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新型インフル 治療薬充実
新しいインフルエンザ治療薬が続々と登場している。発症直後から重症化しやすい新型インフルエンザの流行を受け、製薬各社が開発を急いでいるからだ。服用の方法が異なるなど治療選択の幅が広がり、医療現場からは歓迎する声が上がっている。(高田真之)
点滴タイプも登場 選択の幅広がる
 今年1月に、塩野義製薬が発売したインフルエンザ治療薬「ラピアクタ」。「既存の薬を飲めない患者にとって朗報」と川崎市の開業医、広津伸夫さんは期待する。カプセルのタミフル、口から吸入するリレンザなど、これまでの治療薬と異なり、初めての点滴注射。毎日服用する必要がなく、15分ほどの点滴1回で済むのが特徴だ。広津さんは「
もう一つ承認が待たれるのが、今年2月に第一三共が申請した初の国産治療薬「ラニナミビル」。専用の吸引器を使う粉末型だが、ラピアクタ同様、1回の服用で済む。
このほか、富士フイルム子会社の富山化学は、開発中の新薬「ファビピラビル」の年内申請を目指している。
 こうした治療薬が次々に登場するのは、1968年の「香港かぜ」以来の新型インフルエンザが昨年から流行し、対策の一環として、治療薬がスピード承認されているからだ。米ベンチャー企業が開発したラピアクタの場合、米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可に続き、厚生労働省もわずか3か月の審査で承認した。同省は、「流行に間に合わせるため、できるだけ早く手続きを進めた」と話す。
ウイルスへの作用 様々
治療薬はどのような作用で効くのか。
タミフルをはじめ、ラピアクタ、ラニナミビルはインフルエンザウイルスの表面にあるノイラミニダーゼ(NA)というトゲ型のたんぱく質の働きを阻害する。細胞に侵入し、遺伝子を複製したウイルスは、細胞の膜を自らの部品として取り込んで、外に飛び出す。細胞から離れる際にハサミのような働きをするのがNA。NAが阻害されることでウイルスが増えず、重症化が抑えられる仕組みだ。
同じNA阻害剤なのに、服用方法が経口、吸入、点滴と分かれるのはなぜか。第一三共研究開発本部の山下誠さんは、「薬の構造や水への溶けやすさなど性質が異なるため」と説明する。
他の薬との差別化戦略もある。第一三共は「(ウイルスの感染しやすい)のどに直接届きやすい吸入型を選んだ」と語り、塩野義は「経口ではうまく吸収できなかったので、点滴による静脈注射にたどり着いた」と話す。
これらの薬と効く仕組みが異なるのが、ファビピラビルだ。細胞内で、ウイルス遺伝子(RNA)の複製にかかわる酵素の働きを阻害する。
東京大学の河岡義裕教授によると、強い病原性を備えた鳥インフルエンザのタミフル耐性ウイルスでも効果があるという。新型インフルエンザでも、すでに耐性ウイルスが出現しており、早期承認が待たれるところだ。
1998年に初めてインフルエンザ治療薬として承認されたシンメトレルはウイルス複製のため、遺伝子放出にかかわる酵素(M2)の働きを抑える。現在、耐性ウイルスが出現し、国内でほとんど使われていない。
新型インフルエンザは北半球の各国でも下火になりつつある。米疾病対策センター(CDC)によると、米国の推計死者数は1月16日時点で8330人~1万7160人。その一方、日本は3月4日現在、197人。
日本で被害が少ないのは、〈1〉学校の休校がうまくいった〈2〉医療環境が良い――などが挙げられるが、けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は「薬の早期投与がうまくいっている成果」と語る。
(2010年3月11日 読売新聞)
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