【ワシントン斉藤信宏】オバマ米大統領は11日、今後5年間で米国の輸出を倍増させる目標を実現するための「国家輸出構想」の概要を発表した。1月末の一般教書演説の中に盛り込んだ計画の具体策で、政府全体で民間企業の輸出拡大を後押しする。オバマ大統領は「輸出倍増で200万人の新規雇用を生み出せる」と強調。米国企業の競争力強化に向けた施策を推進するほか、貿易相手国に対し貿易協定の順守を求めていく方針。今後、中国や日本など輸出超過国への市場開放圧力などが強まりそうだ。
構想は、国務、財務、商務長官らで構成する「輸出促進閣僚会議」の創設や、中小企業への融資拡充などが主な柱。米輸出入銀行による年間20億ドルの中小企業支援や、民間企業のトップで構成する「大統領輸出評議会」を再開することも盛り込まれた。軍事関連技術を含む輸出規制の緩和策も検討する方針で、官民一体となって米国製品の売り込みを図りたい考えだ。
オバマ大統領は「米国はモノとサービスの輸出総額では世界一だが、その地位に甘んじてはいけない」と、さらなる競争力強化の必要性を強調。中国に対しては「人民元の相場が市場の実勢を反映したものになれば、世界経済の不均衡は是正に向かうだろう」と述べ、人民元切り上げを求めた。
大統領は昨年1月の就任以降、一貫して「過剰消費に偏った米国経済の構造を変えていく必要がある」と訴えてきた。その一方で、中国や日本、ドイツなどの輸出超過国には内需拡大による不均衡是正に向けた協調行動を求めていた。
毎日新聞 2010年3月12日 10時54分