた。少し時間があったので、2年ぶりに北野天満宮に行ってきた。もちろん梅を見るためだ。桜はまだまだだが、梅は満開である。日本のIT業界はまだ二分咲きといったところか。

(今回も日本語教育をテーマにする予定でしたが、次回とさせていただきました)

[2010年2月25日]

-筆者紹介-

竹田 孝治(たけだ こうじ)

エターナル・テクノロジーズ社長

略歴

 1971年岡山大学中退。74年事務計算センター(現日本システムウエア、NSW)入社。95年取締役システム本部長。96年からソフトウェア開発事業の一環としてインドオフショア開発と自社社員のインドでのIT研修を開始。04年NSWを退任し、日本人技術者向けIT研修サービスのエターナル・テクノロジーズ社(http://www.eternal-t.com/)を設立、社長に就任。06年9月インド子会社ETERNAL TECHNOLOGIES INDIAを設立。

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