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世迷言

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☆★☆★2010年03月10日付

 オバマ米国大統領がホワイトハウス入りすることになったとき、米国民の間に1つの賭けが生まれた。「新大統領はたばこを止められるだろうか」というものだった▼どうやら「止められぬ」方に凱歌が上がったようである。先月末、就任後初の健康診断を受けた際、医師から禁煙の努力をするよう諭されたことから、いまだ実行できていないことが明らかになった。同氏は、大統領選のキャンペーンの最中に禁煙を表明したが、昨年6月の記者会見で結果を問われ「時々手を出すかと聞かれればイエスだ」と述べた。大統領も人の子、弱点もあるのだなと、何となく身近に感じて思わず微笑んだ。日本では麻生前首相もスモーカーだったが、1国のトップともなればストレスも多く、元々吸わなかったり、何年も前から禁煙していたような場合はともかく、ついつい依存してしまうのだろう。休煙中≠フ身にはよく理解できる▼ではホワイトハウスの中に喫煙室はあるのか?中には相当数のスタッフがいるだろうから、どこかにある確率は高い。しかし大統領がそうした場所で吸っているとは思われず、書斎の外の屋根の下あたりにコーラか何かの缶カラを置いて「ホタル族」よろしく煙をくゆらしているのではないか▼小欄は過去何回となく禁煙してきたが、禁煙には妙薬も妙手も存在しない。あるのは自分との闘いだけである。事実、休煙後半年経った今も、何か理由をつけて再開したい気分に時々駆られる。「リバウンド(元のモクアミ)予備軍」とされるゆえんであろう。

☆★☆★2010年03月09日付

 日曜日の7日午後から奥州市のZホールで開かれた「奥州市民管弦楽団」の第二回定期演奏会に出かけた。その演奏内容だが、結論を先に言うと次の演奏会もまた来たいと思った▼同管弦楽団の母体となったのは、同市の胆沢区にある「文化創造センター」内の施設に10年以上も前に生まれた「胆沢カルチャークラブ」で、弦楽器を買いそろえ、自宅でも練習できるよう貸し出しもしたという行政の意欲と志操の高さが花開いて、カルチャークラブが「奥州市弦楽アンサンブル」へと発展、それが管打楽器も加わってオーケストラ(以下オケ)に成長した▼弦楽の指導を続けてきたチェリストの舘野英司氏を音楽監督兼指揮者に迎えて昨年創設された市民自慢のオケは、2年目を迎えて俄然注目されるようになったか、開場と共に長蛇の列ができあがっていた。アマチュアの演奏会でこれだけ聴衆を集めるというのはそれだけ期待も大きいということであろう。当方も胸躍る気分だった▼プログラムを見ると、正規の団員は1部であり、地元の吹奏楽団などからの応援を含めて地元メンバーとみなしても、なおエキストラ(トラ)に頼らざるを得ない現状がうかがえるが、しかしこれは過渡期の現象なのだ▼何よりも出演者たちの演奏に対するひたむきな姿勢が伝わって心を打った。手抜きしたプロの演奏ではこうはいかない。一関、北上にも地産地消<Iケがあるそうで、互いが刺激し合い発展していくことを祈りたい。ところで当地オケはまだか?

