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どうなる旧市民球場:まちづくりと民意/上 「解体」「保存」声、声、声 /広島

 ◇「特別な場」との思いどう反映

 50年以上、広島市民と共に歩んできた旧広島市民球場(中区)を、市は11年度中に解体する方針だ。秋葉忠利市長は「非常に多くの市民が球場解体に合意しており、最終段階だ」と力説する。しかし、市議会で「壊すのは惜しい」と計画の見直しを訴える声が相次ぐ。市民の間でも賛否が分かれる。まちづくりの観点から、旧市民球場問題を見直した。【矢追健介】

 「都市公園を考えるうえで大事なのは、市民が語り継げる都市の物語。機能や効率、空間論よりも大切。旧市民球場の土地はまさにそういった場所だ」。東京ランドスケープ研究所の小林治人社長は旧市民球場の立地をこう評価する。小林社長は06~07年にかけ、旧市民球場のある場所の開発事業案と事業者を選ぶ広島市の検討委員会で委員長を務めた。

 選考委は、折り鶴ホールを中心に跡地を森にする案と、水と緑地を組み合わせる公園案を選んだ。市は現在地から移転したいという広島商工会議所の意向と合わせて方針を作成。球場の保存を望む市民の声を受け、右翼席を保存する。選考委は「将来に向けて開けた広場の方が可能性がある」という方向性だったが、小林社長も「市民の物語を残すまちづくりは、国際的にも評価が高い。市民にとって特別な場所である球場の一部を記念碑的に残すことで実現できる」と市の案を認める。

 残すのがなぜ右翼席なのか。市の方針は、球場入口付近に商議所が移転し、一塁側に劇場文化施設を作ること。杉山朗・旧市民球場跡地担当課長は「利用構想のない部分で、広場でのイベントに支障がない位置を選んだ」と説明する。

 杉山課長によると、広島商工会議所など経済界からは「全部解体してイベント広場にしたらいい」という声が多いという。一方で、右翼席でなく、正面の入り口部分を残してほしいという市民の声もあるという。また、市民には球場保存を呼びかける声も根強く、市内には「このままジョリティー」というポスターを掲げる店もある。市民から経済界まで考え方は多種多様だが、秋葉市長らは市議会などさまざまな場で「市民の意見を十分聞いてきた」と強調する。

 「(原爆ドームと並び立つ)旧市民球場は原爆から立ち上がった市民の力強さや希望の象徴だ。そういった市民の記憶をどうするかという、市民の思いをまとめるプロセスが弱い」。広島の戦災復興計画に詳しい広島国際大工学部の石丸紀興教授は、事業方針の策定過程における問題点を指摘する。「市民の意見を集めて、対案を押しつけるというのでは良くない。先進的なまちづくりをしている都市では、ワークショップを開いて市民意見をまとめることが当たり前になりつつある」

      ◇

 旧市民球場地区の事業計画をまとめる過程で、市や市議会は旧市民球場の在り方をどう議論したのか。民意はどのように反映されたのか。事業計画の経緯を振り返り、検証していく。

毎日新聞 2010年3月11日 地方版

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