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大相撲異文化考:外国出身好角家に聞く/2 ジェフ・バーグランド氏

 ◇伝統守りつつ扉開いて--ジェフ・バーグランド氏(60)=京都外大教授

 まずは今回の朝青龍引退騒動に至った流れをさかのぼりたい。外国人初の優勝力士は72年名古屋場所の高見山。当時、外国人が国技の伝統と格式を守れるのかと議論されたが、けいこを休まない努力が認められ、のちに初の外国人親方となった。外国からの最初の波、変革の始まりだった。あの時代、大相撲が進む道は二つあった。「国技」として日本の中で限定するのか、柔道や空手と同様に国際的スポーツになるのか。その間の道を進んできたことによって、無理が生じてきたとも言える。

 2度目の波は、小錦、曙の登場。小錦は2場所連続優勝の内規を厳格に適用されて綱取りを逃し、今度は曙が横綱になると品格の問題が問われた。ともに個人でなく、「外国人だから」という視点が生み出した問題だった。私の専門である異文化コミュニケーションでは、いいことができた場合は個人、悪いことがあった時はグループとして評価、区別される。朝青龍の場合も、問題の多くが個人ではなく、外国人というグループとして日本人に見られてきたと思う。

 来日して40年の私でも、外国人という意識を忘れたことはない。だが、言葉も外見も日本人に溶け込んだ朝青龍は、その意識を忘れてしまった。彼が外国人力士の代表ということを認識していたら、状況は変わっていたかもしれない。これは長年日本に住み続けている外国人が必ず抱える問題でもある。日本社会から「溶け込め」と言われながら、深入りし過ぎると「外国人なのに」とはねつけられる。

 ただ、私のように日本に長年住んでいると、日本の「あいまいさ」が心地よくもある。古い体質は決して悪いものではない。大切なのは調和。大相撲独自の道に新しい風を入れることで、多くの人の見方を変えるチャンスだと思う。物事を考える枠を超えることは、実は豊かさ。だからこそ、狭い枠の中にとどまらず情報を受信し続けていく姿勢が大切だ。その点で貴乃花親方の改革に期待したい。かつて小錦、曙ら外国人力士が台頭した時、救世主として現れたのが貴乃花。伝統を守りつつも、開くべき扉は開く。はざまを歩むのは簡単ではないが、一相撲ファンとして期待している。【聞き手・和田崇】=つづく

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 ■人物略歴

 米国サウスダコタ州出身。69年に来日後、巧みな関西弁を駆使し、タレントとして人気を博す。現在は、京都外国語大外国語学部教授。著書は「高見山物語(邦題)」など多数。

毎日新聞 2010年3月11日 東京朝刊

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