☆★☆★2010年03月07日付

 「〜を割ったような」と、さっぱりした性格にたとえられる竹だが、好まれるはずのその特質が近年はさっぱり生かされず、逆に持て余されている。だが、再び見直される時代が必ず来る。その復活の道を産地は考える必要があろう▼生活資材としての竹の利活用が劇的に減ったのが近年の特徴である。駆逐したのがプラスチックその他化学樹脂であり、手間暇を厭うコスト意識であることは言うまでもない。竹の産地として内陸から羨まれもした気仙のこの豊富な資源が、行き場を失って持て余されている現状に、多くが頭を痛め無念に思っている▼小欄もその1人で、ない頭を振り絞って利用法を考えているが、竹炭、バイオエタノール、土壌改良、堆肥、畜舎の敷床など現実に研究され、実用化されてはいるというものの、原料として絶対量を要求されるまでには至っていない。大量に需要が発生し、消費されるようでなければ放置竹林の未来はない▼大量消費となれば燃料に如くはあるまい。さいわいにして竹はカーボンニュートラル(二酸化炭素排出ゼロとみなされる)であり、成長までに時間のかかる薪と比べて製品化≠フサイクルがきわめて短い。カロリーも高く、こうした特徴を生かした復活への道が開かれるのではなかろうか▼最大の隘路が伐採と搬出である。竹林の中で倒れた竹を引き出すのも難儀なら、それを裁断するのも難儀で、だからこそコストを圧縮するというのではなく、十分な対価を得られる商品にすべきで、そのためには何が必要か―これは読者諸兄への宿題とする。

☆★☆★2010年03月06日付

 「よりによって」という表現は便利だが、深く意味を追求することもなく、漫然と使われているようだ。語源は「選りに選って」だから、「選びに選んだのに」こんな結果になってと否定的なニュアンスがある▼伴侶を選ぶにあたってはじっくりと選んだはずなのに、こと志と違ってとんでもないクジを引き当ててしまったと悔やんでいる方々は「よりによって」と舌打ちをされているだろうが、いまそれに近い心境にあるのが鳩山首相及び民主党だろう。よりによって参院予算委員会に3人もの閣僚が遅刻したのだから▼前原国土交通、仙石国家戦略、原口総務の各相で、8時50分の開会時刻に現れず、このため審議は15分遅れで始まった。生中継を予定していたNHKも放送が遅れたらしいが、どうせなら3人の遅刻も中継したらよかったろう。江田参院議長は「参院軽視の表れ」と不快感を示したようだが、余人ならいざ知らず閣僚が大事な会議に3人も「遅刻揃い踏み」とは▼前原さんは交通ラッシュ、原口さんは事務方のミスをあげたらしい。だが、それも鳩山首相の弁ではないが「緊張感が足りない」せいだろう。スケジュール管理は秘書まかせではなく、自分でするのがVIPというもので、危機管理に脳内時計を欠いたら話にならない▼「認知症」予備軍の小欄が犯す遅刻ならまだしも、ノブレス・オブリージュ(高貴なるものの務め)の見本が、よりによって′エ因を他に転嫁するのは見苦しい。

☆★☆★2010年03月05日付

 毒舌漫談の綾小路きみまろ著「1つ覚えて3つ忘れる中高年」の新聞広告を見て思わず噴き出した。思い当たるフシ大いにありというよりズバリそのものだからだ▼広告には「分け前を妻子が決める退職金」「中高年鼻で確かめる賞味期限」といった惹句もちりばめてあって、いちいちごもっともと苦笑する。ただし当方が買い求めようとは思わないのは、出版社の誤算。中身を鼻で確かめなくても内容がわかるからだ▼1つ覚えて…はまさにその通りで、いやそれは正しくない。本当は覚える先から忘れるというのが正直なところである。なにしろいま頭に浮かんだことが数秒後には忘却の彼方にかすんでいるというのが日常茶飯。同様、ある場所まで移動して「なんでオレはここに来たんだっけ?」と考え込むこともよくある▼その程度ならまだましだが、婚礼の日取りを忘れていて遅参したことが2度もある。その場はうまく取り繕ったが、これでは人間関係を損ないかねない。同級生やら同年配が集まると話題はこの辺に落ち着き、これも加齢現象、「しょうがねぇべど」という結論となるが、ただ昔覚えたことだけは忘れないのも不思議だ▼これは脳が活性化している時代に刻み込まれたものだからで、これに対し消費期限が切れた脳に何を詰め込もうとしてもそれは生理学的に無理というものなのかもしれない。話題と言えば健康、孫、そして年金ぐらいとなれば、脳もあほらしくなってさぼりもたくなろうというものだ。

