やはりこの男の辞書に「反省」の2文字はないのか。この日、北京からウランバートル入りした元朝青龍。引退後初めてモンゴルに帰った元横綱は、黒の民族衣装にまげを結った正装で空港に姿を現した。到着直後の歓迎式では各界のVIPクラスに囲まれながら、子供たちからの花束を笑顔で受け取った。
約100人が詰めかけた市内での記者会見では日本語の通訳はなし。いきなり日本の記者が質問しようとすると、「失礼するけど、きょうはモンゴル(語での会見)で」と抑え、日本の報道陣の質問は一切受け付けなかった。終始モンゴル語での応答に気も大きくなったのか、日本相撲協会に対する爆弾発言も飛び出した。
「協会はルールに厳しかった。悪口は言いたくないが、気に入らない要求もたくさんあった。自分の思い通りにやりたいこともあった。一部に私を辞めさせようとした人もいたのは事実」
これを伝え聞いた協会理事の1人は、まるで後ろ足で砂をかけるかのような物言いに、「引退相撲に影響は出るだろう」と憤慨する。「もう辞めた人だけど、(協会が)話していないことを(会見で)言ったのなら問題だ」(同理事)。10月3日予定の引退相撲で協会の協力は必須だが、チケット代やグッズ販売などで元朝青龍に総額1億円以上が入るとも言われているイベントが、自らの発言で開催に“待った”がかかりかねない。
暴行問題も解決していない。初場所中に知人男性を殴ったとされ、その騒動の責任を取って引退したはずだったが、この日は「暴行は一切していない」と関与を否定。この知人男性とは1月のうちに示談が成立。暴行の事実がないのならば、何のための示談だったのかという疑問も浮かぶ。今後、警視庁麻布署が事情聴取を行う可能性も残っており、予断を許さない状況だ。
「引退は後悔していない」という元朝青龍だったが、大鵬の優勝32度を視界にとらえる25度の優勝を重ねていただけに、「優勝回数を増やせないように辞めさせられた」など「日本側の圧力」というモンゴルの報道に便乗するかのように、「30回以上は優勝できる体力と精神力はあった」と恨み節。「今のところ相撲を見る気はない」と話すが、引退直後の元横綱としては異例の春場所(14日初日、大阪府立体育会館)を升席で観戦するプランもある。
今後は「格闘技、ビジネス、政治家など、いろいろある。相撲以外の世界に入る可能性もあるので勉強したい」と明かした元朝青龍。当然のように、騒動についての説明や謝罪は一切なかった。再来日は18日の予定。まだまだお騒がせは続く。