ただ、それもXGP用に総務省が割り当てた2・5ギガヘルツ帯の「電波」に目を向ければ狙いはわかりやすい。携帯会社にとって保有する電波の増加は、通信トラフィックを収容する“道幅”の拡大を意味する。XGPがLTEに及ばなくとも、急増するデータ通信量を受け止める余地が増やせるというメリットを見いだせる。
ソフトバンクが保有する電波の帯域幅(=道幅)は、最大手NTTドコモの半分しかなく、携帯3社の中で最も少ない。XGP用の電波が手に入れば、2位のKDDI並みの道幅を確保できる。「出資額が大きくなければ悪くない判断。将来に向けて経営のオプションとなる」(バークレイズ・キャピタル証券・津坂徹郎アナリスト)。
再生には高い壁
もっとも、既存PHSの生き残り策は不透明なままだ。高速通信が可能なXGPと切り離されることで、拡大を続けているモバイル・インターネットの需要にどう対応していくのか、将来図を描きにくくなっている。
電磁波が微弱という大きな特徴を持つPHSは、病院など医療機関の通信端末として定着しており、公共性が高い側面もある。ただし、有用な技術とされながら携帯事業者との競争に敗れ、経営が行き詰まったという厳しい現実も横たわる。現経営陣の辞任後も更生管財人として会社に残る久保田社長は「携帯電話とはまったく違うマーケットがあり、これを開拓できる」と話したが、実現の可能性は未知数。
5日、電気通信事業者協会(TCA)が発表した2月の事業者別契約者数では、ウィルコムの契約者数は1月比で約7万人も減った。事業の存続に向けて400万人の顧客へどんな将来像を示すことができるのか。残された時間は限られており、PHSの行方は波乱含みだ。
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(桑原幸作 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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