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きょうの社説 2010年3月12日
◎改正過疎法が成立 気を抜かず抜本対策検討を
3月末で期限が切れる過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)が4月から改正され、期
限の延長と対策の一部見直しが行なわれることになった。石川県を含め全国の過疎地を抱える自治体の要望に与野党が応えた結果であり、超党派の議員立法のモデル例と評価できる。ただ、今回の過疎法改正は「つなぎ」の措置と受けとめておきたい。民主党のもともと の主張は、現行法を3年ほど延長し、その間に「地域主権改革に合わせて過疎対策の抜本見直しを行なう」であった。従来通り10年間の延長を求めた自民党との協議の結果、6年間の延長と決まったが、鳩山政権は改正過疎法の成立で気を抜くことなく、抜本的な過疎対策の検討を進めてもらいたい。 改正過疎法では、過疎債による財政支援の対象がインフラ整備だけでなく、医師や生活 交通の確保などソフト事業にも拡大された。さらに過疎地の指定要件も見直され、富山県朝日町など58市町村が追加される見通しとなった。過疎地住民の切実な生活問題に即した措置であり、歓迎したい。 過疎対策を切れ目なく実施する必要性は、地方の経済対策の面からも高まっているとい える。が、従来の法律の延長で、本当に過疎問題を解消できるのかという心配は依然残る。過疎法はこれまで10年ごとに3回更新され、その間に投入された財政資金は約80兆円に上る。これにより生活基盤の整備は進んだが、人口の減少と高齢化の歯止めはかからず、格差も拡大しているのが実情である。 総務省の自治体アンケートでは、北陸3県で10年以内に20以上の集落が消滅すると みられている。国と地域挙げて、より実効性のある過疎対策に知恵をしぼらなければならない時である。 民主党は昨年の政策集の中で、過疎対策として▽携帯電話やケーブルネットワークなど IT技術を活用した高齢者の生活支援▽離島生活者の不便と物価格差緩和のため、経済活動にかかる揮発油税免除―などを挙げている。離島や揮発油税に限らず、税の軽減策は過疎対策としてもっと真剣に考えられてよいのではないか。
◎日弁連新会長 改革の後退は避けたい
日弁連の会長選は司法試験合格者数を年間3千人まで増やす政府計画への対応が争点と
なり、その計画に真正面から異を唱え、「1500人程度に減らす」と明言した宇都宮健児氏が初の再投票を経て当選した。「合格者3千人」の実現は2010年ごろとなっていたが、昨年でも2043人にとど まり、早期達成は極めて困難な状況である。大きな誤算は全国に設立された法科大学院が十分に機能しなかったことにある。計画の妥当性や法曹養成の在り方について検証する必要はあるとしても、司法制度改革に携わってきた日弁連が今の段階で法曹人口増員に急ブレーキをかけるのは性急な印象を受ける。 増員反対の理由として、弁護士の質の低下や若手弁護士の就職難などが挙げられている が、自分たちの権利を守るだけなら説得力に欠けるだろう。新執行部は司法制度改革が後退しないよう、内部でさらに議論を深めてほしい。 法曹人口については2002年の閣議で、10年ごろには司法試験合格者数を約3倍の 3千人程度まで増やすことが決定された。目標達成へ向け、全国各地に法科大学院が設置され、修了生が本格受験するようになった07年には2099人と初めて2千人台に達した。 日弁連の会長選では、主流派で現執行部路線を引き継ぐ候補が大幅削減に慎重姿勢を示 したのに対し、宇都宮氏は積極的な削減を主張した。多重債務問題などで知られる宇都宮氏個人への期待もさることながら、選挙を通じて法曹増員の根強い反対が噴き出したのは間違いないだろう。 法曹人口の増員は、弁護士不在地域の解消や容疑者・被告の国選弁護の拡大、裁判員裁 判への対応など、多様な法的ニーズに応えることにある。合格者の数値目標が一気に半減すれば、法科大学院の存立基盤がさらに危うくなり、この目標を前提に進められてきた改革にも影響を及ぼすことになる。 企業や官公庁への採用など、弁護士需要を引き出す取り組みはこれからである。日弁連 も自らの手で活動領域を広げる一層の努力が求められている。
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