発売6週間後に40冊強制入荷!? ラノベの歪んだ配本システムに書店は困惑
2010/3/8 11:40 大胆なメディアミックス展開で、いまやエンタメ界の主流になりつつあるライトノベル業界。2000年代から市場が拡大し始め、09年の文庫ライトノベルの売り上げ規模推定は1890.4万部(オリコン調べ)と、現在も出版点数は増える一方だ。しかしその一方で、無駄に多すぎる新人賞や、ストーリーの稚拙さを批判する声も多いのも事実。また最近では、『IS 』で知られる弓弦イズル氏が、版元が勝手に海外の出版社と契約して中文版を出版しようとしていたことに激怒し、出版差し止めを求める(<u>参照記事)など、ラノベ独特の規約や権利関係によるトラブルも散見される。
そんな中、Twitter上で、ある地方の中小書店員がライトノベルの配本について、こんな悲鳴を上げた。
「12月25日発売のスーパーダッシュ文庫が注文もしてないのに40冊ほど入荷。1か月と2週間遅れての入荷という数字にいろいろと邪推してしまう」
大型書店への過剰配本の結果、その在庫が1カ月後に中小書店に押し寄せており、書店員が頭を悩ませているというのだ。このつぶやきに対し、「マニア向けの文庫だと細く長く売れるというよりも太く短く売れるだろうから1カ月前の文庫を押しつけられても困る」「在庫は出版社の責任。中小書店に回されても困る」「取次に問い合わせないとこういうこと(過剰配本)はなくならない」など、同様の被害を受けていると思われる書店員からのコメントが寄せられている。
どうしてこのような状況が起こるのだろうか。ある大手書店員は話す。
「角川文庫を始めとする大手ラノベ出版社は、書店と『特約店契約』なるものを結んでいる場合が多いんです。角川グループには、『男組(スニーカー文庫・富士見ファンタジア文庫)』『女組(ルビー文庫・ビーンズ文庫)』『電撃組(電撃文庫)』と呼ばれる特約店制度があり、該当レーベルの年間売上○○冊以上、売上順位が全国○○位以上などの基準を満たすと、版元に特約店として登録されます。年一回、その基準を満たしているかどうかの審査がありますが、一度これに入ってしまえば、余程のことが無い限り特約店落ちすることはありません」
特約店の特典としては、主に新刊の版元指定配本(上位店ほど配本は多い)、新刊を含む補充注文の優先出庫、販促物(ポスターやPOPなど)の送付があるという。
「アニメイト」や「とらのあな」などに多くの商品が流れるのは、それらの店舗のほとんどが特約店上位に位置づけられているからであり、そのため非特約の一般書店に新刊が回りにくくなっている現状がある。特約店に回したあとで、過去の実績を見て配本するため、当然配本は少なくなり、新刊が無いから実績もなかなか上がらず、次の新刊の配本も少なくなるという悪循環だ。
逆に、版元の読みがはずれ、特約店で思うように販売数が伸ばせない場合は、その在庫が一気に非特約の書店に流れこんでくる。そのため、今回悲鳴を上げた書店のように1カ月以上経ってから数十冊単位で配本されてしまうこともあるわけだ。
そもそもラノベの特約店は一般文庫の特約店と違い、特化された客層、ジャンルであるため、効率的に販売数を伸ばせ、返本率も下げられるとされていた。しかし、毎月何十冊と発売される新刊の中でもヒットするのはほんの一握り。そのシワ寄せを、版元でも特約店でもなく、中小書店が受けるというのは、なんとも理不尽な話だ。
取次や大手出版社は、自らの利益を守るだけではなく、中小書店も含めた出版業界全体の利益や将来像を考慮していくべきだろう。
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そんな中、Twitter上で、ある地方の中小書店員がライトノベルの配本について、こんな悲鳴を上げた。
「12月25日発売のスーパーダッシュ文庫が注文もしてないのに40冊ほど入荷。1か月と2週間遅れての入荷という数字にいろいろと邪推してしまう」
大型書店への過剰配本の結果、その在庫が1カ月後に中小書店に押し寄せており、書店員が頭を悩ませているというのだ。このつぶやきに対し、「マニア向けの文庫だと細く長く売れるというよりも太く短く売れるだろうから1カ月前の文庫を押しつけられても困る」「在庫は出版社の責任。中小書店に回されても困る」「取次に問い合わせないとこういうこと(過剰配本)はなくならない」など、同様の被害を受けていると思われる書店員からのコメントが寄せられている。
どうしてこのような状況が起こるのだろうか。ある大手書店員は話す。
「角川文庫を始めとする大手ラノベ出版社は、書店と『特約店契約』なるものを結んでいる場合が多いんです。角川グループには、『男組(スニーカー文庫・富士見ファンタジア文庫)』『女組(ルビー文庫・ビーンズ文庫)』『電撃組(電撃文庫)』と呼ばれる特約店制度があり、該当レーベルの年間売上○○冊以上、売上順位が全国○○位以上などの基準を満たすと、版元に特約店として登録されます。年一回、その基準を満たしているかどうかの審査がありますが、一度これに入ってしまえば、余程のことが無い限り特約店落ちすることはありません」
特約店の特典としては、主に新刊の版元指定配本(上位店ほど配本は多い)、新刊を含む補充注文の優先出庫、販促物(ポスターやPOPなど)の送付があるという。
「アニメイト」や「とらのあな」などに多くの商品が流れるのは、それらの店舗のほとんどが特約店上位に位置づけられているからであり、そのため非特約の一般書店に新刊が回りにくくなっている現状がある。特約店に回したあとで、過去の実績を見て配本するため、当然配本は少なくなり、新刊が無いから実績もなかなか上がらず、次の新刊の配本も少なくなるという悪循環だ。
逆に、版元の読みがはずれ、特約店で思うように販売数が伸ばせない場合は、その在庫が一気に非特約の書店に流れこんでくる。そのため、今回悲鳴を上げた書店のように1カ月以上経ってから数十冊単位で配本されてしまうこともあるわけだ。
そもそもラノベの特約店は一般文庫の特約店と違い、特化された客層、ジャンルであるため、効率的に販売数を伸ばせ、返本率も下げられるとされていた。しかし、毎月何十冊と発売される新刊の中でもヒットするのはほんの一握り。そのシワ寄せを、版元でも特約店でもなく、中小書店が受けるというのは、なんとも理不尽な話だ。
取次や大手出版社は、自らの利益を守るだけではなく、中小書店も含めた出版業界全体の利益や将来像を考慮していくべきだろう。
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2010/3/8 11:40 更新