☆★☆★2010年03月04日付

 バンクーバー五輪で日本チームはついに金メダルを取ることなく、20位に甘んじたが、お隣の韓国は金銀各6個、銅2個と14個のメダルを獲得、アジア最高の5位につけた。この差は何か?▼ついつい先日は悔しさの余り「金メダルに1億円ぐらいの報賞金を出せ」とクダを巻いたが、期待の浅田真央も銀に終わり「日の丸飛行隊」が大活躍し金5個を獲得して七位となった長野五輪を顧みて思わず落涙したのであった▼冬季五輪は日本の不得手とするところで、54年前に猪谷千春がアルペン回転で銀メダルをものにして以来、札幌五輪までメダルには縁がなかった。その札幌ではジャンプ70m級で金、銀、銅を独占、「やる気になればできるんじゃないか」という自信につながった▼しかし、長野以後は不振で前回のトリノ五輪でも荒川静香の金1つがやっと。これが絶対的条件の差なら諦めもつくが、同じような条件にあってこの時も金6個を手中にした韓国の活躍はどうなのか?昨日の読売が全明奎韓国スケート連盟副会長へのインタビューで、そこを聞き出している▼選手に対し「あなたがきつい時は、ほかの選手もきつい。足が短いのなら、もう1歩頑張ればいい」、「毎日限界を超えるつもりで練習しないと」と容赦のない同氏の指導は、東洋の魔女を育てた「鬼の大松」を連想させるが、それだけでなく、強化体制にわが国とは天と地との差があることを知った。とは露知らず天佑神助頼みで結果を期待していたのだから、選手のみなさんゴメンナサイ。

☆★☆★2010年03月03日付

 巨大地震に見舞われた南米チリの第二の都市コンセプシオンで、スーパーが襲われ略奪が当然のように行われている光景をテレビで見て複雑な思いに駆られた。テレビに写されても平気なのは、そこに罪悪感というものがないからか
▼略奪で百六十人が逮捕されたと新聞で報じていたから、やはり略奪は犯罪なのだろう。食物を物色していた数十人がスーパーに放火したというニュースもあり、物騒この上もない。いずれにしても、白昼堂々と(かどうかにせ
よ)スーパーの倉庫を襲い、シャッターをこじあけて中になだれこむ暴徒たちの姿に驚く方が不思議なのかもしれない
▼というもの、こうした天災時、同様の光景が繰り広げられている映像を何度か見せられたからである。先進国といわれる国ではさすがに少ないよう
だが、しかし皆無ではなく、貧困層による略奪などの実例も報告されている。それもこれも貧しさがもたらす結果で、非常時でも食料も衣料も満たされていれば誰も盗みは働くまい
▼だが、それだけではなさそうだ。こうした場合よく引き合いに出されるのが、阪神淡路大震災における住民の整然かつ冷静な対応である。少なくとも略奪行為などまったくなく、海外のメディアはこの事実を驚きを持って報じていた
▼それは情報の伝達が早く徹底していることと、救援物資などが素早く届く
という安心感があってこそのことだろう。それでも、恥を知るという教育で育てられた意味を抜きにして語ることはできまい。

☆★☆★2010年03月02日付

 失言とは、本心がつい出てしまうもののようで、不用意に出る点で放屁と同じだ。民主党の石井一選対委員長が「島根と鳥取は日本のチベット」と発言し、反発されたのも、どこかの器官が緩んだからだろう▼「日本のチベット」という表現は少なくとも一昔前までは普遍的表現で、本県など常にこの国に擬せられたものだ。それは文化果つる国というイメージを伴っており、蔑称なことは疑いない。しかし一方で未知の、うかがい知れない魅力を持つ国というニュアンスもあって、小欄は「あなた岩手?あのチベットの」と言われて腹を立てた覚えはない▼石井議員は「人が住んでいるのか?」とまでヤユしたものだから、両県人はカッカとしたようだが、悪態とは相身互い。こんなことで逆上するようでは修養が足りない。悪態には悪態をもって応酬するのを最上とする。「少なくともあんたのような悪相は住んでいない」と▼同じように当地に対する悪罵もあって「五葉のクマやサルも含めての人口なのか?」などとバカにされたことも再三ならずある。しかし優位とは自ら切り開くからこその結果であり、産地で値段が決まるのは食べ物ぐらいなものだろう。都会育ちなど人間の尺度にはならない▼石井議員は大きな失策をやらかした。選対委員長としての責務と配慮を欠いたからである。来るべき参院選で、両県の民主党候補は苦戦するだろう。人の住んでいない県からどうやって得票するのかと問われて放屁の重大さに気付くのでは遅すぎる。

☆★☆★2010年02月28日付

 民主党の最長老・渡部恒三氏が25日付の産経新聞1面に登場していたので、時節柄♂スだろうと読んでみた。タイトルがいい。「国益が第一」だ。先の衆院選で同党が掲げたキャッチフレーズ「生活が第一」をもじって編集者が付けたのかそれとも本人なのかは不明だが、思わず笑った▼「民主党におごりはないか」という別のタイトルが示すように、「政界の黄門様」が諸国漫遊をせずとも、全国津々浦々に澎湃と広がっているであろう政治不信を素早く感知し、内省の足りない殿および幕閣にぜひ耳を傾けて欲しいと願った諌言であろう▼同氏はいま小沢幹事長と距離を置き、というより疎んじられている存在であり、それだけに自由にモノを言える立場にある。事実、小沢幹事長にまつわる疑惑についてもかばい立てするどころか、逆だから、100%虚心坦懐の救党≠フ情とは思われない▼しかし「政治家は、国民の声を神様の声だと思わなければならない」という書き出しは真理であり、衆院選での圧勝も、先の長崎県知事選における惨敗も神の声≠セという指摘には異論の付けようがない。だからこそ、現状におごることなく反省すべきは真摯に反省すべきというのはその通り▼要するに民主党は民主主義国家の党であり、その党内で1人に権力が一極集中するのは好ましくないとの託宣だ―氏のまさに言わんとするのはこの1点だなと理解できる。

☆★☆★2010年02月27日付

 「政府紙幣」という耳なれぬ言葉が登場したと思ったら、いつの間にか消えていた。バブル崩壊以後の長期不況に加えて、海の向こうから襲ってきたリーマンショック。100年に1度の危機状況に陥った日本経済を立て直すため、次はどんな知恵が登場するか?▼インフレと対極にあるデフレという現象を用語としては知っていてもその経験のない大方の日本人が、いやでも学習させられているのが、この怪物のおそろしさだろう。バブルは確かに日本人のつつましい価値観を狂わせてしまい、異常な社会現象を惹起もした。昔風の生き方をしてきた小欄などは当時の風潮を好ましく思わなかったのも事実である▼だが、経済活動がそれによって活性化したのもまた事実であり、当時を懐かしむ声があるのもむべなるかなと思う。そんな功罪が極端に分かれたインフレと異なってデフレは罪一色。確かに物価は下がりそれが功のようにも思われるが、そのコスト低減はどこかにしわ寄せを避けられない▼だからこそ一部に待望論のある「インフレ目標」の設定だが、抑えるのは容易でも起こすのが困難なのがインフレで、実際どんな妙策を講じても金は消費に向かわず、貯蓄に回るだけ▼預金金利はさっぱり、年金も期待できないという状況で金を使えというのは無理な話で、このまま低金利政策を続けていては現状を打開できない。そこで公定歩合を引き上げて定期金利を一挙に5%にするぐらいのドラスティックな政策が求められよう。では貸出金利は?逆ざやにならない程度に抑える。むろん景気好転までの条件付きでだ。企業から見てそれでも金利負担がいやなら現状を追認するしかあるまい。


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